結論

医療事務のAI活用で後悔する人の多くは、患者さん向けのお知らせや窓口の案内文をAIに作らせ、受付の時間や持ち物などの大事な情報を、院内の決まりと照らし合わせないまま掲示してしまう人です。AIを使えば、お知らせの文章や問い合わせへの返事の下書きを、忙しい受付の合間にすぐ作れます。けれど、医療機関の案内は、患者さんが体調の悪いときに頼りにする、とても大切な情報です。この記事では、まなぶが聞いたAさんの失敗ストーリーをもとに、医療事務のAI活用で後悔する理由と、窓口でAIを安全に使うための考え方を解説します。

1失敗ストーリー

AIで作ったお知らせで、患者さんが受付時間外に来てしまった

同窓会の二次会のカラオケ店で、高校の同級生のAさんからクリニックのお知らせの失敗の話を聞くまなぶのイラスト

この話は、まなぶの高校時代の同級生、Aさんから聞いたものです。久しぶりに開かれた同窓会の二次会で、カラオケ店の個室の隅に座って近況を話していたとき、まなぶが「最近、仕事でAIを使うことが増えて」と言うと、Aさんは「うちのクリニックでも使い始めたんだけど、ちょっと痛い目にあってね」と、マイクを置いて話してくれました。

Aさんは、町の内科クリニックで医療事務として働いています。受付、会計、電話の対応、院内の掲示物づくりまで、少人数で回している職場です。去年の秋、季節の予防接種の受付が始まる時期に、Aさんは院長に頼まれて、待合室に貼るお知らせと、ホームページに載せる案内文を作ることになりました。忙しかったAさんは、去年のお知らせの内容をAIに渡して、「今年用に、分かりやすく書き直して」と頼みました。

AIが作った案内は、去年よりずっと読みやすく、きれいに整っていました。Aさんは院長に「できました」と見せ、院長も忙しい中でざっと目を通して、そのまま掲示されました。ところが、掲示を始めて1週間ほどたったころ、受付時間を過ぎた夕方に、何人もの患者さんが予防接種を受けに来てしまいました。今年は受付の時間帯を変えていたのに、AIは去年の時間をそのまま、読みやすい文章に書き直していたのです。持ち物の欄にも、今年から必要になった書類が抜けていました。

来てしまった患者さんには、事情を説明して、別の日に来てもらうしかありませんでした。中には、仕事を早めに切り上げて来た人や、小さな子どもを連れて来た人もいました。Aさんは、一人ひとりに頭を下げながら、申し訳なさで胸がいっぱいになったそうです。「読みやすくなったことに満足して、中身が今年のものか確かめていなかった」と、Aさんは振り返っていました。ホームページの案内も同じ内容だったため、その日のうちに両方を直し、受付で一人ずつ口頭でも案内するようにしたそうです。

さらに、その後の院内の話し合いで、問い合わせへの返事をAIで下書きするとき、患者さんの名前や受診の内容を入力しかけていたスタッフがいたことも分かりました。院長とAさんたちは、AIを使ってよい作業と、使ってはいけない情報を、あらためて紙に書いて決め直しました。話を聞いたまなぶは、人の体や安心にかかわる仕事ほど、AIに任せる範囲を慎重に決める必要があるのだと感じていました。

2原因分析

医療事務のAI活用で後悔する理由

1

去年の情報を、そのまま書き直させてしまう

AIに古い文章を渡して「書き直して」と頼むと、AIは中身を変えずに、言い回しだけを整えます。受付時間、休みの日、持ち物、費用など、毎年変わる情報は、AIに渡す前に今年の決まりに直しておくことが欠かせません。院内で決まった最新の内容を一覧にして、それをもとにAIに文章を作ってもらいましょう。去年の文章を渡す場合は、「この中で毎年変わりそうな情報を挙げて」と先にAIに聞き、一つずつ今年の内容に直しておくと安心です。

2

読みやすさに安心して、中身を確かめていない

AIの文章は、整っていて読みやすいため、内容まで正しいと思い込みやすくなります。きれいな文章ほど、間違いに気づきにくいことを知っておきましょう。掲示する前に、日付・時間・持ち物・費用などの大事な情報だけを抜き出して、院内の決まりと一つずつ照らし合わせることが大切です。ホームページと待合室の掲示で、同じ内容になっているかも確かめましょう。

3

患者さんの情報を、AIに入力してしまう

患者さんの名前や受診の内容、保険の情報などは、とくに大切に扱うべき個人情報です。AIで問い合わせの返事を下書きするときも、患者さんが誰か分かる情報は入力しないと決めておきましょう。どのツールを使ってよいか、どんな作業に使ってよいかは、必ず院長や管理者に確かめてから使い始めることが大切です。

4

確認する人が、忙しくて読み流している

少人数の職場では、作る人も確かめる人も忙しく、確認がつい形だけになりがちです。「誰かが見たから大丈夫」は、誰も中身を確かめていないのと同じになってしまいます。確認するときは、全文を読むのではなく、「日付」「時間」「持ち物」など、確かめる項目を決めておくと、短い時間でも見落としを防げます。作った人とは別の人が、声に出して読み上げるのも効果的です。

5

患者さんの立場で、読み返していない

案内文は、体調がすぐれない人や、医療機関に慣れていない人も読みます。「この案内を見て、患者さんは迷わず来られるか」という目で読み返すことが大切です。AIに「初めて来る人が迷いそうなところはどこか」と聞いてみるのも、読み返しの手がかりになります。最後は、窓口で患者さんと話している自分たちの感覚で確かめましょう。電話でよく聞かれる質問の答えが案内に書かれているかも、見直しのよい目安になります。

3図解

医療事務でAI活用に後悔する人と、安全に使える人の違い

⚠ 医療事務のAI活用で後悔する人のパターン
去年のお知らせを、そのままAIに書き直させる
↓
読みやすさに安心して、時間や持ち物を確かめない
↓
確認する人も忙しく、読み流したまま掲示する
↓
患者さんが迷い、無駄足を踏ませてしまう
◎ 医療事務でAIを安全に使える人のパターン
今年の決まりを一覧にしてから、AIに文章を頼む
↓
日付・時間・持ち物を、院内の決まりと一つずつ照らし合わせる
↓
患者さんの立場で読み返し、個人情報は入力しない
↓
忙しい中でも、患者さんが安心できる案内を出せる
4解決策

院内でAIを使う前のチェックリスト

AIは、忙しい受付の仕事を手伝ってくれる心強い道具です。院内で使う前に、次の項目を確かめてみてください。

  • AIを使ってよい作業と、使ってよいツールを院長や管理者に確かめた
  • 患者さんが誰か分かる情報を入力していない
  • 今年の決まり(時間・休み・持ち物・費用)を一覧にしてから頼んだ
  • 掲示する前に、大事な情報を一つずつ照らし合わせた
  • 確認する人に、確かめる項目を伝えた
  • 患者さんの立場で、迷わず来られるか読み返した

Aさんのクリニックでは今、お知らせを作るときは、まずスタッフ全員で「今年の決まり」を一覧にしてから、AIに文章を整えてもらっています。掲示する前には、Aさんともう一人のスタッフが、日付と時間と持ち物だけを読み上げて確かめているそうです。「AIに任せるのは読みやすさ。正しさは、私たちが守る」。カラオケの音が響く中で、Aさんははっきりとそう話していました。

※医療機関で扱う患者さんの情報は、とくに慎重な取り扱いが求められます。AIを使う前に、勤務先の決まりや管理者の判断を必ず確認しましょう。
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まなぶまなぶ
Aさんのクリニックでは、AIで書き直したお知らせが去年の受付時間のままで、患者さんに無駄足を踏ませてしまったそうです…。
みらいみらい
AIは、渡された中身を変えずに読みやすく整えます。今年の決まりを先にまとめて、時間や持ち物は一つずつ照らし合わせましょう。
まなぶまなぶ
AIに任せるのは読みやすさで、正しさは自分たちで守るんですね。

医療事務のAI活用で後悔する原因は、去年の情報をそのまま書き直させ、読みやすさに安心して中身を確かめず、患者さんの立場で読み返さないことです。今年の決まりを一覧にしてからAIに頼み、大事な情報は一つずつ照らし合わせ、個人情報は入力しない。それだけで、AIは忙しい窓口の頼れる手伝いになります。職種ごとにAIを使うときに失敗しないための考え方は、職種別のAI活用失敗から学ぶでまとめています。

職種別のAI活用については、営業企画職のAI活用で失敗する人の特徴5選や社内報担当のAI活用で失敗しない方法もあわせて読んでみてください。

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