結論

不動産営業のAI活用で後悔する人の多くは、物件の紹介文をAIに作らせ、駅からの距離や日当たり、周りの環境といった大事な情報を、現地や資料で確かめないまま載せてしまう人です。AIを使えば、たくさんの物件の紹介文を、魅力的な言葉ですぐにそろえられます。けれど、住まい探しをしている人にとって、紹介文は「この部屋に決めるかどうか」を判断する大切な材料です。実際と違う紹介文は、お客さまの時間と信頼を損ねます。この記事では、まなぶが聞いたAさんの失敗ストーリーをもとに、不動産営業のAI活用で後悔する理由と、AIを上手に使う考え方を解説します。

1失敗ストーリー

「日当たり良好」と書いた部屋は、北向きだった

夜明け前の堤防で釣り竿を並べながら、釣り仲間のAさんから物件の紹介文の失敗の話を聞くまなぶのイラスト

この話は、まなぶが月に一度ほど一緒に海釣りに行く、釣り仲間のAさんから聞いたものです。まだ暗い早朝の堤防で、竿を並べて当たりを待っていたとき、まなぶが「最近は不動産の仕事でもAIを使うんですか」と聞くと、Aさんは「使ってるよ。でも、最初はやらかしてね」と、海を見ながら話してくれました。

Aさんは、地域の不動産会社で賃貸の仲介をしている40代の営業です。春の引っ越しシーズンを前に、Aさんは担当する物件の紹介文を、一度に30件ほど書く必要がありました。そこで、物件の間取りや家賃、最寄り駅などの基本情報をAIに渡し、「住みたくなるような紹介文を書いて」と頼みました。AIは、「日当たり良好の明るいお部屋」「駅近で通勤にも便利」「周りには買い物に便利なお店がそろう」といった、魅力的な紹介文を次々に作ってくれました。

紹介文を載せてから2週間ほどたったころ、内見に来たお客さまから、厳しい言葉をかけられました。「日当たり良好って書いてありましたよね。でも、この部屋、北向きで隣の建物がすぐ前にあって、昼でも暗いですよ」。Aさんが渡した情報には向きや周りの建物のことは書かれておらず、AIは「よくある紹介文」の言葉を当てはめていたのです。調べてみると、駅からの道のりを短く書きすぎていた物件や、すでに閉店したお店を「近くにある」と書いていた物件もありました。

そのお客さまは、仕事の休みを取って、遠くから内見に来ていました。Aさんはおわびをして、ほかの物件を案内しましたが、そのお客さまが契約することはありませんでした。さらに、上司からは「物件の広告には、守らなければいけない表示のルールがある。実際と違うことを書けば、会社の信用にもかかわる」と注意を受けました。「早く書けたことに満足して、自分の足で確かめた情報を一つも入れていなかった」と、Aさんは振り返っていました。

Aさんはその後、30件すべての紹介文を、現地で撮った写真や資料と照らし合わせて書き直したそうです。話を聞いたまなぶは、自分が今の部屋を探していたとき、紹介文の言葉をどれだけ信じていたかを思い出していました。読む人が信じて動く言葉だからこそ、確かめる責任があるのだと感じました。そして、営業企画として社外に出す資料を作る自分にも、同じことが言えると思いました。

2原因分析

不動産営業のAI活用で後悔する理由

1

物件の事実を、AIの言葉で埋めてしまう

AIは、渡された情報が足りないと、よくある紹介文の言葉でそのすき間を埋めます。向き、日当たり、駅からの道のり、周りの環境など、物件の事実はAIには分かりません。AIに頼む前に、現地で確かめた情報や、正しい資料にある情報を、できるだけ具体的に渡しましょう。「この情報だけを使って、書かれていないことは書かないで」と添えておくと、言葉の当てはめを防ぎやすくなります。分からないことは、紹介文に書かないことが大切です。

2

表示のルールを確かめていない

不動産の広告には、駅からの距離の書き方や、使ってはいけない言葉など、守るべき表示のルールがあります。AIが書く魅力的な言葉の中には、ルールに合わない表現が混ざることがあります。会社の決まりや、業界のルールに合っているかを、載せる前に必ず確かめましょう。分からないときは、上司や社内の担当者に相談することが大切です。とくに、駅からの距離や広さなどの数字は、決まった書き方があることが多いので注意しましょう。

3

どの物件も、同じような言葉になる

AIに同じ形の情報を渡すと、どの物件の紹介文も「便利」「明るい」「快適」といった、似た言葉が並びます。似た紹介文ばかりでは、お客さまはそれぞれの物件の違いが分かりません。その物件ならではの良さ、たとえば「夕方の窓からの眺め」や「静かな通り」など、現地を見た人にしか書けない一言を入れましょう。その一言が、ほかの物件と比べているお客さまの目に留まるきっかけになります。

4

良いところだけを書いてしまう

AIに「住みたくなるように」と頼むと、良いところばかりの紹介文になりがちです。けれど、お客さまが知りたいのは、良いところと気になるところの両方です。気になる点を正直に伝えておくと、内見での「思っていたのと違う」が減り、かえって信頼されます。「北向きですが、夏は涼しく過ごせます」のように、正直さと魅力を両立させる書き方を考えましょう。

5

載せたあとに、情報を見直していない

周りのお店が閉店したり、新しい建物が建ったりと、物件のまわりの環境は少しずつ変わります。紹介文は載せたら終わりではなく、定期的に見直すことが大切です。内見のときに気づいたことをメモしておき、紹介文に反映させる習慣をつけましょう。お客さまから内見のあとに聞いた感想も、紹介文を良くするための大切な材料です。AIは、その見直しの文章を整える手伝いにも使えます。

3図解

不動産営業でAI活用に後悔する人と、上手に使える人の違い

⚠ 不動産営業のAI活用で後悔する人のパターン
基本情報だけをAIに渡し、「住みたくなる紹介文」を頼む
↓
AIが当てはめた言葉を、現地で確かめずに載せる
↓
表示のルールも、載せたあとの変化も確かめない
↓
内見でお客さまをがっかりさせ、会社の信用も損ねる
◎ 不動産営業でAIを上手に使える人のパターン
現地で確かめた事実を、具体的にAIに渡す
↓
表示のルールに合っているかを確かめ、分からないことは書かない
↓
現地を見た人にしか書けない一言と、正直な情報を入れる
↓
お客さまが信じて動ける、信頼される紹介文になる
4解決策

物件の紹介文をAIで作る前のチェックリスト

AIは、たくさんの物件を扱う営業の心強い道具です。紹介文を載せる前に、次の項目を確かめてみてください。

  • 向き・日当たり・道のりなどを、現地や資料で確かめた
  • 確かめていないことは、紹介文に書いていない
  • 会社の決まりや表示のルールに合っているかを確かめた
  • 現地を見た人にしか書けない一言を入れた
  • 気になる点も、正直に伝えている
  • 載せたあとに見直す時期を決めた

Aさんは今、物件を見に行くたびに、スマートフォンに「向き」「窓からの景色」「駅までの道で気づいたこと」をメモしています。AIにはそのメモを渡して、紹介文の形に整えてもらうだけにしているそうです。「AIに任せるのは文章、物件のことは自分の足で確かめる」。朝日が昇り始めた堤防で、Aさんの竿に大きな当たりが来ました。

※不動産の広告には、守るべき表示のルールがあります。この記事は一般的な考え方を紹介したもので、具体的な表示の可否は、勤務先の決まりや業界のルールを必ず確認しましょう。
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Aさんは、AIが書いた「日当たり良好」の紹介文のせいで、北向きの部屋にお客さまを案内してしまったそうです…。
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物件の事実は、AIには分かりません。現地で確かめた情報を渡して、確かめていないことは書かないようにしましょう。
まなぶまなぶ
AIに任せるのは文章で、物件のことは自分の足で確かめるんですね。

不動産営業のAI活用で後悔する原因は、物件の事実をAIの言葉で埋め、表示のルールや載せたあとの変化を確かめないまま、紹介文を載せてしまうことです。現地で確かめた事実を渡し、分からないことは書かず、正直な情報と自分にしか書けない一言を入れる。それだけで、AIは信頼される紹介文づくりの頼れる道具になります。職種ごとにAIを使うときに失敗しないための考え方は、職種別のAI活用失敗から学ぶでまとめています。

職種別のAI活用については、社内講師のAI活用で失敗した話や社内報担当のAI活用で失敗しない方法もあわせて読んでみてください。

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