公務員の副業で失敗しない方法
公務員の副業で失敗する人の多くは、「趣味の延長だから」「少しの謝礼だから」と自分で判断して、職場への確認と許可の申請を飛ばしてしまいます。公務員は、報酬を受け取って事業や仕事に関わるときに、原則として任命権者の許可が必要です。何が許可の対象になるかは、国と自治体、それぞれの規程で決まっています。始める前に人事担当に確かめ、許可を取ってから動くこと。これが、好きなことを長く続けるための一番の近道です。
「趣味の写真だから大丈夫」と思っていた、県の職員Aさんの話
年末に帰省したとき、まなぶは高校の同級生だったAさん(30代男性)と、地元のバッティングセンターで久しぶりに会いました。Aさんは県の職員で、本庁の事務の仕事をしています。ベンチで缶コーヒーを飲みながら、Aさんは「この春、職場で人事の担当に呼ばれたんだ」と話し始めました。(登場する人物は、よくある失敗をもとに編集部が再現したものです)
Aさんの趣味は、学生のころから続けている写真です。3年ほど前、知り合いの写真館の店主から「七五三の時期だけ、週末に撮影の手伝いをしてくれないか」と頼まれました。1回あたり1万円ほどの謝礼で、秋の繁忙期には月に4〜5回。さらに、撮りためた風景写真をストックフォトのサイトで販売し、地域のイベントでは写真教室の講師も引き受けるようになりました。
「好きなことの延長だし、もらっているのはお礼くらい。仕事というほどのものじゃない」。そう考えたAさんは、職場には何も伝えていませんでした。確定申告もしていません。
ところが、ある年の秋、写真館のホームページに「撮影スタッフ」としてAさんの名前と写真が載りました。それを見た同じ課の職員が、悪気なく話題にしたことがきっかけで、人事の担当から事情を聞かれることになったのです。
確認の結果、写真館での撮影の手伝いは、報酬を受け取って継続的に他の事業に従事していると判断されました。許可を取っていなかったため、Aさんは厳しく注意を受け、写真館の手伝いはその月で終えることに。講師の仕事やストックフォトの販売についても、どこまでが許可の対象になるのかを、一つずつ人事担当と確認し直すことになりました。さらに、申告していなかった謝礼の分は、税務署に相談して申告し直しています。
「処分にならなかったのは運がよかっただけだと思う。何より、写真館の店主に迷惑をかけたのがつらかった」とAさん。打ちっぱなしの音が響くなかで、「最初に一度、人事に聞いていれば、それで済んだ話なんだよな」と、Aさんは静かに笑いました。
公務員の副業で失敗する5つの原因
「趣味の延長」なら許可はいらないと思い込んでいた
Aさんは、好きなことの延長であれば副業にはあたらない、と考えていました。けれども、許可が必要かどうかは「趣味かどうか」ではなく、報酬を受け取るか、継続的に関わるかで判断されるのが基本です。地方公務員は地方公務員法で、営利企業の役員を兼ねること、自分で営利企業を営むこと、報酬を得て事業や事務に従事することについて、任命権者の許可が必要とされています。本人の気持ちと、制度上の扱いは別ものです。
職場の規程を読まずに、自分で判断した
何が許可の対象で、どんな基準で許可されるのかは、国と自治体、また自治体ごとに細かく違います。国家公務員では、2026年4月から人事院が自営兼業として認める事業の範囲を広げ、知識や技能を生かした教室の運営なども承認の対象に加わりました。ただし、どの事業を認めるかは各省庁の判断で、地方公務員にそのまま当てはまるわけではありません。ネットの体験談や、ほかの自治体の例だけで判断しないことが大切です。
「少額の謝礼」なら問題ないと考えた
1回1万円ほどの謝礼でも、繰り返し受け取っていれば「報酬を得て従事している」とみなされることがあります。一方で、単発の講演の謝礼などの扱いは、規程によって異なります。金額の大小で自分を安心させるのではなく、金額・回数・期間をそろえて人事担当に伝え、判断をあおぐのが確実です。
税金の手続きを「関係ない」と思っていた
Aさんは、許可だけでなく確定申告もしていませんでした。公務員でも、副業の所得があれば会社員と同じように税金の手続きが必要です。所得税の確定申告が不要な場合でも、住民税の申告は別に必要になることがあります。手続きをしていないと、あとからまとめて申告し直すことになり、時間もお金もかかります。
相手先や周りへの影響を考えていなかった
公務員の兼業では、職務に専念できるか、公務の公正さや信頼を損なわないかも重視されます。Aさんの場合、写真館のホームページに名前が載ったことで話が広がりました。許可を取らずに始めると、やめるときに相手先にも迷惑がかかります。仕事の相手が、自分の職務と利害関係のある事業者でないかも、事前に確かめておくべきポイントです。
許可を後回しにする人と、先に確かめる人の違い
公務員が副業で失敗しないためのチェックリスト
公務員の副業は、手順さえ守れば、好きなことや地域のための活動を続ける道があります。始める前と始めたあとに、次の項目を確かめておきましょう。
- 職場の兼業(副業)の規程や、許可の基準を読んだ
- 活動の内容・相手先・受け取る金額・回数・期間をメモにまとめた
- 「報酬を受け取るか」「継続的に関わるか」を自分で判断せず、人事担当に相談した
- 許可が必要な活動は、許可が出てから始めることにした
- 相手先が、自分の職務と利害関係のある事業者でないか確かめた
- 勤務時間外にできるか、本業に疲れを持ち込まないか、時間の使い方を見直した
- 副業の所得について、確定申告や住民税の申告が必要か確かめた
- 内容や金額が変わったときは、あらためて相談・申請することを決めた
人事担当に相談するときは、「何をするのか」「どこから、いくら、どのくらいの頻度で受け取るのか」「いつからいつまで続けるのか」「勤務時間とは重ならないか」を1枚のメモにまとめて持っていくと、話がスムーズです。Aさんも、注意を受けたあとにこのメモを作り、写真教室の講師については、あらためて申請の手続きを進めています。許可が出なかった活動も、無償のボランティアとして関わり方を変えるなど、続ける方法を一緒に考えてもらえることがあります。「ダメと言われるのが怖いから聞かない」ではなく、続けたいからこそ、先に聞くと考えるのがコツです。
税金の手続きで迷いやすいのは、副業の確定申告です。どんな記録が必要かは、副業の確定申告で失敗した話で具体的に紹介しています。また、所得税の申告がいらない場合でも住民税の申告が別に必要になる点は、副業の「20万円以下は申告不要」を誤解して失敗した話もあわせて確認してみてください。
副業の税金とルールで困らないために
サブスク管理・家計簿アプリ【マネーフォワードME (ミー)】
副業の謝礼や経費の出入りを、本業の給与とは分けて一覧で見られるタイプです。いつ・どこから・いくら受け取ったかが記録に残るので、人事担当に相談するときの資料づくりにも、毎年の申告の準備にも役立ちます。
副業向け確定申告・税務相談サービス【リベ大税理士法人】
副業の所得の申告や、過去の申告もれへの対応について相談できるタイプです。公務員だからといって税金の手続きが変わるわけではありません。自己流で判断して後から慌てる前に、専門家に一度確認しておくと安心です。
まなぶ
みらい
まなぶ公務員の副業で大切なのは、「できるかどうか」を自分で決めずに、職場の規程と人事担当に確かめてから始めることです。許可の範囲を守り、税金の手続きもきちんと行えば、好きなことを長く続けられます。副業の税金・契約・ルールで失敗しないための考え方は、副業の税金・契約・ルールの失敗から学ぶでまとめています。
副業の税金・契約・ルールについては、副業の源泉徴収で失敗する人の特徴5選や、副業で開業届を出して後悔する理由もあわせて読んでみてください。

