結論

親の介護を理由に転職を急いで後悔する人の多くは、介護がどのくらいの期間、どの程度必要になるのかが分からないうちに、「仕事を辞めて親のそばにいるしかない」と思い込んで動いてしまう人です。介護は、家族だけで抱えるものではなく、介護保険のサービスや、仕事と両立するための制度を組み合わせて支えていくものです。辞める・転職するという決断は、使える制度と家族の役割分担を確かめてからでも遅くありません。この記事では、まなぶの失敗ストーリーをもとに、親の介護を理由に転職を急いで後悔する理由と、決める前に確かめたいことを解説します。

1失敗ストーリー

「地元に戻ります」と、上司に言ってしまった

地方の町の相談窓口で、妹と一緒に介護保険のサービスの説明を聞き、仕事を辞めなくても父を支えられると知って驚くまなぶのイラスト

今年の春、地方の実家に住む父が、庭で転んで足の骨を折りました。妹からの電話を受け、その夜の新幹線で実家に向かったまなぶは、病院で「退院後は、しばらく介助が必要です」と聞かされました。母はもう若くありません。近くに住む妹にも、仕事と子育てがあります。「長男の自分が、そばにいなきゃいけない」。まなぶの頭の中は、その考えでいっぱいになりました。

東京に戻った翌日、まなぶは上司に時間をもらい、こう切り出しました。「父の介護が必要になりそうで、地元に戻ることになるかもしれません。辞めることも考えています」。その夜から、地元の求人を探し始め、2週間で3社に応募しました。どの求人も、今の年収より2割以上低いものでしたが、「仕方ない」と思っていました。

ところが、妹と一緒に実家の地域の相談窓口に行ってみると、話は大きく変わりました。介護保険の申請をして、手すりの設置や通いのサービスを使えば、母と妹の手を借りながら、父の生活は十分に回せると分かったのです。会社にも、介護のために休める制度や、時間単位で取れる休暇がありました。まなぶがすぐに仕事を辞める必要は、どこにもありませんでした。

翌週、まなぶは上司のもとへ行き、頭を下げて「辞めるという話は、なかったことにさせてください」と伝えました。上司は「お父さんが大丈夫ならよかった」と言ってくれましたが、まなぶが担当するはずだった新しいプロジェクトは、すでに別の人に引き継ぐ準備が進んでいました。何も確かめないまま口にした「辞めます」の一言が、取り戻せない機会を一つ失わせていた。まなぶは、気まずさとともに、自分の判断の早さを悔やみました。

2原因分析

親の介護を理由に転職を急いで後悔する5つの理由

1

介護の全体像が分からないうちに決めた

親が倒れた直後は、どのくらいの介護が、どのくらいの期間必要になるのか、誰にも分かりません。リハビリで回復することもあれば、長く支えが必要になることもあります。全体像が見えないうちに、仕事という生活の土台を手放す決断をしてしまうと、あとで「辞めなくてもよかった」と気づいたときに取り戻せません。まずは、主治医や病院の相談室、地域の相談窓口で、今後の見通しを聞くことから始めましょう。数週間たつと、回復の様子や必要な手助けの範囲が見えてくることも少なくありません。

2

仕事と両立するための制度を調べなかった

会社員には、家族の介護のためにまとまった期間休める「介護休業」や、通院の付き添いなどのために取れる「介護休暇」があります。会社によっては、短時間勤務やテレワークなど、働き方を調整できる制度もあります。こうした制度を知らないまま「辞めるしかない」と考えてしまうのは、とてももったいないことです。上司に話す前に、まず就業規則を読み、人事や総務に、使える制度を確かめておきましょう。

3

一人で背負おうとした

「長男だから」「自分がやらなきゃ」と、一人ですべてを抱えようとすると、決断も極端になりがちです。介護は、きょうだいや親戚、地域のサービス、介護の専門職など、たくさんの手を借りて続けていくものです。家族で役割を分け、プロの力を借りる前提で考えると、仕事を辞めずに済む道が見えてきます。離れて暮らしていても、お金の管理や手続き、定期的な連絡など、担える役割はたくさんあります。一人で決めず、まず家族で話し合う場を持ちましょう。

4

地元の転職先の条件を十分に確かめなかった

介護のために地元へ戻る転職では、求人の数や年収が、今の職場より大きく下がることも珍しくありません。焦って決めると、収入が減ったうえに、仕事の内容も合わず、二重の負担を抱えることになります。介護のお金を支えるのも、自分の収入です。本当に地元へ戻る必要があるとしても、収入と仕事の中身を確かめ、生活が成り立つかを計算してから決めましょう。介護のお金の考え方は、親の介護のお金で失敗しない方法で紹介しています。

5

決める前に「辞めます」と伝えてしまった

上司に相談するのは大切ですが、「辞めることになるかもしれない」と伝えた時点で、会社は引き継ぎや人の配置を考え始めます。あとから撤回しても、任されるはずだった仕事が戻ってこないこともあります。上司には「家族の介護が始まり、制度を使いながら様子を見たい」と、状況と相談を伝えるのが基本です。退職の意思は、制度と家族の体制を確かめ、自分の中で決めてから伝えましょう。早めに状況を共有しておくことで、休みの調整などに協力してもらいやすくなります。

3図解

介護を理由に転職を急いで後悔する人と、落ち着いて判断できる人の違い

⚠ 介護を理由に転職を急いで後悔する人のパターン
親が倒れた直後に、「自分がそばにいるしかない」と思い込む
↓
制度も家族の役割分担も確かめず、上司に「辞めるかも」と伝える
↓
収入の下がる地元の求人に、焦って応募を始める
↓
辞める必要がなかったと分かったときには、機会と信頼を失っている
◎ 介護と仕事を落ち着いて考えられる人のパターン
相談窓口や病院で、介護の見通しを聞く
↓
介護保険のサービスと、会社の両立の制度を確かめる
↓
家族で役割を分け、そのうえで働き方を決める
↓
仕事を続けながら、無理のない形で親を支えられる
4解決策

介護を理由に転職を考えたときのチェックリスト

親の介護が始まると、気持ちが焦るのは当然のことです。だからこそ、決断の前に、次の項目を一つずつ確かめてみてください。

  • 主治医や相談窓口で、介護がどのくらい必要になりそうか聞いた
  • 親の住む地域の相談窓口(地域包括支援センター)に連絡した
  • 介護保険の申請と、使えるサービスを確かめた
  • 会社の介護休業・介護休暇・短時間勤務などの制度を確かめた
  • きょうだいや家族で、役割とお金の分担を話し合った
  • 上司には、決める前は「状況の共有と相談」として伝えた
  • 転職するなら、地元の求人の年収と仕事の中身で生活が成り立つか計算した

まなぶは今、会社の介護休暇を時間単位で使いながら、月に一度は実家に帰って、父のリハビリの様子を見ています。母と妹とは、家族のグループで毎週連絡を取り合い、お金の管理はまなぶ、日々の付き添いは妹と介護サービス、と役割を分けました。

「辞めます」と言ったあの日のことを思い出すと、今でも少し胸が痛みます。けれど、介護は、仕事を手放すことではなく、仕事を続けながら支える形を探すことから始まる。まなぶは、その順番を身をもって学びました。

※介護休業・介護休暇の日数や取り方、介護休業中の給付の条件、介護保険のサービスの内容は、勤め先や加入している保険、自治体によって異なり、見直されることもあります。最新の内容は、勤め先の人事、ハローワーク、市区町村の窓口などで確認してください。
5おすすめサービス

介護と仕事の両立を考えるために

介護をきっかけに働き方を見直すときは、転職先の選択肢と、家計全体の見通しの両方を、落ち着いて確かめることが大切です。

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幅広い業界を見たい人向け

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求人数が多く、業界を横断して幅広い選択肢を比較できるタイプ。地元の求人の数や年収の水準を、焦って応募する前に確かめるのにも役立ちます。まず全体像を把握したい人に向いています。

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ライフプラン全体を相談したい人向け

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将来のライフイベントを踏まえた資金計画を相談できるタイプです。親の介護にかかるお金と、自分の収入や将来の資金のバランスを、第三者の視点で整理できます。転職するかどうかを決める前の判断材料にもなります。

相談してみる

まなぶまなぶ
父が倒れた直後、何も確かめないまま、上司に「辞めるかもしれません」と言ってしまいました…。
みらいみらい
介護は、家族だけで抱えるものではありません。相談窓口と介護保険、会社の両立の制度を確かめてから、働き方を決めましょう。
まなぶまなぶ
辞めるのではなく、続けながら支える形を先に探すんですね。

親の介護を理由に転職を急いで後悔する原因は、介護の見通しや使える制度が分からないうちに、仕事を手放す決断をしてしまうことです。相談窓口で見通しを聞き、介護保険と会社の制度を確かめ、家族で役割を分け、決めてから上司に伝える。それだけで、仕事と介護の両方を守る道が見えてきます。年齢を重ねる中での転職の考え方は、50代シニア転職の失敗から学ぶでまとめています。

家族の事情と転職については、配偶者の転勤に合わせて転職して失敗した話や定年後の再就職で失敗する人の特徴5選もあわせて読んでみてください。

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