結論

AIで稟議書を書いて後悔する人の多くは、「立派に見える文章」をAIに作らせることに満足して、決める人が知りたい根拠・費用の比べ方・うまくいかなかったときのことを、自分で考えないまま出してしまう人です。AIに頼めば、稟議書らしい言葉が並んだ文章は、すぐにできあがります。けれど、稟議書は、読んだ人が「お金を使ってよい」と判断するための材料です。判断の材料が入っていなければ、どれだけ文章が整っていても通りません。この記事では、まなぶの失敗ストーリーをもとに、AIで稟議書を書いて後悔する理由と、通る稟議書の考え方を解説します。

1失敗ストーリー

整った稟議書が、部長の3つの質問で止まった

部長から稟議書について3つの質問をされ、答えに詰まって立ち尽くすまなぶのイラスト

今年の2月、まなぶは、取引先向けセミナーで流す短い紹介動画を、外部の制作会社に頼みたいと考えていました。セミナーの冒頭で会社の取り組みを分かりやすく伝えられれば、参加者の印象も変わるはずだと思ったのです。そのためには、部長の承認をもらう稟議書を出す必要がありました。稟議書を書くのは初めてだったまなぶは、AIに「セミナー用の紹介動画を外部に頼むための稟議書を書いて」と頼みました。

AIが作った稟議書は、見た目はとても立派でした。「本施策により、セミナー参加者の理解度向上と、問い合わせ件数の増加が見込まれます」「動画の活用は、多くの企業で広く取り入れられています」。言葉づかいも整っていて、まなぶは少し手を加えただけで提出しました。初めての稟議書が30分ほどで書き上がったことに、まなぶは「AIがあれば、稟議書も怖くない」とさえ思っていました。ところが、2日後に部長から呼ばれ、3つの質問を受けました。「問い合わせが増えるって、どれくらい?」「ほかの制作会社とは比べた?」「社内で作る方法は考えた?」。

まなぶは、どの質問にも答えられませんでした。AIの稟議書には、それらしい言葉は並んでいても、数字の根拠も、比べた結果も、一つも入っていなかったのです。稟議書は差し戻しになりました。慌てて見積もりを集め直し、書き直して出しましたが、今度は「動画を作ったあと、誰がどう使うのか」が書かれていないと、もう一度差し戻されました。

3回目の提出が終わったころには、3月の終わりが近づいていました。その年度の予算の締め切りに間に合わず、動画の制作は次の年度に回ることになりました。6月のセミナーは、結局、動画なしで開くことになりました。「最初から、部長が何を知りたいかを考えて書いていれば、一度で通っていたかもしれない」と、まなぶは振り返ります。

あとで先輩に相談すると、先輩はこう教えてくれました。「稟議書は、文章のうまさを見られているんじゃないよ。決める人が、安心してハンコを押せるかどうかなんだ」。まなぶは、AIに頼んだのは「稟議書の形」だけで、中身を考える仕事まで任せたつもりになっていたことに気づきました。整った文章ほど、中身が足りないことに自分でも気づきにくい。それが、AIで書いた稟議書の落とし穴でした。

2原因分析

AIで稟議書を書いて後悔する理由

1

根拠のない「見込まれます」が並んでしまう

AIは、それらしい効果を、もっともらしい言葉で書くのが得意です。けれど、「向上が見込まれます」「増加が期待できます」という言葉には、根拠がありません。決める人が知りたいのは、「どれくらい」「なぜそう言えるのか」です。過去の実績や、ほかの部署での例など、自分の手元にある数字を探して、効果の根拠として書き込みましょう。数字がないときは、「こうなったら成功とみなす」という目安を決めて書くだけでも、説得力は大きく変わります。

2

ほかの方法と比べていない

稟議書を読む人は、「なぜこの方法なのか」「もっと安い方法はないのか」を必ず考えます。AIに「稟議書を書いて」と頼むだけでは、比べた結果は出てきません。ほかの会社や、社内で行う方法などと比べ、その中でこれを選んだ理由を書きましょう。比べる候補を2〜3つ出してもらうところまではAIに手伝ってもらい、見積もりや条件は自分で集めることが大切です。

3

うまくいかなかったときのことを書いていない

AIの文章は、前向きな内容に偏りがちです。けれど、お金を使う判断をする人は、「うまくいかなかったらどうなるか」も気にしています。心配な点と、その対策を正直に書いておくと、かえって信頼される稟議書になります。AIに「この計画で心配される点と、その対策を挙げて」と頼むと、自分では気づかなかった見落としが見つかることもあります。出てきた心配ごとの中から、本当に起こりそうなものを選んで、対策と一緒に書いておきましょう。

4

使ったあと、誰がどう生かすのかが書かれていない

物を買ったり、仕事を外に頼んだりしたあと、それをどう使い続けるかも、決める人が気にするところです。まなぶの稟議書には、動画を作ったあと、どの場面で、誰が使うのかが書かれていませんでした。「買って終わり」「作って終わり」ではないことを示すために、使う場面と担当者、使い続ける期間を書いておきましょう。まなぶの場合なら、「年2回のセミナーの冒頭で流し、営業担当が商談でも使う」と書くだけで、部長の不安は一つ減っていたはずです。

5

決める人の関心を、先に聞いていない

稟議書で何を重く見るかは、決める人によって違います。費用を一番に気にする人もいれば、効果の測り方を気にする人もいます。AIは、あなたの会社の決める人が何を大事にしているかを知りません。書き始める前に、上司や先輩に「部長は稟議書でどこを見ますか」と聞いておくと、最初から的を外さない稟議書が書けます。過去に通った稟議書を見せてもらうのも、決める人の関心を知るよい方法です。

3図解

AIで稟議書を書いて後悔する人と、通せる人の違い

⚠ AIで稟議書を書いて後悔する人のパターン
「稟議書を書いて」とだけAIに頼む
↓
立派な言葉が並んだ文章を、ほぼそのまま出す
↓
根拠・比較・心配な点を聞かれて、答えられない
↓
差し戻しが続き、予算や時期を逃してしまう
◎ AIを使って通る稟議書を書ける人のパターン
決める人が何を重く見るかを、先に聞いておく
↓
根拠の数字・比べた結果・心配な点を、自分で集める
↓
集めた材料をAIに渡し、読みやすい形に整えてもらう
↓
決める人が安心して判断でき、一度で通りやすくなる
4解決策

AIで稟議書を書く前のチェックリスト

AIは、稟議書の形を整えたり、見落としを探したりするときに頼れる道具です。出す前に、次の項目を確かめてみてください。

  • 決める人が稟議書でどこを見るかを、上司や先輩に聞いた
  • 効果の根拠になる数字や、成功の目安を書いた
  • ほかの方法と比べ、これを選んだ理由を書いた
  • 心配な点と、その対策を書いた
  • 使ったあと、誰がどう生かすのかを書いた
  • 予算の締め切りから逆算して、出す時期を決めた

まなぶは今、稟議書を書くときは、まず部長が気にしそうな質問を自分で5つ書き出し、その答えを集めてからAIに渡しています。AIには「この材料で、決める人が判断しやすい稟議書に整えて」「足りない材料があれば教えて」と頼んでいます。AIに任せるのは「形」、中身の材料は自分で集める。次の年度に出し直した動画の稟議書は、一度で通りました。

※稟議書に書く予算の額や、取引先の見積もりの内容をAIに入力してよいかは、会社のルールによって異なります。使う前に、会社で認められているツールと使い方を確認しましょう。
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AIが書いた立派な稟議書を出したら、部長の質問に一つも答えられなくて、予算の締め切りを逃してしまいました…。
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稟議書は、決める人が安心して判断するための材料です。根拠や比べた結果は自分で集めて、AIには形を整えてもらいましょう。
まなぶまなぶ
AIに任せるのは形で、中身の材料は自分で集めるんですね。

AIで稟議書を書いて後悔する原因は、立派な言葉に満足して、根拠・比べた結果・心配な点・使ったあとのことを、自分で考えないまま出してしまうことです。決める人が何を知りたいかを先に聞き、材料を自分で集めてからAIに整えてもらう。それだけで、稟議書は一度で通るものに近づきます。仕事でAIを使うときに失敗しないための考え方は、業務でのAI活用の失敗から学ぶでまとめています。

仕事でのAI活用については、AIで文章を校正して失敗する人の特徴5選やAIで自己評価シートを書いて後悔する理由もあわせて読んでみてください。

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