結論

採用面接でAIを使うときに失敗しないためには、応募者の個人情報をAIに入れないことを守ったうえで、AIには質問の「たたき台」づくりだけを手伝ってもらい、目の前の応募者の経験を深く聞く時間は自分で確保することが大切です。AIに頼めば、面接の質問リストや評価のメモの書き方を、すぐにそろえてもらえます。けれど、面接は、会社が応募者を選ぶ場であると同時に、応募者が会社を選ぶ場でもあります。この記事では、まなぶの失敗ストーリーをもとに、採用面接でAIを使うときに失敗しない方法を解説します。

1失敗ストーリー

「自分の経験を聞いてもらえなかった」と、内定を断られた

人事の担当者から応募者が内定を辞退したと聞き、質問リストを握りしめて肩を落とすまなぶのイラスト

今年の4月、まなぶの部署で、中途採用で営業企画のメンバーを一人迎えることになりました。入社して2年目のまなぶは、先輩と二人で一次面接を担当することになりました。面接官は初めてです。準備の時間がなかったまなぶは、AIに「営業企画の中途採用で使える面接の質問を20個作って」と頼み、さらに、応募者の職務経歴書の内容をAIに貼り付けて、「要点をまとめて」と頼みました。

面接当日、まなぶはAIが作った質問リストを上から順番に読み上げました。「あなたの強みは何ですか」「チームで成果を出した経験を教えてください」。応募者は丁寧に答えてくれましたが、まなぶは次の質問を読むことに気を取られ、答えを深く聞き返すことができませんでした。面接のあとは、メモをAIに渡して評価コメントを書いてもらい、そのまま人事に送りました。予定の1時間のうち、まなぶが応募者の話に聞き返したのは、数えるほどしかありませんでした。それでも、質問を全部聞けたことで、まなぶは「準備どおりに進められた」と満足していました。

翌日、人事の担当者から連絡がありました。「職務経歴書の内容を、AIに入力しましたか? 応募者の個人情報は、会社で認められていないツールには入れない決まりになっています」。まなぶは、応募者の大切な情報を、ルールを確かめないままAIに入力してしまっていたのです。さらに、AIが書いた評価コメントには「やや受け身な印象」とありましたが、まなぶ自身、なぜそう感じたのかを説明できませんでした。

その応募者は、二次面接で部長に高く評価され、内定が出ました。ところが、応募者は内定を辞退しました。人事が理由を聞くと、こう答えたそうです。「一次面接では、どこの会社でも聞かれるような質問ばかりで、自分の経験をあまり聞いてもらえなかった。この会社で自分が何を期待されているのか、分からなかったんです」。会社が選ぶはずの面接で、まなぶは応募者に選ばれなかったのでした。

まなぶは、2年前の自分の転職活動を思い出しました。面接で自分の経験を掘り下げて聞いてくれた会社ほど、「ここで働きたい」と思えたこと。逆に、決まりきった質問だけで終わった面接では、相手の会社のことがよく分からなかったこと。面接官になったとたん、自分がされてうれしかったことを忘れていたと、まなぶは気づきました。

2解決策

採用面接でAIを使うときに失敗しない方法

1

応募者の個人情報は、AIに入力しない

職務経歴書や履歴書には、名前や経歴など、応募者の大切な個人情報が書かれています。会社で認められていないツールに入力しないことは、面接官としての最低限の約束です。AIに手伝ってもらうのは、募集している仕事の内容や、求める経験など、応募者の情報を含まない部分に限りましょう。迷ったときは、使う前に人事の担当者に確かめることが大切です。職務経歴書は、AIに頼らず自分で読み、気になったところに印をつけておくだけで、面接で聞きたいことは自然に見えてきます。

2

質問リストは、募集する仕事に合わせて自分で絞る

AIが作る質問は、どの会社のどの面接でも使えるものになりがちです。応募者が「この会社は自分の何を見ているのか」を感じられる質問が、良い面接をつくります。AIには「営業企画の仕事で、こんな場面に強い人を探している」と仕事の中身を伝え、出てきた案から、自分の部署に本当に必要な質問を3〜5個に絞りましょう。

3

質問を読むより、答えを聞き返す時間を取る

質問の数が多いと、面接官はリストを進めることに気を取られます。けれど、応募者の本当の力が見えるのは、「それはなぜですか」「そのとき、一番大変だったことは?」と聞き返したときです。質問は少なく、聞き返しを多くを心がけましょう。一つの経験を深く聞くことで、応募者も「ちゃんと見てもらえた」と感じられます。もう一人の面接官と、聞き返す役と記録する役を分けておくのもおすすめです。

4

評価は、自分の言葉と根拠で書く

面接の評価コメントは、その後の選考を左右する大切な記録です。AIに整えてもらうと、「受け身な印象」のような、根拠のはっきりしない言葉が混ざることがあります。評価は、「どの質問に、どう答えたから、そう判断したか」を自分の言葉で書くようにしましょう。根拠を書いておけば、ほかの面接官とも判断をすり合わせやすくなります。評価は、記憶が新しい面接直後に書くのが一番正確です。

5

会社と仕事のことを、自分の言葉で伝える

面接は、応募者が会社を知る場でもあります。この部署でどんな仕事をして、どんなことを期待しているのかを、面接官が自分の言葉で伝えることが、応募者の「ここで働きたい」につながります。面接の最後の数分は、応募者の質問に答える時間や、仕事のやりがいを話す時間として、あらかじめ確保しておきましょう。応募者からの質問には、その人が何を大切にしているかが表れます。

3図解

採用面接でAIを使って失敗する人と、上手に使える人の違い

⚠ 採用面接でAIを使って失敗する人のパターン
職務経歴書をAIに貼り付けて、要点をまとめてもらう
↓
AIの質問リストを、上から順番に読み上げる
↓
根拠のない評価コメントを、AIに書いてもらって送る
↓
ルール違反と浅い面接で、良い応募者に選ばれない
◎ 採用面接でAIを上手に使える人のパターン
個人情報は入れず、仕事の中身だけを伝えて質問案を作る
↓
質問を3〜5個に絞り、答えを深く聞き返す
↓
評価は自分の言葉と根拠で書き、会社のことも自分で伝える
↓
応募者の力を見極め、応募者からも選ばれる面接になる
4チェックリスト

面接の前に確かめたいチェックリスト

AIは、面接の準備を手伝ってくれる心強い道具です。面接の前に、次の項目を確かめてみてください。

  • 応募者の個人情報を、認められていないツールに入力していない
  • AIの使い方について、人事の担当者に確かめた
  • 質問を、募集する仕事に合わせて3〜5個に絞った
  • 答えを聞き返す時間を、面接の中に確保した
  • 評価は「どの答えから、そう判断したか」を自分の言葉で書く
  • 部署の仕事や期待していることを、自分の言葉で話せる

まなぶは今も、面接の準備にAIを使っています。ただ、AIに伝えるのは募集する仕事の内容だけ。出てきた質問案から自分で4つに絞り、面接では一つひとつの答えを深く聞き返すようにしています。評価は面接のすぐあとに、自分の言葉で書いています。AIに任せるのは準備のたたき台、面接は人と人が向き合う時間。次の面接のあと、応募者から「話していて楽しかったです」と言ってもらえました。

※応募者の個人情報の扱い方は、会社の決まりや関係する法律にもとづいて定められています。面接の準備や評価にAIを使う前に、必ず人事の担当者に会社のルールを確認しましょう。
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AIの質問リストを読み上げるだけの面接をしたら、内定を出した応募者に「経験を聞いてもらえなかった」と辞退されてしまいました…。
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面接は、応募者が会社を選ぶ場でもあります。個人情報は入れずに質問のたたき台だけ作ってもらい、答えは自分で深く聞き返しましょう。
まなぶまなぶ
AIは準備のたたき台で、面接は人と人が向き合う時間なんですね。

採用面接でAIを使うときに失敗しないためには、応募者の個人情報をAIに入れず、質問は仕事に合わせて絞り、答えを深く聞き返すことが大切です。評価は自分の言葉と根拠で書き、会社のことも自分の言葉で伝える。それだけで、面接は応募者からも選ばれる時間になります。職種ごとにAIを使うときに失敗しないための考え方は、職種別のAI活用失敗から学ぶでまとめています。

職種別のAI活用については、マーケティング職のAI活用で後悔する理由や個人店の店主のAI活用で後悔する理由もあわせて読んでみてください。

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