結論

介護と仕事の両立で失敗する人の多くは、「家族のことだから、自分でなんとかしなければ」「職場に話すと、迷惑をかけてしまう」と考えて、会社にも、地域の相談窓口にも頼らないまま、仕事と介護を一人で抱えこんでしまう人です。介護は、いつまで続くのかが分かりにくく、少しずつ負担が大きくなっていきます。一人で抱えこむほど、心も体も疲れ、仕事を続けることそのものが難しくなってしまいます。介護と仕事の両立は「一人でがんばること」ではなく、「早めに話して、使える制度と支えを組み合わせること」です。この記事では、まなぶが聞いたAさんの失敗ストーリーをもとに、介護と仕事の両立で失敗しない方法を解説します。

1失敗ストーリー

有給休暇を使いきるまで、誰にも話さなかったAさんの話

会社のビルの裏口で、お弁当を届けに来たAさんから、介護と仕事の両立の失敗談を聞くまなぶのイラスト

まなぶの会社には、昼休みの前になると、近くの仕出し店がお弁当を届けに来ます。その配達を担当しているのが、Aさん(40代女性)です。まなぶはお弁当を注文する日に顔を合わせるうちに、ときどき世間話をするようになっていました。ある日、配達が終わったあと、Aさんは「実は、この仕事を辞めかけたことがあってね」と話し始めました。(登場する人物は、よくある失敗をもとに編集部が再現したものです)

3年前、Aさんの母親が転んで足をけがし、それをきっかけに、一人での生活が難しくなりました。Aさんは、仕出し店の配達と、お店の事務の仕事をしていました。「お店も人が少ないし、家族のことで迷惑はかけられない」。そう考えたAさんは、職場には何も話さず、朝と夜に実家へ通い、母親の食事や通院の付き添いをするようになりました。通院の日は、有給休暇を使って休みました。

半年ほどたったころ、Aさんの有給休暇は、ほとんど残っていませんでした。朝早くから実家に寄ってから出勤し、夜は遅くまで母親の世話をする毎日で、配達の途中に、ぼんやりして道をまちがえることも増えていました。ある日、配達の時間に大きく遅れてしまい、店長に呼ばれました。「最近、疲れているみたいだけど、何かあった?」。Aさんは、そのとき初めて、母親の介護のことを職場に話したのです。

店長は驚いた顔で言いました。「どうして、もっと早く言ってくれなかったの。介護のための休みの制度もあるし、配達の時間も調整できたのに」。そのあと、店長のすすめで地域の相談窓口に行くと、母親が使える介護のサービスがいくつもあることが分かりました。「一人でがんばることが、家族のためだと思っていたの。でも、あのまま続けていたら、仕事も、母のことも、両方だめになっていたと思う」。Aさんは、空になった配達の箱を台車に積みながら、そう話してくれました。

2原因分析

介護と仕事の両立で失敗する5つの原因

1

職場に、話すのが遅すぎた

家族の介護のことは、職場に話しにくいと感じる人が多いものです。けれども、話さないままでいると、職場は事情を知らず、仕事の調整もできません。介護が始まりそうだと分かったら、できるだけ早く、上司に「家族の介護が始まりそうで、相談させてください」と伝えることが大切です。会社には、介護に直面したことを申し出た人に、使える制度を知らせ、どう働きたいかを確かめることが求められています。早めに話すことは、迷惑ではなく、両立のための第一歩です。

2

介護のための制度を、知らなかった

Aさんは、通院の付き添いのたびに、有給休暇を使っていました。けれども、介護のための休みには、別の制度があります。対象の家族1人につき通算93日まで、3回に分けて取れる「介護休業」や、年5日まで(対象の家族が2人以上なら10日まで)取れる「介護休暇」などです。ほかにも、残業を減らしたり、働く時間を短くしたりする仕組みが使える場合があります。制度の中身は会社の規程でも決まっているため、人事担当に確かめておきましょう。

3

地域の相談窓口を、使っていなかった

介護のことを、家族だけで抱えこむ必要はありません。住んでいる地域には、高齢の人の介護について相談できる窓口(地域包括支援センター)があります。介護が始まったら、まず地域の相談窓口に連絡し、使える介護のサービスや手続きを教えてもらうと、家族が直接世話をする時間を減らせることがあります。介護休業は、家族が自分で介護をするための休みというより、介護の体制を整えるための時間として使うのがよいとされています。

4

一人で、すべてを担おうとしていた

「自分がやらなければ」と考えて、介護も仕事もすべてを一人で引き受けると、いつか限界が来ます。きょうだいや親戚、介護のサービス、職場の仲間など、頼れる人や仕組みを書き出して、役割を分けるようにしましょう。通院の付き添いは月に一度きょうだいに頼む、平日の昼はサービスを使う、など小さく分けるだけでも、負担はずいぶん軽くなります。頼ることは、手を抜くことではなく、長く続けるための工夫です。

5

自分の疲れを、後回しにしていた

介護と仕事を両立していると、自分の休む時間は、いちばん後回しになりがちです。Aさんも、疲れから配達の道をまちがえるほどになっていました。疲れがたまると、仕事のミスが増えたり、体調を崩したりして、介護も仕事も続けられなくなります。週に一度は、自分が休むための時間を予定に入れましょう。介護をする家族のための相談窓口や、介護をしている人どうしの集まりもあります。つらいと感じたら、一人で抱えずに、早めに誰かに話すことが大切です。自分の体と心を守ることも、両立のための大切な仕事の一つです。

3図解

一人で抱えこむ人と、制度と支えを組み合わせる人の違い

⚠ 介護と仕事の両立で失敗する人のパターン
迷惑をかけたくないと、職場に介護のことを話さない
↓
制度や地域の窓口を知らず、有給休暇で乗り切ろうとする
↓
介護も仕事もすべて一人で担い、自分の休みを後回しにする
↓
心も体も疲れきり、仕事も介護も続けるのが難しくなる
◎ 介護と仕事を上手に両立する人のパターン
介護が始まりそうだと分かったら、早めに上司に相談する
↓
会社の制度を確かめ、地域の相談窓口でサービスを知る
↓
頼れる人や仕組みで役割を分け、自分の休む時間も守る
↓
無理なく仕事を続けながら、家族を支えられるようになる
4解決策

介護と仕事の両立で失敗しないためのチェックリスト

家族の介護が始まりそうだと感じたら、次の項目を確かめてみてください。介護は、準備が早いほど、選べる道が多くなります。

  • 上司に、家族の介護が始まりそうだと早めに相談した
  • 会社の介護休業・介護休暇などの制度を、人事担当に確かめた
  • 地域の相談窓口(地域包括支援センター)に連絡した
  • 使える介護のサービスと、その手続きを確かめた
  • きょうだいや親戚など、頼れる人と役割を分けた
  • 仕事の時間や担当の調整について、職場と話し合った
  • 週に一度、自分が休むための時間を予定に入れている

Aさんは、店長と話し合って、配達の時間を朝の遅い時間からに変えてもらい、通院の日は介護休暇を使うようにしました。地域の相談窓口のすすめで、母親は週に3日、昼間に通うサービスを使うようになり、Aさんが実家に寄るのは夜だけになりました。遠くに住む弟とも話し合い、月に一度は弟が通院に付き添うことになりました。日曜の午前中は、自分のための時間にしています。「話すのが怖かったけれど、話したら、思っていたよりずっと多くの人が手を貸してくれたの」。Aさんは、そう言って、少し晴れやかな顔で台車を押していきました。

※介護休業や介護休暇などの制度の内容、介護のサービスの使い方は、法律や会社の規程、住んでいる地域によって異なり、見直されることもあります。この記事は2026年11月時点の一般的な内容です。詳しくは勤務先の人事担当や、お住まいの市区町村の窓口で確認してください。
5おすすめサービス

仕事の失敗を減らすために

介護と仕事を両立するには、仕事と介護の予定を一緒に見える化することと、職場で仕事の分担や共有のしかたを整えておくことが役立ちます。

A
時間管理を効率化したい人向け

タイムマネジメント・スケジュール管理ツール【todoist】

仕事の予定と、通院や手続きなどの介護の予定を、まとめて一覧にできるタイプです。家族と共有すれば、誰がいつ何を担うかが分かりやすくなり、一人で抱えこむことを防げます。

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B
業務プロセスから見直したい人向け

業務プロセス整理・DX相談サービス【Chatwork DX相談窓口】

職場の仕事の流れや、情報の共有のしかたを整理することから支援してくれるタイプです。仕事を一人に集めすぎない仕組みをつくれば、介護などで急に休む人がいても、周りが代わりに動きやすくなります。

相談してみる

まなぶまなぶ
迷惑をかけたくなくて、有給休暇を使いきるまで、誰にも話していなかったなんて…。
みらいみらい
介護と仕事の両立は、一人でがんばることではなく、早めに話して、使える制度と支えを組み合わせることです。上司に相談して会社の制度を確かめ、地域の相談窓口にも連絡してみましょう。自分の休む時間も、忘れずに守ってくださいね。
まなぶまなぶ
頼ることは、手を抜くことじゃなくて、長く続けるための工夫なんですね。

介護と仕事の両立で失敗する原因は、家族のことだから自分でなんとかしなければと考え、職場にも地域の窓口にも頼らないまま、一人で抱えこんでしまうことです。早めに上司に話し、制度と地域のサービスを知り、頼れる人と役割を分け、自分の休む時間も守る。それだけで、仕事を続けながら、家族を支えていくことができます。働き方で失敗しないための考え方は、働き方の失敗から学ぶでまとめています。

働き方については、男性の育休で後悔する理由や昼休みを取らずに後悔する理由もあわせて読んでみてください。

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