結論

取引先とAIの使い方を決めずに失敗する人の多くは、「会社で認められたAIだから大丈夫」と考えて、取引先から預かった資料やデータを、取引先との約束を確かめないままAIに入力してしまう人です。社内のルールでAIの使い方が決まっていても、それで安心とは限りません。取引先から預かった情報は、取引先との契約や約束にしたがって扱う必要があります。この記事では、まなぶの失敗ストーリーをもとに、取引先とAIの使い方を決めずに失敗した理由と、チームで守るべき確認の手順を解説します。

1失敗ストーリー

「うちのデータ、AIに入れましたか?」と聞かれた打ち合わせ

会議室で上司と法務の担当者から取引先との約束について説明を受け、肩を落とすまなぶのイラスト

今年の6月、まなぶのチームは、中堅の物流会社に向けた業務改善の提案をまとめていました。取引先からは、過去1年分の出荷のデータと、社内の業務の流れをまとめた資料を預かっていました。データの量がとても多かったため、まなぶは、会社で使うことが認められているAIのツールにデータを入力して、傾向をまとめてもらいました。チームの後輩たちも、同じように預かった資料をAIで要約し、提案書づくりはこれまでにない速さで進みました。いつもなら2週間はかかる分析が3日で終わり、まなぶは「今回はいい提案になる」と手応えを感じていました。

提案の打ち合わせの日、まなぶたちは、AIでまとめた分析を中心に説明しました。取引先の担当の方は、身を乗り出すようにして熱心に聞いてくれていました。ところが、質疑応答の時間に、同席していた取引先の情報管理の担当の方が、静かにこう聞きました。「この分析は、どうやって作りましたか? うちのデータを、外部のAIサービスに入力したということでしょうか」。

まなぶが「社内で認められたツールを使っています」と答えると、担当の方は首を横に振りました。「御社との秘密保持の約束では、預けた資料を外部のサービスで処理する場合は、事前にこちらの了解を得ることになっています」。まなぶたちは、自分の会社のルールだけを見て、取引先との約束を一度も確かめていなかったのです。打ち合わせは、そこで中断になりました。

その日のうちに、上司と法務の担当者が取引先へ連絡を入れ、入力したデータの扱いについて説明と確認を重ねることになりました。提案は1か月以上止まり、最終的には別の会社の提案が選ばれました。それまで何年も続いていた取引にも、影を落とすことになりました。上司は、まなぶにこう言いました。「AIを使ったこと自体が悪いんじゃない。預かったものの扱い方を、相手と決めていなかったことが問題なんだ」。チームの誰もが、「社内でOKなら大丈夫」と思い込んでいたことに、まなぶは大きなショックを受けました。

その後、まなぶのチームでは、取引先から資料を預かるたびに、AIで扱ってよいかを確かめる手順をつくることにしました。まなぶは、その手順の案づくりを自分から引き受けました。同じ失敗を、チームのほかの誰かにくり返してほしくないと思ったからです。

2原因分析

取引先とAIの使い方を決めずに失敗した理由

1

社内のルールだけを見ていた

社内でAIの使い方のルールが決まっていると、それを守っていれば安心だと感じます。けれど、取引先から預かった情報は、社内のルールより先に、取引先との契約や約束にしたがう必要があります。社内のルールは「使ってよいツール」を決めたもので、「どの情報を入れてよいか」は相手ごとに違うことを知っておきましょう。社内のルールに、取引先の情報を扱うときの注意が書かれていないか、あわせて確かめておくことも大切です。

2

契約や約束の中身を、確かめなかった

秘密保持の約束などには、預かった情報をどう扱うかが書かれていることがあります。外部のサービスで処理してよいか、事前の了解が必要かは、契約によってさまざまです。預かった資料をAIに入力する前に、契約の中身を確かめましょう。自分で判断が難しいときは、上司や法務の担当者に相談することが大切です。契約を結んだ担当者がチームの外にいる場合は、その人にも確かめましょう。

3

取引先に、AIを使ってよいかを聞かなかった

契約に書かれていなくても、取引先がAIの使用について考えを持っていることがあります。資料を預かるときに、「AIで分析や要約をしてもよいか」を、最初に取引先に聞いておくことが大切です。聞くこと自体が、情報を大切に扱う姿勢として、相手からの信頼につながります。聞いた内容と相手の答えは、メールなどの記録に残しておきましょう。

4

チームの中で、確認の手順を決めていなかった

一人ひとりが自分の判断でAIを使っていると、チームの誰かが確かめ忘れることが起こります。取引先から資料を預かったら、チームの誰が、いつ、何を確かめるかを決めておくことが大切です。取引先ごとに「AIで扱ってよいかどうか」を一覧にして共有しておくと、迷わずに済みます。新しくチームに入った人にも、最初にこの一覧を見てもらうようにしましょう。

5

AIを使ったことを、提案の中で伝えていなかった

AIで分析した結果を使う場合、そのことを相手が知らないと、あとから不信感につながります。AIを使った部分と、どのように確かめたかを、提案の中で伝えておくと、相手も安心して中身を検討できます。伝えにくいと感じるなら、それは使う前に相手と話し合っておくべきだったサインです。正直に伝えられる使い方をすることが、長い取引につながります。

3図解

取引先とAIの使い方を決めずに失敗するチームと、信頼を守れるチームの違い

⚠ 取引先とAIの使い方を決めずに失敗するチームのパターン
「社内でOKのツールだから」と、預かった資料をAIに入れる
↓
取引先との契約や約束を、誰も確かめない
↓
打ち合わせの場で、データの扱いを聞かれて初めて気づく
↓
提案が止まり、取引先からの信頼を失う
◎ 取引先とAIの使い方を決めて信頼を守れるチームのパターン
資料を預かるときに、AIで扱ってよいかを取引先に聞く
↓
契約の中身を確かめ、取引先ごとの扱いをチームで共有する
↓
AIを使った部分と確かめ方を、提案の中で伝える
↓
AIの速さを生かしながら、取引先の信頼を守れる
4解決策

取引先の資料をAIで扱う前のチェックリスト

AIは、取引先への提案の質と速さを高めてくれる心強い道具です。預かった資料を扱う前に、次の項目を確かめてみてください。

  • 取引先との契約や約束で、外部のサービスでの処理がどう決められているか確かめた
  • 資料を預かるときに、AIで扱ってよいかを取引先に聞いた
  • 判断に迷うときは、上司や法務の担当者に相談した
  • 取引先ごとの扱いを、チームで一覧にして共有した
  • チームの誰が、いつ確かめるかを決めた
  • AIを使った部分と確かめ方を、提案の中で伝える準備をした

まなぶのチームでは今、取引先から資料を預かると、最初に「AIの利用についての確認」を取引先と行い、その結果をチームの一覧に書き込むことにしています。了解を得られない場合は、AIを使わずに分析する、名前や数字を伏せたうえで使ってよいか相談する、といった進め方を選んでいます。AIを使う前に、まず相手と決める。まなぶがつくった手順は、ほかのチームでも使われるようになりました。

※取引先から預かった情報の扱いは、契約の内容によって異なります。この記事は一般的な考え方を紹介したもので、具体的な判断は、必ず社内の法務の担当者や専門家に確認しましょう。
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会社でのAI導入を進めるなら

チームでAIを安全に使うには、情報の扱い方まで含めて、仕組みを整えておくことが大切です。

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導入計画の策定から運用サポートまで、専門的に支援してくれるタイプです。権限の設計や情報の扱い方まで含めて相談できるので、取引先の情報を扱う仕事でも安心して進めやすくなります。

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まなぶまなぶ
社内で認められたAIだからと取引先のデータを入れたら、取引先との約束を確かめていなくて、提案が止まってしまいました…。
みらいみらい
取引先から預かった情報は、取引先との約束にしたがって扱う必要があります。資料を預かるときに、AIで扱ってよいかを最初に決めましょう。
まなぶまなぶ
AIを使う前に、まず相手と決めることが大事なんですね。

取引先とAIの使い方を決めずに失敗する原因は、社内のルールだけを見て、取引先との契約や約束を確かめず、チームの確認の手順も決めないまま、預かった資料をAIに入力してしまうことです。資料を預かるときに取引先と決め、契約を確かめ、取引先ごとの扱いをチームで共有する。それだけで、AIの速さを生かしながら信頼を守れます。組織やチームでAIを導入するときに失敗しないための考え方は、組織でのAI導入の失敗から学ぶでまとめています。

組織・チームのAI導入については、チームでAI活用の差が広がって失敗する人の特徴5選や社員のAI利用を禁止しすぎて後悔する理由もあわせて読んでみてください。

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