結論

教員のAI活用で失敗する人の多くは、忙しさに追われて、生徒一人ひとりへの言葉までAIに任せ、その子のことを一番知っている自分の目で確かめないまま渡してしまう人です。AIを使えば、授業のプリントやお便り、通知表の所見の下書きまで、短い時間で形にできます。けれど、教員の言葉は、生徒や保護者にとって「先生が自分を見てくれている」という信頼そのものです。この記事では、まなぶが聞いたAさんの失敗ストーリーをもとに、教員のAI活用で失敗した理由と、学校でAIを上手に使うための考え方を解説します。

1失敗ストーリー

AIで書いた所見に、保護者から電話がかかってきた

清掃ボランティアのあと、川沿いのベンチで教員のAさんから通知表の失敗の話を聞くまなぶのイラスト

この話は、まなぶが月に一度参加している、地域の清掃ボランティアで一緒になるAさんから聞いたものです。日曜の朝、川沿いのごみ拾いを終えて、公園のベンチで休んでいたとき、まなぶが「最近は学校の先生もAIを使うんですか」と聞くと、Aさんは「使ってるよ。ただ、一度大きな失敗をしてね」と、軍手を外しながら話してくれました。

Aさんは、公立中学校で国語を教えている40代の先生です。去年の冬、学期末の成績処理と行事の準備が重なり、Aさんは毎晩遅くまで学校に残っていました。担任をしているクラスは35人。一人ひとりの通知表に書く所見を考える時間が、どうしても取れませんでした。そこでAさんは、生徒ごとに「部活」「係」「よかったところ」を短くメモし、それをAIに渡して、所見の文章に整えてもらうことにしました。名前は書かずに番号だけにしたので、大丈夫だろうと考えていたそうです。35人分の所見は、ひと晩で書き上がりました。

AIの文章は、どれも丁寧で温かいものでした。Aさんはざっと読んで、そのまま通知表に書き写しました。ところが、通知表を渡した翌日、ある保護者から電話がかかってきました。「うちの子は合唱コンクールの指揮者なんてしていません。誰かと間違えていませんか」。調べてみると、メモを貼り付けるときに隣の行の生徒の情報が混ざっていて、AIがそれをそのまま、もっともらしい文章に仕上げていたのです。

さらに、ほかの保護者からも「兄のときとほとんど同じ文章でした」という声が届きました。AIの言い回しは、どの生徒にも似た形になっていたのです。Aさんは、該当する生徒の通知表を書き直し、保護者に直接会っておわびをしました。指揮者の話を書かれた生徒は、「先生、ぼくのこと見てなかったの?」と、少しさびしそうに言ったそうです。「時間がない中で、一番時間をかけるべき言葉を、一番手を抜いて書いてしまった」と、Aさんはベンチで遠くを見ながら話していました。

そのうえ、あとから校内で確かめると、生徒の名前やようすをAIに入力すること自体、学校で決められた使い方ではありませんでした。メモには名前を書いていなかったものの、Aさんはそのことも管理職に報告したそうです。話を聞いたまなぶは、相手のことを一番知っている人が書く言葉ほど、AIに任せてはいけない部分があるのだと感じていました。

2原因分析

教員のAI活用で失敗した理由

1

生徒一人ひとりへの言葉を、AIに任せた

通知表の所見や、生徒への声かけの言葉は、その子を見てきた先生にしか書けないものです。AIは、メモに書かれたこと以上に、その子のことを知りません。AIに任せられるのは、言い回しの候補を出したり、誤字を見つけたりするところまでです。その子らしさが伝わる中心の一文は、自分で書くと決めておきましょう。日ごろから気づいたことを短く書きためておけば、学期末に慌てることも減ります。

2

入力した情報と、できあがった文章を見比べなかった

たくさんの生徒の情報をまとめて扱うと、貼り付けのずれや入れ違いが起こりやすくなります。AIは、混ざった情報でも、自然な文章に仕上げてしまいます。だからこそ、できあがった文章を、元のメモと一人ずつ見比べることが欠かせません。名簿の順番と照らし合わせながら確かめる、二人で読み合わせるなど、間違いに気づける仕組みを作りましょう。一度にまとめて入力せず、数人ずつに分けて頼むだけでも、入れ違いはぐっと減ります。

3

どの生徒にも、似た文章になっていた

AIは、同じ形の情報を渡されると、同じような文章を作りがちです。保護者は、兄弟の通知表や、周りの家庭の話から、文章が似ていることに気づきます。似た文章は、「ちゃんと見てもらえていない」という気持ちにつながります。AIの下書きを使う場合でも、その子にしかない出来事を一つ書き足しましょう。「いつ、どんな場面で、どう感じたか」が入っているだけで、言葉はぐっとその子のものになります。

4

学校のルールを確かめずに使った

生徒の名前や成績、家庭のようすなどは、とても大切に扱うべき情報です。学校や自治体によって、AIで扱ってよい情報や使ってよいツールが決められていることがあります。使い始める前に、管理職や情報担当の先生に、どの情報なら扱ってよいかを確かめましょう。名前を伏せていても、組み合わせると誰か分かる情報もあることを知っておくことが大切です。迷ったときは、入力しないほうを選ぶのが安全です。

5

AIに任せる仕事の順番を、まちがえた

Aさんが本当に助けてほしかったのは、時間でした。けれど、AIで時間を生み出すなら、まず任せるべきなのは、プリントの下書きや行事の案内、配布物の誤字の確認のような仕事です。生徒一人ひとりに向き合う仕事ほど人が受け持ち、まわりの事務的な仕事をAIに任せると、浮いた時間を本当に大切なことに使えます。Aさんの場合も、プリント作りをAIに任せていれば、所見を自分で書く時間は十分に作れたはずでした。

3図解

教員がAI活用で失敗する流れと、上手に使える流れの違い

⚠ 教員のAI活用で失敗する人のパターン
忙しさから、所見のような一人ひとりへの言葉をAIに任せる
↓
できあがった文章を、元のメモと見比べずに使う
↓
学校のルールを確かめずに、生徒の情報を入力する
↓
間違いや似た文章で、生徒や保護者の信頼を損ねる
◎ 教員がAIを上手に使えるパターン
プリントや案内など、事務的な仕事からAIに任せる
↓
生徒への言葉は、中心の一文を自分で書く
↓
学校のルールを確かめ、できあがった文章を一人ずつ見比べる
↓
浮いた時間を、生徒と向き合う時間に使える
4解決策

学校でAIを使う前のチェックリスト

AIは、先生の忙しさを和らげてくれる心強い道具です。上手に使うために、次の項目を確かめてみてください。

  • 学校で認められたツールと、入力してよい情報を確かめた
  • 生徒の名前や、誰か分かる組み合わせの情報を入力していない
  • AIに任せる仕事を、事務的な仕事から選んだ
  • 生徒への言葉の中心の一文は、自分で書いた
  • できあがった文章を、元のメモと一人ずつ見比べた
  • 似た文章になっていないか、まとめて読み返した

Aさんは今、学校で認められたAIツールを使って、行事の案内やプリントの下書きを作っています。所見は、毎日の授業や休み時間に気づいたことを手帳に書きためておき、それをもとに自分で書くようにしたそうです。「AIに浮かせてもらった時間で、生徒の顔を見る」。Aさんのその言葉に、まなぶは大きくうなずきました。

※学校や自治体によって、生成AIの使い方についての決まりが定められている場合があります。生徒や保護者の情報を扱う前に、必ず勤務先の決まりを確認しましょう。
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Aさんは、AIで仕上げた通知表の所見に別の生徒の情報が混ざっていて、保護者から電話がかかってきたそうです…。
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生徒一人ひとりへの言葉は、その子を見てきた先生にしか書けません。AIには事務的な仕事を任せて、言葉の中心は自分で書きましょう。
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AIで浮かせた時間で、相手の顔を見るんですね。

教員のAI活用で失敗する原因は、生徒一人ひとりへの言葉をAIに任せ、元のメモと見比べず、学校のルールも確かめないまま使ってしまうことです。事務的な仕事からAIに任せ、生徒への言葉の中心は自分で書き、できあがった文章を一人ずつ確かめる。それだけで、AIは先生の時間を生み出す頼れる道具になります。職種ごとにAIを使うときに失敗しないための考え方は、職種別のAI活用失敗から学ぶでまとめています。

職種別のAI活用については、販売・接客職のAI活用で失敗する人の特徴5選や個人店の店主のAI活用で後悔する理由もあわせて読んでみてください。

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