結論

資格の選び方で失敗する人の多くは、「どうせ取るなら、いちばん価値のある難しい資格を」と考えて、合格までにかかる時間や、今の自分の生活でその時間をつくれるか、取ったあとすぐに使えるかを比べないまま、いきなり大きな目標に挑んでしまう人です。難しい資格への挑戦そのものは、悪いことではありません。けれども、道のりを見積もらずに始めると、途中で力尽き、何も残らないまま終わってしまうことがあります。資格の選び方の基本は「目的・必要とされる場面・合格までの道のり・取ったあとの使い道」の4つを比べることです。この記事では、まなぶが聞いたAさんの失敗ストーリーをもとに、資格の選び方で失敗しない方法を解説します。

1失敗ストーリー

3年かけた難関資格より、職場が必要としていた資格があったAさんの話

夜のゴルフの打ちっぱなしのベンチで、総務のAさんから資格の選び方の失敗談を聞くまなぶのイラスト

まなぶは、ときどき会社帰りに、駅の近くのゴルフの打ちっぱなしに寄ります。ある晩、休憩用のベンチで隣に座ったのが、いつも同じ時間帯に練習しているAさん(40代男性)でした。Aさんは、中堅の食品メーカーの総務部で、社員の手続きや職場の環境づくりを担当しています。缶のお茶を飲みながら、資格の話になると、Aさんは「3年かけて、結局取れなかった資格があってね」と話し始めました。(登場する人物は、よくある失敗をもとに編集部が再現したものです)

総務の仕事を10年以上続けてきたAさんは、40歳を前に、「専門家として認められる資格がほしい」と考えました。選んだのは、労働や社会保険の手続きの専門家である社会保険労務士です。試験は年に1回で、合格するには長い勉強の時間が必要だといわれる、難しい国家資格でした。Aさんは、「総務の仕事に関係があるし、取れば一生使える」と考え、仕事のあと毎晩2時間、勉強を続けることにしました。

けれども、1年目の試験は不合格。2年目も、あと少しのところで届きませんでした。3年目に入ると、子どもの受験や親の通院の付き添いが重なり、勉強の時間はほとんどとれなくなりました。そんなとき、上司からこう言われたのです。「うちの工場は人数が多いから、職場の安全や健康の管理をする衛生管理者が、もう一人必要なんだ。Aさん、取ってもらえないかな」。職場がすぐに必要としていた資格を、Aさんは選択肢にさえ入れていなかったのです。

Aさんは、衛生管理者の試験の勉強を始め、数か月で合格しました。今では、工場の職場の見回りや、健康診断の段取りを任され、仕事の幅が大きく広がったそうです。「難しい資格に挑戦したことは、後悔していない。でも、最初に職場で何が必要とされているかを確かめて、取れる資格から順番に積み上げていれば、もっと早く役に立てたと思う」。Aさんは、打ちっぱなしの明かりの中で、そう話してくれました。

2原因分析

資格の選び方で失敗する5つの原因

1

「価値が高い資格」を、自分の目的より先に考えていた

難しい資格ほど価値が高い、と考えるのは自然なことです。けれども、資格の価値は、自分の目的にどれだけ近づけるかで決まります。資格を比べるときは、まず「この資格で、何ができるようになりたいか」を書き出し、その目的にいちばん近い資格を選ぶことが大切です。Aさんの目的が「総務の専門性を高めて、職場の役に立つこと」なら、すぐに役立つ資格から始める道もありました。目的から考えれば、難しさだけにとらわれずに、資格を選べるようになります。

2

職場で必要とされている資格を、確かめていなかった

職場によっては、法律で決められた資格を持つ人を置く必要があったり、業務を進めるうえで特定の資格が求められていたりします。資格を選ぶ前に、上司や人事担当に「今の職場や仕事で、必要とされている資格はありますか」と聞いてみると、すぐに使える資格が見つかることがあります。職場が必要としている資格なら、受験の費用を会社が負担してくれる場合もあります。まずは身近なところに、資格を生かせる場面がないかを探してみましょう。

3

合格までの道のりを、見積もっていなかった

難しい資格は、合格までに何年もかかることがあります。試験の回数が年に1回だと、一度つまずけば、次の機会まで1年待つことになります。選ぶ段階で、試験の回数と日程、合格までに必要といわれる勉強の時間の目安を調べ、自分の毎日の中でその時間をつくれるかを計算するようにしましょう。家族の予定や仕事の忙しさも、何年か先まで見通しておくことが大切です。道のりの長さを知ったうえで挑むのと、知らずに挑むのとでは、続け方がまったく違ってきます。

4

小さな資格から積み上げる道を、考えていなかった

大きな目標の資格に、いきなり挑むだけが道ではありません。目的に近い分野の、取りやすい資格から始めて、段階的に積み上げていくと、途中でも学んだことを仕事に生かせます。小さな合格を重ねることで、勉強の習慣も身につき、大きな資格に挑むときの土台にもなります。Aさんのように、職場で必要な資格を先に取っておけば、その経験が難しい資格の勉強にもつながっていきます。

5

取ったあとの使い道を、具体的に描いていなかった

「取れば一生使える」という言葉には、説得力があります。けれども、取ったあとに、どの仕事で、どのように使うのかが具体的でないと、合格しても仕事が変わらないこともあります。資格を選ぶときは、取ったあとの1年で、どんな仕事を任されたいか、誰に伝えるかを書き出してみましょう。使い道がはっきりしている資格ほど、勉強の意味も感じやすく、最後まで続けやすくなります。使い道を上司と共有しておけば、合格したあとに仕事を任されるきっかけにもなります。

3図解

難しさで選ぶ人と、4つを比べて選ぶ人の違い

⚠ 資格の選び方で失敗する人のパターン
「いちばん価値のある資格」を、難しさで選ぶ
↓
合格までの道のりも、職場で必要な資格も確かめない
↓
家族や仕事の事情が変わり、勉強が続かなくなる
↓
何年かけても資格が取れず、仕事にも生かされない
◎ 資格を上手に選べる人のパターン
目的を書き出し、職場で必要とされている資格を確かめる
↓
試験の日程と勉強の時間から、道のりを見積もる
↓
取りやすい資格から積み上げ、使い道も具体的に描く
↓
途中でも学びが仕事に生き、次の目標にも進みやすくなる
4解決策

資格の選び方で失敗しないためのチェックリスト

資格を選ぶときは、申し込む前に、次の項目を確かめてみてください。4つの視点で比べるだけで、自分に合う資格が見えてきます。

  • この資格で、何ができるようになりたいかを書き出した
  • 上司や人事担当に、職場で必要とされている資格を聞いた
  • 試験の回数・日程と、勉強の時間の目安を調べた
  • 自分の毎日の中で、その時間をつくれるかを計算した
  • 家族の予定や仕事の忙しさを、何年か先まで見通した
  • 取りやすい資格から積み上げる道も考えた
  • 取ったあとの1年で、どんな仕事を任されたいかを描いた

Aさんは今、衛生管理者として職場の安全と健康の仕事を任されながら、社会保険労務士の勉強を、無理のない形で続けているそうです。家族の予定を見ながら、「平日は朝の1時間、週末は土曜の午前だけ」と決め、試験の日から逆に数えて計画を立てました。職場で実際に扱う手続きと、試験の勉強の内容を結びつけて覚えるようにしたことで、前よりも頭に入りやすくなったといいます。「資格は、山の頂上だけを見ていても登れない。足元の一歩から選べばよかったんだよね」。Aさんは、そう言って、もう一度打席に向かっていきました。

※資格の試験の日程・受験の条件・必要とされる場面は、資格ごとに、法律や試験を行う団体の決まりによって定められています。受験を考えるときは、必ず最新の公式の案内で確認してください。
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資格と学び直しで後悔しないために

資格を上手に選ぶには、自分が仕事に何を求めているかを知ることと、難しい資格なら合格までの道のりを専門のスクールに確かめておくことが役立ちます。

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まなぶまなぶ
3年かけた難しい資格よりも、職場がすぐに必要としていた資格があったなんて…。
みらいみらい
資格の選び方の基本は、目的・必要とされる場面・合格までの道のり・取ったあとの使い道の4つを比べることです。まずは職場で必要とされている資格を確かめて、取りやすい資格から積み上げる道も考えてみましょう。
まなぶまなぶ
頂上だけじゃなく、足元の一歩から選べばいいんですね。

資格の選び方で失敗する原因は、いちばん価値のある資格をと考えて、合格までの道のりや職場で必要な資格、取ったあとの使い道を比べないまま、大きな目標に挑んでしまうことです。目的を書き出し、職場の必要を確かめ、道のりを見積もり、取りやすい資格から積み上げる。それだけで、学びを途中からでも仕事に生かせるようになります。資格選びで失敗しないための考え方は、資格選びの失敗から学ぶでまとめています。

資格選びについては、役に立たない資格を取って後悔する理由や人気ランキングで資格を選んで失敗した話もあわせて読んでみてください。

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