社内講師のAI活用で失敗した話
社内講師のAI活用で失敗する人の多くは、研修のスライドや練習問題をAIでひと通りそろえて安心し、自分の経験や会社の実例を入れないまま、教科書を読むような研修をしてしまう人です。AIを使えば、研修の構成からスライド、練習問題まで、短い時間で形にできます。けれど、社内研修で受講者が本当に聞きたいのは、一般論ではなく「この会社で、先輩はどうしてきたのか」という話です。この記事では、まなぶの失敗ストーリーをもとに、社内講師のAI活用で失敗した理由と、伝わる研修をつくる考え方を解説します。
「教科書を読んでいるみたいでした」と書かれたアンケート
今年の4月、まなぶは、新入社員研修の一コマで講師を務めることになりました。テーマは「伝わる資料の作り方」。副業で資料作成の仕事をしていることを知った人事の担当者から、「ぜひ新人に教えてほしい」と頼まれたのです。まなぶにとって、人前で何かを教えるのは初めてのことでした。
研修は2時間。ふだんの仕事と並行しての準備で、時間はあまりありませんでした。まなぶは、AIに「新入社員向けに、資料作成の基本を教える2時間の研修を作って」と頼み、出てきた構成をもとに、スライドと練習問題もAIで作りました。一晩で、40枚のスライドと10問の練習問題がそろいました。見た目も整っていて、まなぶは「これなら大丈夫」と思っていました。研修の前日も、スライドを一度めくって流れを確かめただけで、何を話すかを自分で考える時間は取りませんでした。
研修の当日、まなぶはスライドを順番に説明していきました。ところが、30分もたたないうちに、新人たちの表情が少しずつ曇っていくのが分かりました。質問の時間に、一人の新人が手を挙げました。「うちの会社の提案書だと、実際はどう作るんですか?」。まなぶは答えに詰まりました。スライドに並んでいたのはどこの会社にも当てはまる一般論で、自分の言葉で話せる会社の実例が、一つも入っていなかったのです。
さらに、練習問題の答え合わせで、別の新人から「この答え、さっきのスライドと言っていることが違いませんか」と指摘されました。見直すと、AIが作った模範解答の一つが、スライドの説明と食い違っていました。研修のあとのアンケートには、「教科書を読んでいるみたいでした」「まなぶさん自身の話が聞きたかったです」という声が並びました。40枚のスライドをそろえたのに、新人の心に残ったものはほとんどなかったのです。
人事の担当者は、「まなぶさんに頼んだのは、まなぶさんの経験を伝えてほしかったからなんです」と言いました。まなぶは、入社したばかりのころ、資料の数字を間違えて上司に指摘された自分の失敗を思い出しました。新人が聞きたかったのは、ああいう話だったのかもしれない。そう気づいたのは、研修が終わったあとでした。どれだけ整ったスライドより、先輩が実際にやってしまった失敗と、そこから何を学んだかのほうが、新人にとってはずっと役に立つ。まなぶは、そのことを身をもって知りました。
社内講師のAI活用で失敗した理由
一般論だけで、研修を組み立てた
AIが作る研修の内容は、どこの会社でも通じる一般論になりがちです。それ自体は間違いではありませんが、社内研修の受講者は、「この会社ではどうするのか」を知りたくて参加しています。AIに構成を作ってもらったら、各章に一つずつ、会社の実例や自分の経験を入れましょう。それだけで、研修は「この会社の先輩の話」に変わります。実際に使われた提案書を、名前や数字を伏せて見せるのも効果的です。
自分の言葉で話せない量のスライドを用意した
AIを使うと、スライドはいくらでも作れます。けれど、講師が自分の言葉で説明できないスライドは、読み上げるだけになってしまいます。2時間の研修なら、スライドは15〜20枚ほどに絞り、一枚ごとに「ここで何を話すか」を自分の言葉でメモしておきましょう。スライドを減らしたぶん、受講者と話す時間が増えます。前日に一度、声に出して通しで話してみると、自分の言葉で話せないスライドがすぐに分かります。
練習問題と答えを、自分で解いて確かめなかった
AIが作った練習問題と模範解答は、スライドの説明と食い違っていることがあります。練習問題は、研修の前に必ず自分で解き、答えとスライドの説明が一致しているかを確かめることが大切です。受講者の前で答えが食い違うと、研修全体の信頼が揺らいでしまいます。自分で解いてみると、問題が難しすぎないか、時間内に解けるかも確かめられます。
受講者がつまずくところを、想像していなかった
研修は、受講者がどこでつまずくかを想像して組み立てるものです。AIは、受講者のことを知りません。「入社したばかりのころ、自分は何が分からなかったか」を思い出すことが、一番の準備になります。人事の担当者や、去年入社した人に「研修で何を知りたかったか」を聞くのも効果的です。つまずきやすいところが分かれば、そこに時間をかける研修の組み立てができます。
頼まれた理由を、考えていなかった
社内講師を頼まれるのは、その人に伝えてほしい経験や知識があるからです。AIで一般的な内容をそろえるだけなら、自分が講師をする意味が薄れてしまいます。研修を頼まれたら、まず「なぜ自分に頼まれたのか」を依頼した人に確かめましょう。それが、研修の一番の中心になります。頼んだ人の期待が分かれば、AIに任せてよい部分と、自分が話すべき部分の線も引きやすくなります。
社内講師がAI活用で失敗する流れと、上手に使える流れの違い
社内研修をAIで準備する前のチェックリスト
AIは、研修の準備を手伝ってくれる心強い道具です。研修の前に、次の項目を確かめてみてください。
- なぜ自分に講師を頼んだのかを、依頼した人に確かめた
- 受講者が知りたいことを、人事や去年の受講者に聞いた
- 各章に、会社の実例か自分の経験を一つずつ入れた
- スライドを、自分の言葉で説明できる枚数に絞った
- 練習問題を自分で解き、スライドと答えが一致しているか確かめた
- 社内の資料をAIに入力してよいか、会社のルールを確認した
翌年の研修に向けて、まなぶはスライドを18枚に絞り直しました。AIには骨組みと練習問題の案を作ってもらいましたが、各章には、自分が数字を間違えた話や、上司に資料を直されたときの話を入れました。練習問題は、自分で全部解いてから使うことにしています。AIで作るのは研修の骨組み、話すのは自分の経験。人事の担当者には、来年もう一度講師をさせてほしいと、自分から伝えました。
仕事でのAIの使い方を身につけるなら
AIを仕事に上手に取り入れるには、自分の職種のどこでAIを使い、どこを人が受け持つのかを分けて考えることが大切です。
ChatGPTなどの生成AIを学び仕事に活かす!「DMM 生成AI CAMP」
業務フローの見直し方や、指示の出し方(プロンプト)のコツまで含めて体系的に学べるタイプ。研修の準備のように、AIで骨組みを作り、自分の経験で中身を仕上げる進め方を身につけられます。
資格と仕事に強い!個人レッスンのプログラミングスクール【Winスクール】
プロンプトの基本の型や、業務別の活用シーンを体系的に学べるタイプ。独学で行き詰まった人に向いています。自分の仕事に合わせたAIの使い方を、講師に相談しながら学べます。
まなぶ
みらい
まなぶ社内講師のAI活用で失敗する原因は、AIで一般論のスライドや練習問題をそろえて安心し、会社の実例や自分の経験を入れないまま、読み上げるだけの研修をしてしまうことです。頼まれた理由を確かめ、各章に自分の経験を入れ、スライドを絞って、練習問題は自分で解く。それだけで、研修は受講者の心に残るものになります。職種ごとにAIを使うときに失敗しないための考え方は、職種別のAI活用失敗から学ぶでまとめています。
職種別のAI活用については、営業企画職のAI活用で失敗する人の特徴5選や不動産営業のAI活用で後悔する理由もあわせて読んでみてください。

