小さな会社でAIを導入するときに失敗しない方法
小さな会社でAIを導入するときに失敗しないためには、「みんなが使えるように」と高いツールを一度に入れるのではなく、会社で一番困っている仕事を一つ選び、小さく試して、担当する人と使う時間を決めてから広げていくことが大切です。人数の少ない会社ほど、AIで仕事が楽になったときの効果は大きくなります。けれど、小さな会社には、使い方を調べる専任の担当者も、新しい仕組みに慣れるための余裕もないことが多いものです。この記事では、まなぶが聞いたAさんの失敗ストーリーをもとに、小さな会社でAIを導入するときに失敗しない方法を解説します。
15人分のAIツールの契約が、1年間ほとんど使われなかった
この話は、まなぶが実家の近所で子どものころから知っている、印刷会社の社長のAさんから聞いたものです。秋の連休に帰省した日の夕方、実家の近くの公園で、犬の散歩をしていたAさんとばったり会いました。まなぶが「最近、仕事でAIを使うことが増えて」と話すと、Aさんは「うちも入れたんだけど、大失敗でね」と、ベンチに腰を下ろして話してくれました。
Aさんは、社員15人ほどの町の印刷会社を経営している50代です。去年、テレビやニュースで「AIで仕事が変わる」という話をよく聞くようになり、Aさんも「うちも遅れてはいけない」と考えました。ちょうどそのころ、AIのツールを売り込みに来た営業の人から、「社員の皆さんが使えば、見積もりも事務も大幅に効率化できます」と説明を受け、社員15人分のツールを1年契約で申し込みました。社員に相談はしませんでした。「便利な道具を入れてあげれば、みんな喜んで使うはずだ」と思っていたからです。
ところが、ツールは思うように使われませんでした。印刷機の前で働く職人たちは、ふだんパソコンをほとんど使いません。事務の社員も、日々の仕事に追われて、新しいツールの使い方を覚える時間がありませんでした。説明書を渡されただけで、誰に聞けばいいのかも分からなかったそうです。Aさん自身が試しに見積もりを作らせてみると、紙の種類や加工の細かな条件が反映されず、とても使い物になりませんでした。1年がたって利用の記録を見ると、ツールを使っていたのは、15人のうち2人だけだったのです。
契約の更新の時期が来て、Aさんは解約を決めました。1年分の費用は、小さな会社にとっては決して安いものではなく、設備の修理を先送りにしたほどでした。「何に困っていて、何を楽にしたいのかを決めないまま、『みんなで使えばいい』と思っていた」と、Aさんは犬のリードを握りながら振り返っていました。社員からは、「せめて最初に相談してほしかった」という声も出たそうです。Aさんにとっては、費用よりも、その一言のほうが胸にこたえたといいます。
Aさんは今、事務の社員と一緒に、「毎月一番時間がかかっている仕事」を書き出すところから、AIの使い方を考え直しているそうです。話を聞いたまなぶは、大きな会社と小さな会社では、AIの入れ方そのものを変える必要があるのだと感じていました。人も時間も限られているからこそ、「何に使うか」を最初にしぼることが、何より大事なのだと思えたのです。
小さな会社でAIを導入するときに失敗しない方法
会社で一番困っている仕事を、一つ選ぶ
「みんなで使えば効率化できる」という考え方では、何に使えばいいのかが誰にも分かりません。まずは、会社で一番時間がかかっている仕事、一番困っている仕事を一つ選ぶことから始めましょう。社員に「毎月、一番時間を取られている仕事は何か」を聞くと、AIで楽にしたい仕事が見えてきます。選ぶときは、パソコンで行う仕事で、毎月くり返し発生するものから始めると、効果を確かめやすくなります。
高い契約の前に、小さく試す
最初から全員分を長い期間で契約すると、合わなかったときの負担が大きくなります。無料で試せる範囲や、少人数・短い期間の契約から始めると、自分の会社に合うかどうかを確かめられます。試すときは、実際の仕事を使って、どれだけ時間が減ったかを測っておきましょう。試した結果を見てから、人数や期間を広げるかどうかを決めれば、無駄な出費を防げます。契約の期間や解約の条件も、申し込む前に必ず確かめることが大切です。売り込みの説明だけで決めず、実際に使っている同じくらいの規模の会社の話を聞けると、さらに安心です。
担当する人と、使う時間を決める
小さな会社では、新しい仕組みの担当者が決まらないまま、誰も手をつけないことがよくあります。担当する人を一人決め、その人がAIを試したり覚えたりする時間を、仕事の中にきちんと確保することが大切です。兼任の場合でも、「週に1時間はAIの時間」と決めるだけで、進み方は大きく変わります。担当者が覚えたことを、ほかの社員に少しずつ伝えていく流れも、あわせて考えておきましょう。
社長自身が、使ってみる
社長が使い方を知らないまま「使いなさい」と言っても、社員は本気になりにくいものです。社長が自分で使ってみて、良いところも難しいところも知っておくと、社員の困りごとにも気づきやすくなります。社長がAIで失敗した話を社員に話すことも、使いやすい雰囲気づくりにつながります。社長が楽しそうに試している姿は、社員にとって何よりの後押しになります。
社員の声を聞き、外の力も借りる
現場の社員は、どの仕事にAIが合いそうか、どの仕事は合わないかをよく知っています。導入を決める前に社員の意見を聞き、決めたあとも定期的に感想を聞くようにしましょう。社内だけで判断が難しいときは、地域の商工会議所の相談窓口や、導入を支援する専門のサービスに相談するのも一つの方法です。外の人の目が入ると、社内では気づきにくい使い道が見つかることもあります。
小さな会社でAI導入に失敗する流れと、うまく進む流れの違い
小さな会社でAIを導入する前のチェックリスト
小さな会社だからこそ、AIで仕事が楽になったときの効果は大きくなります。導入する前に、次の項目を確かめてみてください。
- 社員に、一番時間がかかっている仕事を聞いた
- AIで楽にしたい仕事を、一つに決めた
- 無料の範囲や、少人数・短い期間で試した
- 契約の期間と、解約の条件を確かめた
- 担当する人と、AIを試す時間を決めた
- 社長自身が、実際に使ってみた
Aさんの会社では今、事務の社員が毎月まとめているお客さまへの請求の案内の下書きに、AIを使い始めたそうです。無料で試せる範囲から始め、担当の社員には毎週1時間、AIを試す時間を取ってもらっています。「全員で一気にではなく、一人の一つの仕事から」。夕暮れの公園で、Aさんはそう言って、犬と一緒に家のほうへ帰っていきました。
会社でのAI導入を進めるなら
小さな会社でAIを導入するには、自社に合ったツールと進め方を見極めることが大切です。
AIエージェント導入支援・コンサルサービス【AIツールギャラリー】
導入計画の策定から運用サポートまで、専門的に支援してくれるタイプです。専任の担当者がいない小さな会社でも、自社に合った進め方を相談できます。
AIツール比較・選定相談サービス【BoostX】
自分たちの用途に合ったAIツールを、客観的な視点から比較検討できるタイプです。高い契約をする前に、本当に必要な機能を整理したいときに向いています。
まなぶ
みらい
まなぶ小さな会社でAIを導入するときに失敗しないためには、会社で一番困っている仕事を一つ選び、小さく試し、担当する人と使う時間を決めることが大切です。社長自身も使い、社員の声を聞きながら広げていけば、少ない費用で確かな効果を出せます。組織やチームでAIを導入するときに失敗しないための考え方は、組織でのAI導入の失敗から学ぶでまとめています。
組織・チームのAI導入については、AI活用を数値目標にして後悔する理由や社員のAI利用を禁止しすぎて後悔する理由もあわせて読んでみてください。

