結論

社内報担当のAI活用で失敗しないためには、AIに記事の形を整えてもらったあと、書かれている出来事や言葉が「本当にあったことか」を、取材した本人に必ず確かめてから載せることが大切です。AIを使えば、取材のメモから、読みやすく心に響く記事をすぐに作れます。けれど、社内報の記事は、同じ会社の仲間が読み、記事に出てくる本人も読むものです。少しの脚色でも、本人を困らせたり、職場の信頼を損ねたりすることがあります。この記事では、まなぶの失敗ストーリーをもとに、社内報担当のAI活用で失敗しない方法を解説します。

1失敗ストーリー

AIが書き足した「感動の場面」で、先輩が困ってしまった

社内報の記事について、困った顔の先輩に申し訳なさそうに頭を下げるまなぶのイラスト

今年の夏から、まなぶは、営業部の取り組みを社内に紹介する月1回の「営業ニュース」の担当になりました。営業企画の仕事の一つとして、営業の成果やがんばりを、ほかの部署にも伝えるための社内報です。初めての担当号で、まなぶは、半年がかりの大きな案件を受注した営業の先輩を取材することにしました。仕事ぶりを社内に伝えられる、うれしい企画でした。

30分ほど話を聞き、メモをまとめたまなぶは、それをAIに渡して「社内報向けに、読んだ人が感動するような記事にして」と頼みました。AIが書いた記事は、まなぶのメモよりずっと生き生きとしていました。「3か月間、毎晩遅くまで提案書を練り直し」「受注が決まった瞬間、先輩の目には涙が浮かんでいた」「お客さまの社長からも、直接お礼の電話があった」。まなぶは「いい記事になった」と思い、そのまま社内に配信しました。締め切りに追われていたこともあり、取材した先輩に記事を見てもらうという考えは、そのときまったく浮かんでいませんでした。

配信の翌日、先輩がまなぶの席にやってきました。「記事、ありがとう。でもさ、泣いてないし、社長から電話ももらってないよ。みんなに『泣いたんだって?』って言われて、ちょっと困ってる」。AIは、まなぶのメモにはなかった「感動の場面」を、記事らしく見せるために書き足していたのです。まなぶは、取材した本人に一度も記事を見せないまま配信していました。

さらに、上司からも声がかかりました。「『毎晩遅くまで』を美談みたいに書くのは、会社としては困るんだよね。働き方を見直そうとしている時期だから」。記事の言葉が、会社の方針とずれたメッセージになっていたのです。まなぶは、先輩とほかの部署の人たちに訂正の連絡を入れ、次の号でおわびの一文を載せました。「読みやすさと引きかえに、本当のことと、本人の気持ちを置き去りにしていた」と、まなぶは振り返ります。

先輩は笑って許してくれましたが、「次の取材のとき、また話してもいいかな」と少し迷う様子だったのが、まなぶには何より胸に残りました。社内報は、取材される人が安心して話してくれて、初めて続けられるものなのだと気づきました。読む人を感動させることより先に、話してくれた人を裏切らないこと。それが、社内報を書く人の一番の責任なのだと、まなぶは考えるようになりました。

2解決策

社内報担当のAI活用で失敗しない方法

1

AIに「事実だけで書いて」と伝える

AIに「感動する記事に」「印象に残るように」と頼むと、AIは記事らしく見せるために、実際にはなかった場面や言葉を書き足すことがあります。頼むときは、「メモにある事実だけを使って、書き足しはしないで」と、はっきり伝えましょう。そのうえで、「書き足したところがあれば教えて」と添えると、確かめる手間も減らせます。メモが少ないと書き足しが増えやすいので、取材のメモはできるだけ具体的に残しておきましょう。

2

記事は必ず、取材した本人に見せてから載せる

社内報の記事に出てくる本人は、必ずその記事を読みます。本人が「言っていない」「していない」と感じる内容が一つでもあると、記事全体の信頼が崩れます。配信する前に、本人に記事を見てもらい、事実と違うところや、載せてほしくないところがないかを確かめましょう。本人の確認は、社内報担当の一番大切な仕事です。確認をお願いするときは、「事実と違うところ」「載せてほしくないところ」の2点だけを見てほしいと伝えると、本人も答えやすくなります。

3

かぎかっこの言葉は、本人の言葉だけにする

記事の中のかぎかっこは、読む人には「本人がそう言った」と受け取られます。AIは、それらしい言葉をかぎかっこで書くことがあります。かぎかっこに入れるのは、取材で本人が実際に話した言葉だけと決めておきましょう。取材のときに、印象に残った言葉をそのままメモしておくと、記事に生かしやすくなります。本人の許可をもらって録音しておくのも、言葉を正確に残すよい方法です。

4

会社の方針とずれる言葉がないか確かめる

長時間の働き方や、無理をしたことを美談として書くと、会社が大切にしたい考え方とずれたメッセージになることがあります。社内報は、会社が社員に伝える言葉でもあります。配信する前に、上司や広報の担当者に「伝えたい方向とずれていないか」を見てもらいましょう。AIに「この記事が誤解されそうなところはどこか」と聞いてみるのも、見直しの手がかりになります。がんばりを伝えるときは、時間の長さではなく、工夫したことや周りとの協力に光を当てるとよいでしょう。

5

AIで浮いた時間を、取材に使う

AIを使えば、記事を書く時間は大きく減らせます。その時間は、取材を深めることに使いましょう。良い記事のもとになるのは、整った文章ではなく、取材で聞けた本当の話です。取材の時間を少し長く取ったり、一緒に働いた人にも話を聞いたりすると、脚色しなくても心に響く記事になります。本当の話には、作られた場面にはない手ざわりがあります。

3図解

社内報でAI活用に失敗する人と、上手に使える人の違い

⚠ 社内報担当のAI活用で失敗する人のパターン
取材のメモを渡し、「感動する記事に」と頼む
↓
AIが書き足した場面や言葉に、気づかない
↓
本人に見せずに、そのまま配信する
↓
本人を困らせ、取材に協力してもらいにくくなる
◎ 社内報担当がAIを上手に使えるパターン
取材を深め、本人の言葉をそのままメモする
↓
「事実だけで、書き足しはしないで」とAIに頼む
↓
本人と上司に確かめてもらってから配信する
↓
本人も読む人も安心できる、信頼される社内報になる
4チェックリスト

社内報の記事を配信する前のチェックリスト

AIは、社内報の記事づくりを手伝ってくれる心強い道具です。配信する前に、次の項目を確かめてみてください。

  • AIに「事実だけで、書き足しはしないで」と伝えた
  • 書き足されたところがないか、メモと見比べた
  • かぎかっこの言葉は、本人が実際に話した言葉だけにした
  • 取材した本人に記事を見てもらい、了解をもらった
  • 会社の方針とずれる言葉がないか、上司に見てもらった
  • 社内の情報をAIに入力してよいか、会社のルールを確認した

まなぶは今、取材のときは本人の言葉をそのまま書きとめ、AIには「メモの事実だけで記事の形に整えて」と頼んでいます。できあがった記事は、必ず本人に見てもらってから配信しています。AIに任せるのは記事の形、中身は取材で聞いた本当の話。しばらくして、あの先輩から「次はうちのチームの若手を取材してあげてよ」と声をかけてもらえました。

※社内報に載せる社員の名前や写真、取引先の情報などをAIに入力してよいかは、会社のルールによって異なります。使う前に、会社で認められているツールと使い方を確認しましょう。
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AIが書き足した「涙の場面」をそのまま社内報に載せたら、取材した先輩を困らせてしまいました…。
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社内報の記事は、本人も読むものです。AIには事実だけで書いてもらい、配信の前に必ず本人に確かめてもらいましょう。
まなぶまなぶ
AIに任せるのは記事の形で、中身は取材で聞いた本当の話なんですね。

社内報担当のAI活用で失敗しないためには、AIに事実だけで書いてもらい、かぎかっこは本人の言葉だけにし、配信の前に本人と上司に確かめてもらうことが大切です。AIで浮いた時間を取材に使えば、脚色しなくても心に響く記事になります。職種ごとにAIを使うときに失敗しないための考え方は、職種別のAI活用失敗から学ぶでまとめています。

職種別のAI活用については、医療事務のAI活用で後悔する理由や不動産営業のAI活用で後悔する理由もあわせて読んでみてください。

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