結論

教員から民間企業への転職で失敗する人の多くは、「教育に関わる会社なら、先生の経験がそのまま生かせる」と考え、仕事の中身や評価のされ方の違いを確かめないまま転職してしまう人です。教員の経験には、人前で話す力、計画を立てて進める力、多くの人と調整する力など、民間でも通用する強みがたくさんあります。けれど、その強みを民間の言葉に置き換え、合う仕事を選ばなければ、「こんなはずじゃなかった」と感じることになります。この記事では、まなぶが聞いたAさんの失敗ストーリーをもとに、教員から民間企業へ転職して失敗した原因と、転職の前に準備したいことを解説します。

1失敗ストーリー

「教育の会社なら大丈夫」と思っていた

お盆休みの夕暮れ、地元の神社の境内のベンチで、教員から民間企業へ転職した幼なじみのAさんの話を聞くまなぶのイラスト

夏のお盆休み、地方の実家に帰省したまなぶは、地元の幼なじみのAさん(30代女性)と、近くの神社の境内のベンチで久しぶりに話しました。Aさんは、地元の公立中学校で8年間、国語の教員をしていましたが、去年の春に退職し、教育サービスの会社に転職していました。「先生を辞めたこと自体は後悔してないんだけど、転職の仕方は失敗だったなって思う」。Aさんは、夜店の明かりを眺めながら話し始めました。

毎晩遅くまでの残業と休日の部活動に疲れ、Aさんが転職を考え始めたのは秋のことでした。教員は年度の途中で辞めにくいため、3月末の退職に合わせて、冬休みの短い期間で転職活動をしました。選んだのは、学校向けの学習教材を扱う会社の営業職です。「教育に関わる仕事なら、先生の経験がきっと生かせる」。そう考えて、仕事の中身をくわしく確かめないまま、最初に内定が出たその会社に決めました。ほかの職種と比べることも、会社で働く人に話を聞くことも、していなかったそうです。

ところが、入社してみると、毎月の売上の目標があり、数字で評価される日々が始まりました。学校を回って教材を提案する仕事は、生徒に教えることとはまったく違います。会議ではチャットのツールや表計算ソフトを当たり前に使いこなすことが求められ、8年間の教員の経験が、ここではほとんど評価の対象にならないように感じたそうです。面接でも、教員時代の経験を「生徒に寄り添ってきました」としか伝えられず、どんな力が生かせるのかを、自分でも説明できていなかったのです。周りの同僚が当たり前にこなす仕事に毎日ついていくのが精いっぱいで、休日も気が休まらない日が続きました。

入社して10か月ほどたったころ、Aさんは上司に相談し、教員向けの研修を企画する部署への異動を願い出ました。今はそこで、授業づくりの経験を生かしながら働いているそうです。「最初から、自分の経験が生きる仕事を選べていれば、遠回りしなくて済んだのにね」。教育の会社を選んだことではなく、経験と仕事の中身を結びつけないまま選んだことが失敗だった。まなぶは、境内のベンチで、Aさんの話にじっと耳を傾けていました。

2原因分析

教員から民間企業へ転職して失敗した5つの原因

1

教員の経験を民間の言葉に置き換えなかった

教員の仕事には、民間でも求められる力がたくさん含まれています。40人の前で分かりやすく話す力、1年間の授業を計画して進める力、保護者や同僚と調整する力、行事を運営する力。こうした経験を「授業」「担任」「部活動」といった学校の言葉のままで伝えると、民間の採用担当者には価値が伝わりにくいのです。「どんな場面で、何を工夫し、どんな結果につながったか」を、仕事の言葉に置き換えて書き出してみましょう。たとえば「学年の行事を企画し、120人の生徒と10人の先生をまとめて運営した」と書けば、企画力や調整力として伝わります。

2

業界の名前だけで仕事を選んだ

「教育」と名のつく会社にも、営業、商品開発、研修の企画、カスタマーサポートなど、さまざまな仕事があります。業界が近くても、職種が違えば、求められる力も毎日の仕事もまったく変わります。教員の経験がどの職種で生きるのかを考え、業界の名前ではなく、職種の中身で選ぶことが大切です。教育業界にこだわらず、研修や人材育成、広報など、経験が生きる職種を広く探してみるのもおすすめです。

3

数字で評価される働き方を想定していなかった

学校では、成果が数字だけで評価されることは多くありません。一方、民間企業では、売上や件数など、数字で評価される仕事が少なくありません。評価の基準が変わることを知らないまま入社すると、自分の頑張りが認められていないと感じやすくなります。選考の段階で、どんな基準で評価されるのか、目標はどう決まるのかを確かめておきましょう。面接で聞きにくい場合は、転職エージェントを通して確認してもらう方法もあります。

4

仕事の道具や進め方の違いに備えていなかった

民間企業では、チャットのツールや表計算ソフト、オンライン会議など、学校とは違う道具を日常的に使います。会議の進め方や、メールの書き方も、学校の文化とは違うことがあります。こうした基本の部分でつまずくと、自信をなくしてしまいがちです。在職中から、表計算ソフトの基本や、ビジネスメールの書き方などを少しずつ学んでおくと、入社後の負担を減らせます。最初の数か月を乗り切れるかどうかで、新しい職場への自信は大きく変わります。

5

辞める時期に合わせて、活動を急いだ

教員は、年度の途中で辞めにくいため、3月末の退職に合わせて短い期間で転職先を決めようとしがちです。期限に追われると、仕事の中身を比べる時間がなくなり、最初の内定に飛びつくことになります。転職を考え始めたら、1年ほど前から情報を集め、自分の経験が生きる仕事を探し始めることが大切です。辞める時期は決まっていても、準備は早く始められます。

3図解

教員からの転職で失敗する人と、経験を生かせる人の違い

⚠ 教員から民間企業への転職で失敗する人のパターン
3月末の退職に合わせて、冬休みの短い期間で活動する
↓
「教育の会社なら大丈夫」と、職種の中身を確かめずに決める
↓
経験を学校の言葉のままでしか伝えられない
↓
評価のされ方も仕事の進め方も合わず、遠回りをする
◎ 教員の経験を民間で生かせる人のパターン
1年ほど前から、経験が生きる職種を広く調べる
↓
教員の経験を、仕事の言葉に置き換えて書き出す
↓
評価の基準と仕事の道具を確かめ、在職中から準備する
↓
自分の強みが生きる仕事を選び、落ち着いて新しい環境になじめる
4解決策

教員から民間企業への転職を考えたときのチェックリスト

教員の経験は、民間でも十分に生かせる力です。転職を考え始めたら、次の項目を確かめてみてください。

  • 教員の経験を、「何を工夫し、どんな結果につながったか」の形で書き出した
  • 学校の言葉を、民間の仕事の言葉に置き換えてみた
  • 業界の名前ではなく、職種の中身で応募先を選んだ
  • 選考で、評価の基準と目標の決まり方を確かめた
  • 表計算ソフトやビジネスメールなど、基本の道具を学び始めた
  • 退職の1年ほど前から、情報集めと準備を始めた

話の最後に、Aさんは「今の仕事は、先生だったからこそできる仕事だと思う」と笑いました。まなぶは、職種を変える転職で大切なのは、今までの経験を捨てることではなく、新しい言葉で言い直すことなのだと感じました。

※教員の退職の時期や手続き、退職金の扱いなどは、勤めている学校や自治体の規則によって異なります。転職を考え始めたら、早めに規則を確認しておきましょう。
5おすすめサービス

教員の経験を生かす転職を考えるなら

教員からの転職では、自分の経験を民間の言葉に置き換える作業と、経験が生きる仕事の探し方の両方を、第三者と一緒に進めるのがおすすめです。

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求人数が多く、業界を横断して幅広い選択肢を比較できるタイプ。教育業界に限らず、研修や人材育成など、教員の経験が生きる職種を広く探せます。まず全体像を把握したい人に向いています。

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これまでの経験や実績を、第三者と一緒に言語化していけるタイプです。学校の言葉で語っていた経験を、民間で伝わる言葉に置き換える手助けになります。転職を考え始める前の段階から利用できるサービスもあります。

相談してみる

まなぶまなぶ
幼なじみのAさん、教育の会社なら大丈夫だと思って営業職に入ったら、数字の評価に苦しんだそうです…。
みらいみらい
教員の経験には、民間で生きる力がたくさんあります。業界の名前ではなく職種の中身で選び、経験を仕事の言葉に置き換えて伝えましょう。
まなぶまなぶ
経験を捨てるんじゃなく、新しい言葉で言い直すんですね。

教員から民間企業への転職で失敗する原因は、業界の名前だけで仕事を選び、経験と仕事の中身を結びつけないまま、期限に追われて決めてしまうことです。経験を仕事の言葉に置き換え、職種の中身で選び、評価の基準と道具を確かめ、早めに準備を始める。それだけで、教員の経験は民間でも頼れる強みになります。業界や職種を変える転職で失敗しないための考え方は、公務員から民間転職の失敗から学ぶでまとめています。

業界・職種を変える転職については、コンサル業界への転職で失敗する人の特徴5選や銀行からの転職で後悔する理由もあわせて読んでみてください。

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