結論

マーケティング職のAI活用で後悔する人の多くは、AIが作った「それらしいお客さま像」を本物のお客さまだと思い込み、実際のお客さまの声を一度も確かめないまま、広告や案内を作り込んでしまう人です。AIに頼めば、ターゲットの人物像や広告の文章、案内メールの文面まで、一日でそろえることができます。けれど、マーケティングの出発点は、「誰が、何に困っていて、なぜ選ぶのか」という本当のお客さまの姿です。この記事では、まなぶの失敗ストーリーをもとに、マーケティング職のAI活用で後悔する理由と、AIを上手に使う考え方を解説します。

1失敗ストーリー

AIが作ったお客さま像に向けて、2か月走り続けた

営業の先輩から商談のメモを見せてもらい、本物のお客さまの言葉に気づくまなぶのイラスト

今年の5月、まなぶは、会社の新しいサービスを広めるための企画を任されました。中小企業向けに、業務のシステム化を手伝うサービスです。営業企画として、案内のページやオンライン説明会の告知、メールの文面までを一人でまとめることになりました。時間がなかったまなぶは、まずAIに「このサービスのターゲットになる人物像を作って」と頼みました。

AIが作った人物像は、とても具体的でした。「40代、中小企業の情報システム課の課長。会社のデジタル化に意欲があり、最新の技術の情報を集めている」。まなぶはこの人物像をもとに、AIと一緒に案内ページの文章や説明会の告知を作りました。専門的な言葉を使った、頼もしい印象の文章ができあがり、上司も「よくまとまっているね」と言ってくれました。準備はわずか1週間で終わりました。いつもなら1か月はかかる準備がこんなに早く終わったことで、まなぶは「AIを使えば、マーケティングの仕事はもっと速く回せる」と手応えを感じていました。

ところが、2か月たっても、説明会の申し込みは目標30件のうち3件だけでした。案内ページは見られているのに、申し込みにつながらないのです。困ったまなぶが営業の先輩に相談すると、先輩は案内ページを見て言いました。「うちに相談してくるお客さんって、情報システムの課長なんていない会社がほとんどだよ。総務の人が兼任で担当していて、こういう専門用語だらけの説明だと、自分には関係ないって思っちゃうんじゃないかな」。

まなぶが2か月かけて話しかけていたのは、AIが作った「いそうなお客さま」で、実際にサービスを必要としている人ではなかったのです。先輩が持っていた商談のメモを見せてもらうと、お客さまが口にしていたのは「パソコンに詳しい人がいない」「何から始めればいいか分からない」という悩みでした。案内ページには、その言葉はどこにも書かれていませんでした。「最新の技術」「業務の最適化」といった、まなぶの文章に並んでいた言葉は、お客さまの口からは一度も出ていなかったのです。

まなぶは、案内ページと告知を一から作り直しました。「AIが作ったお客さま像に、一度でも本物のお客さまの声を当てていれば、2か月を無駄にしなかった」。そう振り返ったまなぶは、それ以来、企画を始める前に、必ず営業やサポートの人に話を聞きに行くようになりました。

2原因分析

マーケティング職のAI活用で後悔する理由

1

AIの人物像を、事実だと思い込んでしまう

AIが作るお客さまの人物像は、とても具体的で説得力があります。けれど、それはAIがよくある情報を組み合わせて作った「仮の姿」にすぎません。AIの人物像は「仮説」として扱い、本物のお客さまの情報で確かめるまでは、それを前提に作り込まないことが大切です。人物像を作ったら、「この人は本当にいるか」を確かめる手順を必ず入れましょう。営業の人に人物像を見せて「こういうお客さま、実際にいますか」と聞くだけでも、大きなずれにはすぐ気づけます。

2

実際のお客さまの言葉を、集めていない

お客さまが自分の悩みをどんな言葉で話すのかは、AIからは分かりません。案内や広告の言葉は、お客さまが実際に使っている言葉に近いほど届きやすくなります。商談のメモ、問い合わせの内容、アンケートの自由回答など、社内にはお客さまの言葉がたくさん眠っています。まずはそれを集めてから、AIに文章づくりを手伝ってもらいましょう。集めた言葉をAIに渡して「よく出てくる悩みを分類して」と頼めば、整理の手間も減らせます。

3

営業やサポートの人に、話を聞いていない

毎日お客さまと話している営業やサポートの人は、マーケティングにとって一番の情報源です。AIに聞けば分かる気がして、社内の人に聞く手間を省いてしまうのが、よくある落とし穴です。企画を始める前に、30分でもよいので、お客さまと接している人に「どんな人が、どんなことで困って相談に来るか」を聞いてみましょう。

4

小さく試さずに、一度に作り込んでしまう

AIを使うと、たくさんの文章や案内を一度に作れてしまいます。そのため、試す前にすべてを作り込みがちです。最初の方向がずれていると、作り込んだぶんだけ直す手間も大きくなります。まずは案内の文章を2種類だけ作って反応を比べるなど、小さく試してから広げましょう。AIは、試す案をいくつも作るときにこそ力を発揮します。反応のよかった案の共通点を見つければ、次の企画にも生かせます。

5

結果を見て、直す時期を決めていない

まなぶは、申し込みが少ないまま2か月を過ごしてしまいました。数字が伸びないとき、どの時点で何を見直すかを決めていなかったからです。始める前に、「2週間たったら申し込み数を見て、目標の半分に届かなければ見直す」のように、確かめる時期と基準を決めておきましょう。早く気づけば、それだけ早く直せます。

3図解

マーケティング職でAI活用に後悔する人と、上手に使える人の違い

⚠ マーケティング職のAI活用で後悔する人のパターン
AIにお客さまの人物像を作ってもらう
↓
本物のお客さまの声で確かめず、それに向けて作り込む
↓
反応が悪くても、見直す時期を決めずに続ける
↓
届かない言葉で時間と費用を使い、機会を逃す
◎ マーケティング職でAIを上手に使える人のパターン
営業やサポートからお客さまの言葉を集める
↓
集めた言葉をAIに渡し、案を複数作ってもらう
↓
小さく試して反応を比べ、決めた時期に見直す
↓
本物のお客さまに届く言葉を、早く見つけられる
4解決策

マーケティングでAIを使う前のチェックリスト

AIは、案を広げたり、文章を整えたりするときの心強い道具です。企画を始める前に、次の項目を確かめてみてください。

  • AIの人物像を「仮説」として扱い、確かめる手順を決めた
  • 商談のメモや問い合わせから、お客さまの言葉を集めた
  • 営業やサポートの人に、お客さまの様子を聞いた
  • 案を複数作り、小さく試して反応を比べる計画にした
  • 結果を確かめる時期と、見直す基準を決めた
  • お客さまの情報をAIに入力してよいか、会社のルールを確認した

まなぶが作り直した案内ページには、商談のメモにあった「パソコンに詳しい人がいなくても大丈夫」という言葉を、そのまま見出しに使いました。AIには、その言葉をもとにした案を3つ作ってもらい、小さく試して一番反応のよいものを選びました。AIに頼む前に、まずお客さまの声を聞く。次の月の説明会には、目標を超える申し込みが集まりました。

※商談の記録や問い合わせの内容には、お客さまの会社名や個人の情報が含まれることがあります。AIに入力してよいかは、会社のルールによって異なります。使う前に、会社で認められているツールと使い方を確認しましょう。
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まなぶまなぶ
AIが作ったお客さま像に向けて案内を作り込んだら、本物のお客さまにはまったく届いていませんでした…。
みらいみらい
AIの人物像は仮説です。営業やサポートの人からお客さまの言葉を集めて、小さく試しながら確かめましょう。
まなぶまなぶ
AIに頼む前に、まずお客さまの声を聞くんですね。

マーケティング職のAI活用で後悔する原因は、AIが作ったお客さま像を事実だと思い込み、本物のお客さまの言葉を確かめないまま、一度に作り込んでしまうことです。お客さまの言葉を集めてAIに渡し、小さく試し、決めた時期に見直す。それだけで、AIは届く言葉を見つけるための頼れる道具になります。職種ごとにAIを使うときに失敗しないための考え方は、職種別のAI活用失敗から学ぶでまとめています。

職種別のAI活用については、販売・接客職のAI活用で失敗する人の特徴5選や採用面接でAIを使うときに失敗しない方法もあわせて読んでみてください。

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