結論

社会人の学び直しで失敗する人の多くは、「学び直さないと取り残される」という焦りから、何のために学ぶのかを決めないまま、話題の分野にいくつも同時に手を出し、どれも途中で止まってしまう人です。焦りは、学び始めるきっかけにはなります。けれども、目的がないまま始めた学びは、忙しくなると真っ先に後回しになります。社会人の学び直しは「不安を消すためのもの」ではなく、「これからの仕事でしたいことに向けて、一つずつ積み上げるもの」です。この記事では、まなぶが聞いたAさんの失敗ストーリーをもとに、社会人の学び直しで失敗する人の特徴と、学び直しを続けて生かすためのポイントを解説します。

1失敗ストーリー

焦って3つを同時に始め、どれも止まったAさんの話

市民プールのプールサイドのベンチで、顔なじみのAさんから学び直しを3つ同時に始めて止まった話を聞くまなぶのイラスト

土曜日の朝、まなぶは、市民プールで泳いだあと、プールサイドのベンチで休んでいました。隣に座ったのが、毎週同じ時間に泳いでいる顔なじみのAさん(30代男性)でした。Aさんは、印刷会社で、企業のパンフレットやチラシの注文を受ける営業をしています。まなぶが勉強の話をすると、Aさんは「学び直し、ぼくは焦って失敗したんだよね」と、タオルで髪をふきながら話し始めました。(登場する人物は、よくある失敗をもとに編集部が再現したものです)

きっかけは、去年の秋に見たニュースでした。「これからは、学び直しをしない人は取り残される」。紙の注文が少しずつ減っているのを感じていたAさんは、急に不安になりました。その週のうちに、英会話のアプリ、プログラミングの入門講座、動画編集のオンライン講座の3つに申し込みました。「どれかが役に立つはず。全部やっておけば安心だ」と考えたのです。

最初の2週間は、朝に英会話、夜にプログラミング、週末に動画編集と、張り切って進めました。けれども、年末の繁忙期に入ると、3つを回す時間はとてもありませんでした。どれから手をつけるかを迷っているうちに、どれも開かない日が増えていきました。春になるころには、3つとも止まっていました。何のために学ぶのかを決めないまま、不安を消すために手を広げていたのです。

「3つのうち、どれが自分の仕事に必要なのかも、考えたことがなかったんだよね」。Aさんは、プールの水面を見つめながら、苦笑いしてそう話してくれました。毎月の料金だけが、しばらく引き落とされ続けていたそうです。3つの講座の画面には、どれも「前回の続きから」という案内が、半年前の日付のまま残っていたといいます。今思えば、3つを始めた理由は、どれも「なんとなく必要そうだから」だったそうです。

2原因分析

社会人の学び直しで失敗する人の特徴5選

1

焦りや不安から、学び始めている

「取り残される」という不安は、学び始める強いきっかけになります。けれども、不安が理由のままだと、何を学べば不安が消えるのかが分からず、手当たりしだいに始めてしまいます。学び始める前に、「これからの仕事で、何ができるようになりたいか」を一文で書き出すことが大切です。Aさんなら、「紙の注文が減っても、お客さんの発信全体を手伝える営業になる」と書けば、学ぶものが自然としぼれてきます。不安は、目的に言いかえたときに、はじめて学びの力になります。

2

いくつもの分野を、同時に始めている

社会人が学びに使える時間は、思っているより限られています。いくつもの分野を同時に始めると、一つひとつに使える時間が少なくなり、どれも身につく前に止まってしまいます。まずは一つの分野にしぼり、3か月続けて、仕事で一度使えたら次を考えるようにしましょう。一つを形にしてから広げるほうが、結果として、多くのことを身につけられます。気になる分野は、「次に学ぶことリスト」に書いておけば十分です。

3

今の仕事と、学びをつなげていない

今の仕事とつながっていない学びは、使う場面がないため、覚えたことを忘れやすく、続ける理由も見つけにくくなります。今の仕事の中で、学んだことを試せる場面を、先に一つ見つけておくことが大切です。Aさんの場合、動画編集を学ぶなら、お客さんのパンフレットの内容を短い動画にして提案してみる、といった使い道が考えられます。使う場面が決まると、学ぶ中身も、どこまで学べばよいかもはっきりします。

4

続けられる時間を、見積もっていない

学び直しを始めるとき、多くの人は、余裕のある時期を基準に計画を立てます。けれども、仕事には必ず忙しい時期があり、その時期に学びが止まると、そのまま再開できなくなることがよくあります。1年の中でいちばん忙しい時期を思い浮かべ、その時期でも続けられる時間から逆に計画を立てるようにしましょう。忙しい時期は「10分だけ」「週に1回だけ」でも、止めずに続けることが大切です。

5

学んだことを、誰にも話していない

一人だけで学んでいると、学びが仕事にどうつながるのかが見えにくく、止まっても誰にも気づかれません。上司や同僚に「今、こんなことを学んでいる」と話しておくと、学んだことを試す場を紹介してもらえたり、仕事で必要な知識を教えてもらえたりすることがあります。同じ分野を学ぶ仲間がいれば、つまずいたところを相談することもできます。社会人の学び直しは、職場や人とつながることで、はじめて仕事に生きてきます。話すことは、学びを続ける理由を一つ増やすことでもあるのです。

3図解

焦って手を広げる人と、目的から一つずつ学ぶ人の違い

⚠ 社会人の学び直しで失敗する人のパターン
「取り残される」という不安から、話題の分野に申し込む
↓
いくつもの分野を同時に始め、今の仕事とつなげない
↓
忙しい時期に、どれから手をつけるか迷って止まる
↓
どれも身につかないまま、料金と時間だけが出ていく
◎ 社会人の学び直しを生かせる人のパターン
これからの仕事でしたいことを、一文で書き出す
↓
一つの分野にしぼり、今の仕事で試せる場面を見つける
↓
忙しい時期でも続く時間で進め、学びを人に話す
↓
学んだことが仕事で使え、次の学びにもつながっていく
4解決策

社会人の学び直しで失敗しないためのチェックリスト

学び直しを始める前、またはもう一度始めるときに、次の項目を確かめてみてください。たくさん学ぶより、目的に向けて一つずつ積み上げるほうが、学びは仕事に生きてきます。すでにいくつも始めてしまった人は、まず一つだけを残すところから見直してみましょう。

  • これからの仕事で何ができるようになりたいかを、一文で書いた
  • 学ぶ分野を、まずは一つにしぼった
  • 今の仕事の中で、学んだことを試せる場面を一つ見つけた
  • いちばん忙しい時期でも続けられる時間で、計画を立てた
  • 学んでいることを、上司や同僚に話した
  • 気になるほかの分野は、「次に学ぶことリスト」に書いた

Aさんは今、もう一度、学び直しを始めています。今回は、まず「お客さんの発信全体を手伝える営業になる」と書き出し、3つの講座のうち、動画編集の一つだけを残しました。英会話とプログラミングは、いったん解約しました。学んだことは、実際のお客さんへの提案で、パンフレットの内容を30秒の動画にして見せるところから試しています。上司にも学んでいることを話すと、「次の提案で使ってみよう」と言ってもらえたそうです。「一つにしぼったら、学ぶ理由がはっきりして、続けるのが楽になったんだ」。Aさんは、プールに戻る前に、そう言って笑っていました。

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まなぶまなぶ
不安で3つも同時に始めて、どれも止まってしまったなんて…。
みらいみらい
社会人の学び直しは、不安を消すためのものではなく、これからの仕事でしたいことに向けて、一つずつ積み上げるものです。まずは目的を一文で書き、学ぶ分野を一つにしぼりましょう。今の仕事で試せる場面を見つけることも大切です。
まなぶまなぶ
たくさん学ぶより、一つを仕事で使うことが先なんですね。

社会人の学び直しで失敗する原因は、焦りや不安から、何のために学ぶのかを決めないまま、いくつもの分野に同時に手を出してしまうことです。目的を一文で書き、分野を一つにしぼり、今の仕事で試す場面を見つけ、忙しい時期でも続く時間で進め、学びを人に話す。それだけで、学び直しは仕事に生きてきます。社会人の学び直しで失敗しないための考え方は、社会人の学び直し・リスキリングの失敗から学ぶでまとめています。

社会人の学び直し・リスキリングについては、会社のリスキリング制度で学んで後悔する理由や学び直しを仕事に生かせず失敗した話もあわせて読んでみてください。

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