結論

AI活用を数値目標にして後悔する人の多くは、「全員が毎日AIを使う」「利用回数を週に何回以上」のように、AIを使うこと自体を目標にしてしまい、チームの仕事が本当に良くなったかを見ていない人です。チームでAIの活用を進めるとき、数字の目標があると進み具合が分かりやすくなります。けれど、AIは仕事を良くするための道具で、使った回数が増えても、仕事が良くなったとは限りません。この記事では、まなぶが聞いたAさんの失敗ストーリーをもとに、AI活用を数値目標にして後悔する理由と、チームで成果につながる目標の立て方を解説します。

1失敗ストーリー

利用回数は増えたのに、残業も、お客さまの評判も悪くなった

バッティングセンターのベンチで、顔なじみのAさんからチームのAI活用の失敗の話を聞くまなぶのイラスト

この話は、まなぶが週末にときどき通うバッティングセンターで、顔なじみになったAさんから聞いたものです。打ち終わって、ベンチで汗をふいていたとき、まなぶが「最近は、会社でAIを使えって言われるんですよね」と話すと、Aさんは「うちもそうだった。課長として、それで大失敗したよ」と苦笑いしました。

Aさんは、食品の卸売会社で営業課の課長をしている40代です。今年の春、部長から「AIを活用して、課の残業を2割減らしてほしい」と言われました。AIの使い方にまだ慣れていないメンバーも多かったため、Aさんは、まずはみんなにAIを使ってもらうことが大事だと考え、課の目標を「全員が毎日AIを使い、週に20回以上の利用を報告する」と決めました。毎週の会議では、一人ひとりの利用回数をグラフにして見せるようにしました。

最初の1か月で、課の利用回数はぐんと増えました。部長への報告でも、右肩上がりのグラフを見せることができ、Aさんは手応えを感じていました。回数の少ないメンバーには、会議のあとで声をかけ、もっと使うよう促していました。ところが、2か月目に入ると、思わぬ声が届き始めました。お客さまから「最近のメール、どれも同じような文章で、こちらの質問に答えていない」という苦情が入ったのです。調べてみると、部下たちは回数の目標を達成するために、確かめる時間もないまま、AIの文章をそのまま送るようになっていたのでした。

しかも、肝心の残業は減っていませんでした。AIの文章の手直しや、お客さまへのおわびの対応で、かえって時間が増えていたのです。ベテランの部下からは、「AIを使わないほうが早い仕事まで、回数のために使わされている」と、はっきり言われました。「AIを使うことが目的になって、何のために使うのかが、チームの誰にも見えなくなっていた」と、Aさんは振り返っていました。

Aさんはその後、利用回数の報告をやめ、課のメンバー一人ひとりに「一番時間がかかっている仕事は何か」を聞くことから、やり直したそうです。話を聞いたまなぶは、目標の立て方ひとつで、同じAIがチームを助ける道具にも、負担を増やす道具にもなるのだと感じていました。そして、自分のチームでAIの使い方を話すときも、「どれだけ使ったか」より「何が楽になったか」を話そうと思いました。

2原因分析

AI活用を数値目標にして後悔する理由

1

「使う回数」を目標にしてしまう

利用回数は数えやすく、進み具合が見えやすい数字です。けれど、回数を目標にすると、人は回数を増やすことに力を使うようになります。目標にすべきなのは、AIを使った回数ではなく、「どの仕事の時間が、どれだけ減ったか」「仕事の質が上がったか」です。回数は、目標ではなく参考の数字として見るくらいがちょうどよいのです。目標にする数字は、AIを使う前の状態を一度測っておくと、あとで比べやすくなります。

2

現場の困りごとから、目標を決めていない

上から決めた目標は、現場の仕事の実情とずれやすくなります。AIで助けてほしい仕事は、人や担当によって違います。目標を決める前に、メンバー一人ひとりに「時間がかかっている仕事」「もっと楽にしたい仕事」を聞き、そこからAIを使う場面を選びましょう。現場から出た目標は、メンバーも納得して取り組めます。最初は一つか二つの仕事にしぼって始め、うまくいったら広げていくのがおすすめです。

3

仕事の質を、見ていない

AIを使えば、作業は速くなります。けれど、確かめる時間を削ると、仕事の質は下がります。スピードの数字と一緒に、お客さまからの声や、ミスの数など、質を表す数字も見るようにしましょう。速さだけを追いかけると、あとから手直しやおわびに時間を取られ、結局は遠回りになります。お客さまに出すものほど、確かめる時間を目標の中にきちんと入れておきましょう。

4

使わないほうがよい仕事まで、使わせている

AIが得意な仕事もあれば、人が直接やったほうが早く、確かな仕事もあります。すべての仕事にAIを使わせると、かえって効率が落ちることがあります。「この仕事はAIを使う」「この仕事は使わない」を、チームで話し合って決めておきましょう。使わない判断も、立派なAI活用の一つです。決めた分け方は、実際に使ってみたあとで見直していきましょう。

5

振り返りの場で、数字だけを見ている

会議で数字のグラフだけを見ていると、数字の裏で何が起きているかが分かりません。振り返りの場では、「AIを使ってうまくいったこと」「うまくいかなかったこと」をメンバーに話してもらうことが大切です。うまくいかなかった話が出てくるチームほど、AIの使い方は早く良くなっていきます。話しやすい雰囲気をつくるのは、目標を決めた人の大切な役目です。

3図解

AI活用を数値目標にして後悔するチームと、成果が出るチームの違い

⚠ AI活用を数値目標にして後悔するチームのパターン
「全員が毎日AIを使う」と、利用回数を目標にする
↓
回数を増やすために、確かめずにAIの答えを使う
↓
会議では、回数のグラフだけを見る
↓
仕事の質が下がり、残業も減らず、チームに不満がたまる
◎ AI活用で成果が出るチームのパターン
メンバーに、時間がかかっている仕事を聞く
↓
AIを使う仕事と使わない仕事を、チームで決める
↓
減った時間と仕事の質を見て、うまくいかなかった話も共有する
↓
仕事が本当に良くなり、AIがチームの助けになる
4解決策

チームでAI活用の目標を決める前のチェックリスト

チームでAIを活用するとき、目標の立て方がその後を大きく左右します。目標を決める前に、次の項目を確かめてみてください。

  • 利用回数ではなく、「減った時間」や「仕事の質」を目標にした
  • メンバーに、時間がかかっている仕事を聞いた
  • AIを使う仕事と、使わない仕事をチームで決めた
  • お客さまの声やミスの数など、質を表す数字も見るようにした
  • 振り返りの場で、うまくいかなかった話も共有している
  • 会社で認められたAIツールと、使ってよい情報の範囲を確かめた

Aさんの課では今、「見積もりの作成にかかる時間を3割減らす」という一つの目標にしぼって、AIを使っているそうです。お客さまへのメールは、AIの下書きを使っても、必ず自分の言葉で一言を足すことにしました。「数えるべきだったのは、AIを使った回数じゃなくて、チームが楽になった時間だった」。バッティングセンターの打球の音が響く中で、Aさんは笑いながらそう話していました。

※チームでAIを使うときは、会社で認められているツールと、入力してよい情報の範囲を必ず確認しましょう。お客さまの情報を扱う場合は、とくに慎重に判断することが大切です。
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チームでのAI活用を進めるなら

チームでAIの活用を進めるには、仕事の流れを見直すところから始めることが大切です。

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まなぶまなぶ
Aさんの課では、AIの利用回数を目標にしたら、回数は増えたのに、残業もお客さまの評判も悪くなってしまったそうです…。
みらいみらい
AIは仕事を良くするための道具です。使った回数ではなく、減った時間と仕事の質を目標にしましょう。
まなぶまなぶ
数えるべきなのは、使った回数じゃなくて、チームが楽になった時間なんですね。

AI活用を数値目標にして後悔する原因は、使う回数そのものを目標にして、現場の困りごとや仕事の質を見ず、使わないほうがよい仕事まで使わせてしまうことです。メンバーの困りごとから目標を決め、減った時間と質を見て、うまくいかなかった話も共有する。それだけで、AIはチームの本当の助けになります。組織やチームでAIを導入するときに失敗しないための考え方は、組織でのAI導入の失敗から学ぶでまとめています。

組織・チームのAI導入については、チームでAI活用の差が広がって失敗する人の特徴5選や小さな会社でAIを導入するときに失敗しない方法もあわせて読んでみてください。

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