お金の土台づくりの失敗から学ぶ
お金の土台づくりでつまずく人は、「把握する・貯める・備える・増やす」という順番を飛ばして、目についたところから手をつけてしまうことが少なくありません。毎月いくら使っているかを知らないまま投資を始めたり、備えがないまま大きな買い物をしたりすれば、どこかで必ずほころびが出ます。お金の土台は、下から順番に積み上げることで初めて安定する。まず全体を把握し、先に貯める仕組みを作り、備えを用意してから増やす。その順番を守ることが、お金の不安を減らすいちばんの近道です。
FP相談で「毎月いくら残っていますか?」に答えられなかった話
この数年、まなぶはお金のことでいくつもの失敗をしてきました。「残ったら貯金」のつもりが、3年で20万円しか貯まらなかったこと。貯金のほとんどを投資に回していて、冷蔵庫が壊れた月に値下がりした投資を売るしかなかったこと。SNSの投稿を信じて買った株が、1か月で半分近くになったこと。夏のボーナス40万円を、1か月で使い切ってしまったこと。
「このままではまずい。一度、プロに見てもらおう」。そう考えたまなぶは、週末にお金の相談ができる窓口を予約しました。小さな相談ブースで、ファイナンシャルプランナーの担当者が穏やかに切り出しました。「まずは今の状況を教えてください。毎月の手取りから生活費を引くと、いくらくらい残っていますか?」。
まなぶは、答えに詰まりました。毎月の手取りは分かります。けれど、生活費にいくら使っているのか、いくら残っているのかは、考えたこともありませんでした。「えっと……月によって違うので……」。手元の白紙の家計表を前に、まなぶはペンを持ったまま何も書けませんでした。
担当者は、まなぶのこれまでの失敗の話をひととおり聞いたあと、紙に4段の階段を描いて見せてくれました。いちばん下が「把握する」、その上が「先に貯める」、次が「備える」、いちばん上が「増やす」。「どの失敗も、一つ下の段が抜けていたことが原因かもしれませんね。いきなり上の段から始めると、足元が崩れやすいんです」。
まなぶは、自分の失敗を振り返りました。貯金が続かなかったのは、お金の流れを把握せず、先に貯める仕組みがなかったから。投資を売るしかなかったのは、備えがないまま増やそうとしたから。SNSの情報に飛びついたのも、ボーナスを使い切ったのも、土台が整わないまま目の前のことに手をつけていたからでした。
まなぶは気づきました。一つひとつの失敗は別々に見えて、実は「お金の土台を積む順番」を間違えていたという点で、すべてつながっていたのです。
お金の土台づくりでつまずく原因
お金の全体を把握しないまま、対策を始めている
毎月の収入と支出、いくら残っているのかを知らなければ、いくら貯めればよいのか、いくら備えればよいのか、いくら投資に回せるのかも決められません。まなぶは、この一番下の段を飛ばしたまま、貯金や投資に手をつけていました。まずは3か月分の収入と支出を書き出し、毎月いくら残るのかを把握することが、すべての土台になります。完璧な家計簿でなくても、大まかな数字が分かれば十分です。
「増やす」から始めて、順番を逆にしている
お金の話題になると、どうしても「どう増やすか」に目が向きがちです。けれど、増やすことは土台の一番上にある段です。先に貯める仕組みと、急な出費への備えがないまま増やそうとすると、必要なときに投資を取り崩すことになり、かえってお金を減らしてしまいます。「把握する・先に貯める・備える・増やす」の順番で一段ずつ積むことで、増やすためのお金も守られます。
一度に全部を変えようとして、続かない
失敗に気づくと、家計簿も、節約も、貯金も、投資の勉強も、一気に始めたくなります。けれど、一度に全部を変えようとすると、忙しい時期に続かなくなり、結局すべてをやめてしまうことも少なくありません。土台づくりは、一段ずつで十分です。今月は把握だけ、来月は先に貯める仕組みだけ、と順番に進めるほうが、確実に積み上がっていきます。
人と比べて、自分に合わない方法を選んでいる
SNSや周りの人の話を聞くと、「みんなもう投資している」「あの人はもう〇〇万円貯めた」と焦る気持ちが生まれます。けれど、収入も生活も、目指していることも人それぞれです。人と比べるのではなく、自分の収入と暮らしに合った金額とペースを決めることが、無理なく続けるために欠かせません。比べる相手は、他人ではなく、少し前の自分です。
見直す時期を決めず、決めたことを放ったままにしている
一度仕組みを作っても、収入や暮らしが変われば、合わなくなることがあります。給料が上がったのに貯める額が同じまま、引っ越して生活費が増えたのに備えの額がそのまま、ということも起こりがちです。年に一度、たとえば誕生日やボーナスの時期など、お金の土台を見直す日を決めておけば、土台は暮らしの変化に合わせて少しずつ強くなっていきます。
土台が崩れる人と、土台を積み上げる人の違い
2つの整え方の違いは、お金の知識の量ではありません。お金の対策を「目についたものから始めるもの」と考えるか、「下から順番に積み上げるもの」と考えるかの違いです。
お金に振り回されていない人の多くは、特別なことをしているわけではありません。自分のお金の流れを知り、先に貯め、備えを持ったうえで、無理のない範囲で増やしています。土台がしっかりしているからこそ、急な出費や相場の変化があっても、慌てずにいられるのです。
お金の土台を整えるためのチェックリスト
- 過去3か月の収入と支出を書き出し、毎月いくら残るかを把握する
- 給料日に、決めた額を自動で別の口座へ移す仕組みを作る
- 生活費の何か月分かを、すぐに引き出せる預金に備えておく
- ボーナスなど臨時の収入は、受け取る前に配分を決める
- 投資は、しばらく使わないお金で、自分で確かめた方法で行う
- 年に一度、お金の土台を見直す日を決めておく
まずは「今月は、お金の流れを把握することだけに集中する」と決めてみてください。一番下の段がしっかりすれば、その上に何を積めばよいかは、自然と見えてきます。焦らず一段ずつ進めることが、結果的にいちばんの近道です。把握ができたら、次の月は先に貯める仕組み、その次は備えと、一つずつ段を足していきましょう。
お金の失敗は、一つひとつはばらばらに見えても、多くの場合「順番」の問題でつながっています。把握する、先に貯める、備える、増やす。この順番で土台を積み上げていけば、失敗をくり返さずに、少しずつお金の安心を育てていくことができます。
お金の土台を整えたい人へ
サブスク管理・家計簿アプリ【マネーフォワードME (ミー)】
契約中のサブスクリプションを一覧で管理できるタイプです。見落としがちな支出を可視化する助けになります。口座やカードをまとめて連携すれば、土台の一番下の段である「お金の流れの把握」を、手間をかけずに始められます。
ライフプランニング相談・FP相談サービス【マネードクター】
将来のライフイベントを踏まえた資金計画を相談できるタイプです。無理のない積み立ての設定の参考になります。第三者の視点を入れることで、自分の家計のどの段が抜けているのかに気づけることもあります。
まなぶ
みらいお金の土台づくりでつまずくと、目についた対策から手をつけたり、人と比べて焦ったりしがちです。けれど本当に大切なのは、「把握する・先に貯める・備える・増やす」の順番で、一段ずつ土台を積み上げることです。お金の流れを知り、先に貯め、備えを持ち、しばらく使わないお金だけを自分のペースで増やす。その順番が、お金の不安を減らし、失敗をくり返さないための近道になります。
お金の土台をつくるときには、次のような失敗も起こりやすくなります。具体的なケースは、それぞれの記事で詳しく紹介しています。
お金を増やし始める前に知っておきたい失敗のポイントについては、NISAで失敗する人の特徴でもまとめています。あわせて読んでみてください。

