部下の評価で失敗しない方法
部下の評価で失敗する人の多くは、評価の時期が近づいてから、そのときの印象や、最近目についた出来事だけで点数をつけ、評価の理由や次に期待することを、部下にきちんと伝えないまま面談を終えてしまう人です。評価は、部下にとって、半年や1年の働きを認めてもらう大切な機会です。理由の分からない評価は、部下のやる気を下げ、上司への信頼も失わせてしまいます。部下の評価は「点数をつける作業」ではなく、「ふだんの記録をもとに、次の成長につなげる話し合い」です。この記事では、まなぶが聞いたAさんの失敗ストーリーをもとに、部下の評価で失敗しない方法を解説します。
「最後の1か月」だけで評価してしまったAさんの話
まなぶが住むマンションでは、年に数回、住人の代表が集まる理事会が開かれます。そこで一緒に理事をしているのが、Aさん(40代男性)です。Aさんは、自動車の販売店の店長として、8人の営業スタッフをまとめています。ある日曜の夕方、理事会が終わって集会室の机を片づけていると、Aさんが「部下の評価で、大事な部下をがっかりさせてしまったことがあってね」と話し始めました。(登場する人物は、よくある失敗をもとに編集部が再現したものです)
店長になって2年目の春、Aさんは、初めて一人で8人分の評価をつけることになりました。ふだんは来店のお客様の対応や、本社との打ち合わせで忙しく、部下一人ひとりの働きを記録する余裕はありませんでした。評価の締め切りの前の週、Aさんは、それぞれの部下について思い出しながら、点数をつけていきました。
その中の一人、入って3年目の部下は、最後の1か月、販売の台数が目標に届いていませんでした。Aさんは、その印象が強く残っていて、「今期は、もう一歩だったね」と、ふつうより低めの評価をつけました。ところが、面談でそのことを伝えると、部下は黙りこみ、しばらくしてから言いました。「この半年の前半は、店でいちばん台数を売っていました。それに、新しく入ったスタッフの教育も、ずっと任されていたはずです」。Aさんは、半年のうち、最後の1か月のことしか覚えていなかったのです。
Aさんは、慌てて販売の記録を見直し、部下の言うとおりだと分かりました。本社と相談して評価を見直しましたが、部下からは「店長は、ふだん私たちのことを見ていないんだと思いました」と言われてしまいました。「評価の点数は直せても、信頼はすぐには戻らないんだよね」。Aさんは、片づけた椅子を並べながら、そう話してくれました。
部下の評価で失敗する5つの原因
ふだんの働きを、記録していなかった
人の記憶は、最近のことや、印象に残ったことに引っぱられがちです。半年前の頑張りは、思い出そうとしても、なかなか浮かんできません。部下の良かった行動や、困っていたことを、その都度一行ずつ記録しておくと、評価のときに半年分の働きを公平に振り返れます。記録は、数字の成果だけでなく、ほかの人を助けたことや、仕事の進め方の工夫なども残しておきましょう。週の終わりに5分、部下ごとに書きこむだけでも十分です。
評価の基準を、最初に共有していなかった
部下が何をすれば評価されるのかを知らないまま半年を過ごすと、評価の結果に納得しにくくなります。Aさんの部下も、新しいスタッフの教育が評価に入るのかどうかを、知らされていませんでした。期の初めに、評価の基準と、その部下に特に期待していることを伝えておくと、部下は力を入れるところが分かり、評価の話し合いも食い違いにくくなります。会社の評価の決まりがある場合は、その内容も一緒に確かめておきましょう。
途中で、期待とのずれを伝えていなかった
評価の面談で初めて「もう一歩だった」と言われても、部下はもう直しようがありません。期の途中で、うまくいっていることと、もう少し伸ばしてほしいことを伝えておくと、部下は残りの期間で取り組みを変えられます。月に一度の短い面談や、ふだんの声かけで十分です。途中で伝えておけば、評価の面談は「驚きの場」ではなく、「確かめ合う場」になります。初めて管理職になった人の進め方については、初めての管理職で失敗しない方法でも紹介しています。
評価の理由を、具体的に伝えなかった
「もう一歩だったね」のような言葉だけでは、部下は何が足りなかったのか分かりません。評価を伝えるときは、「前半の台数はとても良かった。後半は来店の少ない時期の動き方に課題があった」のように、具体的な出来事と理由をセットで伝えることが大切です。良かった点を先に伝えると、部下も課題を落ち着いて受け止めやすくなります。理由がはっきりしていれば、たとえ厳しい評価でも、部下は次に何をすればよいかが分かります。
次に期待することを、話し合わなかった
評価の面談は、過去を振り返るだけの場ではありません。次の期に何に挑戦してほしいのか、どんな力を伸ばしてほしいのかを、部下と話し合う場でもあります。Aさんの面談では、低い評価を伝えたところで話が止まってしまいました。面談の最後には、「次の半年で、どんなことに取り組みたいか」を部下に聞き、上司としてどう手助けするかも伝えましょう。部下の考えを先に聞くことで、部下自身が納得した目標を立てやすくなります。次への話し合いがあれば、部下は評価を前向きに受け止めやすくなります。
印象で評価する上司と、記録で評価する上司の違い
部下の評価で失敗しないためのチェックリスト
部下の評価をする立場になったら、次の項目を確かめてみてください。評価の面談の直前ではなく、期の初めから準備しておくことが大切です。
- 期の初めに、評価の基準と期待することを部下に伝えた
- 部下の良かった行動や困りごとを、その都度記録している
- 期の途中で、うまくいっていることと伸ばしてほしいことを伝えた
- 評価の前に、半年分の記録と数字を見返した
- 評価を伝えるとき、具体的な出来事と理由をセットにした
- 良かった点を先に伝えてから、課題を伝えている
- 面談の最後に、次に取り組みたいことを部下と話し合った
Aさんは今、手帳に部下8人のページを作り、週の終わりに一人ずつ、良かったことと気になったことを一行ずつ書きこんでいます。期の初めには、一人ずつ「今期、特に期待していること」を伝え、3か月目に短い面談で途中の様子を話し合います。評価の面談では、記録をもとに具体的な出来事を挙げ、最後に「次の半年で何に挑戦したいか」を部下に聞くようにしました。あのときの部下は、今では店の副店長の候補として、新しいスタッフの教育をまとめています。「記録をつけ始めてから、部下のいいところが前よりずっと見えるようになったんだ」。Aさんは、集会室の電気を消しながら、そう言って笑っていました。
仕事の失敗を減らすために
部下を公平に評価するには、ふだんの働きを記録しておくことと、チームの仕事の進み具合を見える形にしておくことが役立ちます。
タイムマネジメント・スケジュール管理ツール【todoist】
部下ごとの記録をつける時間や、途中の面談の予定を、くり返しのやることとして入れておけるタイプです。忙しい時期でも記録の習慣を続けやすくなり、評価の前に慌てることが減ります。
業務プロセス整理・DX相談サービス【Chatwork DX相談窓口】
チームの仕事の流れや、進み具合の共有のしかたを整理することから支援してくれるタイプです。部下の仕事の様子がふだんから見えるようになれば、最近の印象だけに頼らずに評価できるようになります。
まなぶ
みらい
まなぶ部下の評価で失敗する原因は、ふだんの働きを記録せず、評価の直前の印象だけで点数をつけ、理由や次に期待することを伝えないまま面談を終えてしまうことです。基準と期待を先に伝え、ふだんから記録し、途中でずれを伝え、具体的な理由と次の目標を話し合う。それだけで、部下が納得して成長できる評価になります。評価・昇進・管理職で失敗しないための考え方は、評価・昇進・管理職の失敗から学ぶでまとめています。
評価・昇進・管理職については、プレイングマネージャーで後悔する理由や上司との1on1で後悔する理由もあわせて読んでみてください。

