初めての管理職で失敗しない方法
初めての管理職で失敗する人の多くは、これまでどおり自分の数字や担当の仕事を抱えたまま、メンバーと話す時間やチームの仕事を整える時間を後回しにしてしまう人です。管理職になると、評価されるのは「自分がどれだけ成果を出したか」から、「チームがどれだけ成果を出せたか」に変わります。管理職の最初の仕事は、自分が走ることではなく、チームが走れる状態をつくることです。この記事では、まなぶが聞いたAさんの失敗ストーリーをもとに、初めての管理職で失敗しない方法を解説します。
課長になっても、いちばん売る人のままだったAさんの話
まなぶがときどき通うスーパー銭湯で、湯上がりの休憩所でよく顔を合わせるのが、Aさん(40代男性)です。Aさんは住宅設備のメーカーで、長く営業をしてきました。冷たいお茶を飲みながら、Aさんは「去年、課長になって、最初の半年は散々だったよ」と話し始めました。(登場する人物は、よくある失敗をもとに編集部が再現したものです)
Aさんは、営業部でずっといちばんの成績を出してきました。その実績が認められ、去年の4月、6人の営業チームをまとめる課長になりました。「自分が売れば、チームの数字も上がる」。そう考えたAさんは、担当していた大きな取引先をそのまま受け持ち、課長になってからも、毎日のように外回りを続けました。
メンバーとの1対1の面談は、「忙しいから」と何度も後回しにしました。メンバーから相談されても、「それはこうすればいい」とすぐに答えを言い、自分で取引先に電話してしまうこともありました。会議では、メンバーの報告を聞くより、自分の商談の話をする時間のほうが長くなっていました。メンバーが取引先で困っていると聞けば、Aさんがすぐに車で駆けつけて、話をまとめてしまうこともよくありました。
半年後、チーム全体の売上は、前の年より下がっていました。Aさん自身の数字は伸びていたのに、メンバーの数字が落ちていたのです。さらに、若手のメンバーの一人から、別の部署への異動を希望していると聞かされました。理由を聞くと、「相談しても、いつも課長が答えを決めてしまうので、自分で考える意味がないと思った」とのことでした。
Aさんは、課長になっても、いちばん売る営業のままでいたのです。部長からは、「Aさんに期待しているのは、Aさんが6人分売ることではなく、6人が売れるようにすることだよ」と言われました。「頭では分かっていたつもりだったけど、自分で売るほうが楽だったんだよね」。Aさんは、扇風機の風に当たりながら苦笑いしました。
初めての管理職で失敗する5つの原因
自分の担当を、手放さなかった
プレイヤーとして成果を出してきた人ほど、自分の担当を手放すのは不安なものです。けれども、自分の仕事を抱えたままでは、チームのために使える時間がほとんど残りません。管理職になったら、まず自分の担当の一部をメンバーに引き継ぎ、チームを見る時間をつくることが大切です。すべてを手放す必要はありませんが、「自分がいなくても回る仕事」を少しずつ増やしていきましょう。
メンバーと話す時間を、後回しにした
1対1の面談は、急ぎではないため、つい後回しにしがちです。けれども、メンバーが何に困っているのか、どんな仕事に挑戦したいのかは、話さなければ分かりません。面談の時間は、自分の商談と同じくらい大切な予定として、先に押さえておくのがおすすめです。月に一度、30分だけでも、続けることで、メンバーとの信頼が少しずつ育っていきます。
答えを、すぐに出してしまった
メンバーから相談されると、経験のある管理職ほど、答えがすぐに分かります。けれども、毎回すぐに答えを出していると、メンバーは自分で考えなくなり、「どうせ課長が決める」と感じるようになります。相談されたら、まず「あなたはどうしたいと思う?」と聞き、メンバーの考えを生かして決めるようにしましょう。少し遠回りでも、そのほうがメンバーは育ち、チームの力は強くなります。答えを出す場面と、任せる場面を分けておくことも大切です。お客さまとのトラブルなど急ぎの場面は管理職が動き、それ以外はメンバーの考えを生かす、と決めておくと迷いません。
評価の基準が、変わったことを意識しなかった
プレイヤーのときは、自分の成果がそのまま評価になりました。管理職になると、チーム全体の成果や、メンバーが育ったかどうかで評価されるようになります。自分の数字が伸びても、チームの数字が下がれば、管理職としては評価されにくいのです。管理職になったら、上司に「何ができたら、管理職として成果を出したと言えますか」と、一度確かめておくと安心です。
ひとりで、管理職の悩みを抱えこんだ
管理職になると、メンバーには相談しにくく、上司にも弱みを見せにくくなります。Aさんも、うまくいかないと感じながら、誰にも相談していませんでした。同じように管理職になったばかりの人や、先輩の管理職、上司に、早めに悩みを話してみましょう。会社によっては、新しく管理職になった人向けの研修や相談の場が用意されていることもあります。
走り続ける管理職と、チームを走らせる管理職の違い
初めての管理職で失敗しないためのチェックリスト
管理職になったばかりのころは、何から始めればよいか迷うものです。次の項目を、最初の3か月で一つずつ進めてみてください。
- 上司に、管理職として何を期待されているかを確かめた
- 自分の担当のうち、メンバーに引き継げるものを書き出した
- メンバー全員との1対1の面談を、予定として押さえた
- メンバーが何に困っていて、何に挑戦したいかを聞いた
- 相談されたら、まずメンバーの考えを聞くようにしている
- チーム全体の数字と、メンバーの成長を見るようにしている
- 管理職の悩みを相談できる相手を見つけた
Aさんは、部長と話したあと、担当していた大きな取引先を、中堅のメンバーに引き継ぎました。そのかわり、最初の数回の商談には一緒に出て、メンバーのやり方を見守ることにしました。メンバー全員との面談は、毎月第1週にまとめて予定に入れ、相談されたら「どうしたい?」と聞くことを心がけています。異動を希望していた若手のメンバーとも話し合い、本人がやってみたかった新しい地域の開拓を任せたところ、今では自分から提案を持ってくるようになったそうです。
「自分で売っていたころより、チームが売れたときのほうが、うれしくなってきたんだ」。Aさんは、湯上がりの顔でそう笑いました。
仕事の失敗を減らすために
管理職としてチームを見る時間をつくるには、自分とチームの仕事を見える化し、仕事の流れを整えることが役立ちます。
タイムマネジメント・スケジュール管理ツール【todoist】
自分の仕事とチームのための仕事を、期限つきで一覧にできるタイプです。メンバーとの面談や、引き継ぎの予定も書き込んでおけば、自分の商談ばかりで1日が埋まってしまうことを防げます。
業務プロセス整理・DX相談サービス【Chatwork DX相談窓口】
チームの仕事の流れや情報共有のしかたを整理することから支援してくれるタイプです。メンバーが自分で動けるように、仕事の手順や判断の目安をチームで共有する仕組みを考えるきっかけになります。
まなぶ
みらい
まなぶ初めての管理職で失敗する原因は、自分の担当を抱えたまま、メンバーと話す時間を後回しにし、相談にはすぐ答えを出して、プレイヤーのまま走り続けてしまうことです。担当の一部を引き継ぎ、面談を先に予定に入れ、メンバーの考えを生かして一緒に決める。それだけで、チームは自分で考えて動けるようになります。評価・昇進・管理職で失敗しないための考え方は、評価・昇進・管理職の失敗から学ぶでまとめています。
評価・昇進・管理職については、昇進を断って後悔する理由や後輩の指導役で失敗した話もあわせて読んでみてください。

