仕事の頼み方で失敗しない方法
仕事の頼み方で失敗する人の多くは、「言わなくても分かるだろう」「細かく言うのは相手に失礼だ」と考えて、何のための仕事か、いつまでに、どこまでやってほしいのかを伝えないまま、「これ、お願いね」と仕事を任せてしまう人です。頼まれた側は、足りない部分を自分なりに想像して進めるしかありません。その結果、できあがったものが思っていたものと違い、やり直しや行き違いが生まれます。仕事の頼み方の基本は「目的・期限・完成の形・困ったときの相談先」の4つを伝えることです。この記事では、まなぶが聞いたAさんの失敗ストーリーをもとに、仕事の頼み方で失敗しない方法を解説します。
「いい感じに、お願い」で、準備がすれ違ったAさんの話
今年のお盆、まなぶは親戚の集まりで実家に帰っていました。縁側で冷たい麦茶を飲んでいると、隣に座ったのが、母の弟にあたる、おじのAさん(40代男性)でした。Aさんは、ホテルの宴会の部門で、結婚式や会社のパーティーの準備をまとめるマネージャーをしています。庭で遊ぶ子どもたちを眺めながら、Aさんは「部下への頼み方で、大きな行き違いを起こしたことがあってね」と話し始めました。(登場する人物は、よくある失敗をもとに編集部が再現したものです)
数年前の秋、Aさんのホテルでは、ある会社の創立記念のパーティーを任されていました。会場の飾りつけや、受付の準備は、入って2年目の部下にお願いすることにしました。Aさんは忙しさもあって、廊下ですれちがいざまに「来週のパーティーの会場の準備、いい感じにお願いね」とだけ伝えました。部下は「分かりました」と答え、Aさんも安心して、ほかの仕事に戻りました。
ところが、パーティーの前日、会場を見に行ったAさんは、言葉を失いました。会場は、結婚式のような華やかな花と、明るい色の飾りでいっぱいになっていたのです。けれども、お客様の会社が望んでいたのは、取引先の社長たちを招く、落ち着いた雰囲気の式典でした。受付の机も、名札を並べる準備がされておらず、来る人の数も前の打ち合わせより少ない数で用意されていました。部下は、「いい感じ」を、自分なりに想像して、一生懸命に準備していたのです。
その夜、Aさんと部下は、ほかのスタッフにも手伝ってもらい、夜遅くまでかけて飾りつけをやり直しました。部下は、「もっと聞いておけばよかったです」と小さな声で謝りました。けれども、Aさんは、謝るべきなのは自分のほうだと感じていました。「お客様の希望も、人数も、ぼくの頭の中にしかなかった。それを伝えずに『いい感じに』と言ったのは、頼んだことにはなっていなかったんだよね」。Aさんは、麦茶のグラスを手に持ちながら、そう話してくれました。
仕事の頼み方で失敗する5つの原因
何のための仕事かを、伝えていなかった
頼まれた人は、その仕事が何のためにあるのかが分からないと、どこに力を入れればよいかを判断できません。Aさんの部下も、式典の目的を知らなかったため、華やかなパーティーだと思いこんで準備を進めました。頼むときは、まず「何のための仕事か」「誰のための仕事か」を一言で伝えることが大切です。「取引先の社長たちを招く、落ち着いた式典の準備をお願いしたい」と伝えるだけで、相手の考え方はぐっと正しい方向に近づきます。
期限と、途中で見せてほしい時を決めていなかった
「来週のパーティー」とだけ伝えると、いつまでに準備を終えればよいのか、相手には分かりません。最後の期限だけでなく、「明後日の夕方に、飾りつけの案を一度見せてほしい」のように、途中で確かめる時を決めておくと、行き違いに早く気づけます。途中で見せてもらえれば、方向がずれていても、小さな直しですみます。頼む側にとっても、安心して任せられる仕組みになります。
完成の形を、具体的に伝えていなかった
「いい感じに」「きれいに」「ざっと」といった言葉は、人によって思い浮かべるものがまったく違います。できあがったときの形を、人数、色、量、見本など、具体的なもので伝えるようにしましょう。前の似た仕事の写真や資料があれば、それを見せるのも効果的です。「去年のこの式典くらいの落ち着いた雰囲気で、受付には名札を120人分並べる」と伝えれば、相手が迷うところはずっと少なくなります。
困ったときに、誰に聞けばよいかを伝えていなかった
仕事を進める中で、分からないことが出てくるのは自然なことです。けれども、頼んだ人が忙しそうにしていると、頼まれた側は聞きにくくなり、自分で想像して進めてしまいます。「迷ったら、いつでも聞いてほしい。私がいないときは、○○さんに聞いて」と、相談先をはっきり伝えることが大切です。相談しやすい空気をつくることも、頼む側の大事な役目です。部下の相談しやすさについては、仕事の相談をためらって後悔する理由でも紹介しています。
すれちがいざまに、口だけで頼んでいた
廊下での立ち話や、忙しいときの一言で頼むと、伝えるべきことが抜けやすく、相手も聞き返す余裕がありません。大事な仕事を頼むときは、5分でもよいので、座って話す時間をとりましょう。話したあとには、目的・期限・完成の形・相談先を短くまとめて、チャットやメモで渡しておくと、あとから見返せます。相手にも、聞いた内容を自分の言葉でくり返してもらうと、受け取り方のずれにその場で気づけます。頼む時間を惜しむと、あとでもっと大きな時間を失うことになります。
「お願いね」で任せる人と、4つを伝えて頼む人の違い
仕事の頼み方で失敗しないためのチェックリスト
仕事を誰かに頼むときは、話し始める前に、次の項目を確かめてみてください。後輩や部下だけでなく、同僚やほかの部署の人に頼むときにも使えます。
- 何のための仕事か、誰のための仕事かを一言で伝えた
- 最後の期限と、途中で見せてほしい時を決めて伝えた
- 完成の形を、人数や量、見本など具体的なもので伝えた
- 迷ったときの相談先を、はっきり伝えた
- すれちがいざまではなく、座って話す時間をとった
- 話した内容を、短くまとめてメモやチャットで渡した
- 相手に、聞いた内容を自分の言葉でくり返してもらった
Aさんは今、部下に仕事を頼むときは、小さな打ち合わせの机に座って、10分ほど話すようにしています。最初に「この仕事は、誰の、何のためのものか」を伝え、前の似たパーティーの写真を見せながら、完成の形を一緒に確かめます。途中で見せてほしい日を決め、話した内容はその日のうちにチャットで送ります。あの部下は今、新しく入ったスタッフに仕事を頼むとき、同じやり方を使っているそうです。「頼み方を変えたら、部下からの質問が増えたんだ。でも、それでやり直しはほとんどなくなった」。Aさんは、子どもたちに呼ばれて庭へ下りながら、そう言って笑っていました。
仕事の失敗を減らすために
行き違いのない頼み方をするには、頼んだ仕事の期限と途中の確認を見える化することと、チームで仕事の頼み方や共有のしかたを整えることが役立ちます。
タイムマネジメント・スケジュール管理ツール【todoist】
頼んだ仕事と、その期限、途中で確かめる日を、一覧にできるタイプです。誰に何を頼んだかを書いておけば、確かめる日を忘れずにすみ、行き違いに早く気づけます。
業務プロセス整理・DX相談サービス【Chatwork DX相談窓口】
チームの仕事の流れや、仕事の頼み方・共有のしかたを整理することから支援してくれるタイプです。頼むときに伝える項目をチームで決めておけば、人によって頼み方がばらばらになることを防げます。
まなぶ
みらい
まなぶ仕事の頼み方で失敗する原因は、言わなくても分かるだろうと考えて、目的や期限、完成の形を伝えないまま、口だけで任せてしまうことです。目的を伝え、期限と途中の確認を決め、完成の形を具体的に示し、相談先を伝え、メモで渡す。それだけで、行き違いはぐっと減り、相手も安心して仕事を進められます。報連相とコミュニケーションで失敗しないための考え方は、報連相とコミュニケーションの失敗から学ぶでまとめています。
報連相・コミュニケーションについては、他部署との調整で後悔する理由や上司への反論で後悔する理由もあわせて読んでみてください。

