後輩の指導役で失敗した話
後輩の指導役で失敗する人の多くは、「自分でやったほうが早い」と仕事を取り上げたり、細かく指示しすぎたりして、後輩が自分で考える機会を奪ってしまう人です。指導役になると、つい「ちゃんとできるようにしなければ」と力が入ります。けれども、後輩が育つのは、教わったことを自分で試し、つまずき、もう一度考えるときです。指導役の仕事は「正解を渡すこと」ではなく「後輩が考えられる場をつくること」です。この記事では、まなぶの失敗ストーリーをもとに、後輩の指導役で失敗した原因と、育つ指導のコツを解説します。
「自分でやったほうが早い」で、後輩の自信を奪っていた話
今年の4月、まなぶは、営業企画のチームに入った新入社員の指導役を任されました。初めて「教える側」になったまなぶは、張り切っていました。「自分が最初に苦労したことは、全部先回りして教えてあげよう」。資料の作り方、メールの書き方、会議の準備のしかたまで、毎日のように細かく伝えていきました。
後輩が作った資料を見ると、まなぶは気になるところを次々に直しました。赤いペンで書きこんだ資料は、ときには元の文字が見えないほどでした。忙しいときには、「これは自分でやっておくから、次の仕事をお願い」と、後輩の仕事を引き取ることもありました。取引先へのメールも、後輩が書いた下書きを、まなぶがほとんど書き直してから送っていました。「このほうが早いし、まちがいもない」。まなぶは、それが後輩のためだと思っていました。新人だった自分が苦労したぶん、後輩には同じ思いをさせたくない。その気持ちが、いつのまにか「全部自分がやってあげる」に変わっていたのです。
6月の終わり、上司との面談で、後輩のことを聞かれました。「最近、彼はどう?」。まなぶが「まだ一人では任せられません」と答えると、上司は少し考えてから言いました。「本人からも話を聞いたんだけど、『何をやっても直されるので、自分で考えるのが怖くなった』と言っていたよ。まなぶくんが、彼が育つ機会を先に取ってしまっているのかもしれないね」。
まなぶは、その言葉にどきっとしました。思い返すと、後輩が質問に来ることは、4月より明らかに減っていました。質問しても、まなぶがすぐに答えを言ってしまうので、聞くだけ聞いて、自分で考えるのをやめていたのかもしれません。「教えているつもりで、考える場所を奪っていた」。その日の帰り道、まなぶは、自分が新人だったころに先輩がどう接してくれていたかを、ずっと思い出していました。
後輩の指導役で失敗した5つの原因
「自分でやったほうが早い」と、仕事を取り上げた
忙しいときほど、後輩に任せるより自分でやったほうが早く終わります。けれども、それをくり返すと、後輩はいつまでも仕事を経験できません。任せる仕事は、時間がかかることを見込んで、締め切りに余裕のあるものから選ぶのがコツです。最初は時間がかかっても、後輩が一人でできるようになれば、チーム全体の仕事はずっと早く回るようになります。まなぶの場合も、取引先へのメールは、まず後輩に最後まで書いてもらい、送る前に一緒に読み直す形にすれば十分でした。
正解を先に言いすぎた
後輩に質問されると、すぐに答えを教えたくなります。けれども、答えばかりを渡していると、後輩は「聞けば教えてもらえる」と考えるようになり、自分で考える習慣が育ちません。質問されたら、まず「あなたならどうする?」と聞き返してみるのがおすすめです。後輩の考えを聞いたうえで、足りないところを補えば、考える力と知識の両方が身につきます。
直すところを、全部伝えてしまった
後輩の資料に気になるところが10か所あったとしても、一度に10か所を直されると、後輩は何が大事だったのか分からなくなり、自信もなくしてしまいます。直してほしいことは、大事なものから2〜3つに絞って伝えると、後輩も受け止めやすくなります。細かい言い回しなど、仕事の結果に大きく関わらないところは、あえて目をつぶることも必要です。
できたことを、伝えていなかった
まなぶは、後輩の資料を直すことには熱心でしたが、よくできたところを伝えることはほとんどありませんでした。直されてばかりだと、後輩は「何をやってもだめだ」と感じてしまいます。直すことと同じくらい、できたことを具体的に伝えることが大切です。「この表の並べ方は分かりやすいね」と一言伝えるだけで、後輩は次も同じように工夫しようと思えるようになります。ほめるときは「いいね」だけでなく、どこがどうよかったのかを言葉にすると、後輩にとって次の手がかりになります。
一人で、指導を抱えこんだ
指導役を任されると、「自分がなんとかしなければ」と思いがちです。けれども、後輩の育ち方を一人で見ていると、自分のやり方の偏りに気づけません。上司やほかの先輩に、ときどき後輩の様子を伝え、どう接するとよいか相談しておくと、指導のしかたを見直すきっかけになります。後輩にとっても、相談できる相手が一人だけでないほうが、安心して働けます。指導役が一人で抱えこまないことは、指導役自身の負担を軽くすることにもつながります。
正解を渡す指導役と、考える場をつくる指導役の違い
後輩の指導役で失敗しないためのチェックリスト
指導役は、後輩を育てながら、自分も育つ役割です。次の項目を、週に一度振り返ってみてください。
- 締め切りに余裕のある仕事を、後輩に任せている
- 後輩の仕事を、自分で引き取っていない
- 質問されたら、まず後輩の考えを聞いている
- 直してほしいことは、大事なものから2〜3つに絞っている
- よくできたところを、具体的に伝えている
- 後輩の様子を、上司やほかの先輩にも共有している
まなぶは、7月から指導のしかたを変えました。資料を見るときは、直すところを3つまでに絞り、そのうち1つは必ず「よかったところ」を伝えるようにしました。質問されたときも、まず「どうしたらいいと思う?」と聞いてから、考えを補うようにしています。最初は時間がかかりましたが、秋になると、後輩が自分から「この進め方でどうでしょうか」と相談に来るようになりました。先日は、後輩が一人で作った資料が、そのまま取引先への提案に使われたそうです。後輩が4月にくらべて明るい顔で働いていることに、まなぶ自身がいちばんほっとしています。
「教えることって、自分が前に出ることじゃなくて、一歩下がることなんだ」。まなぶは、後輩の資料を見ながら、自分が新人だったころの先輩の背中を思い出していました。
仕事の失敗を減らすために
後輩に任せる仕事を見える化し、チームで育てる仕組みを整えると、指導役の負担も軽くなります。
タイムマネジメント・スケジュール管理ツール【todoist】
後輩に任せた仕事と期限を一覧にできるタイプです。誰が何をいつまでに進めているかが見えると、口を出しすぎずに見守りやすくなります。振り返りの予定を書き込んでおけば、定期的に話す時間も確保できます。
業務プロセス整理・DX相談サービス【Chatwork DX相談窓口】
仕事の流れや、チームでの情報共有のしかたを整理することから支援してくれるタイプです。仕事の手順を共有しておけば、新しく入った人も自分で調べながら進めやすくなります。指導役一人に頼らない育て方を考えるきっかけになります。
まなぶ
みらい
まなぶ後輩の指導役で失敗する原因は、自分でやったほうが早いと仕事を取り上げ、正解を先に言い、直すところを全部伝えて、後輩が考える機会を奪ってしまうことです。余裕のある仕事から任せ、まず後輩の考えを聞き、直すことは絞ってできたことも伝える。それだけで、後輩は自分で考えて動けるようになります。評価・昇進・管理職で失敗しないための考え方は、評価・昇進・管理職の失敗から学ぶでまとめています。
評価・昇進・管理職については、仕事の目標設定で失敗する人の特徴5選や初めての管理職で失敗しない方法もあわせて読んでみてください。

