結論

社員のAI利用を禁止しすぎて後悔する人の多くは、情報漏えいが心配で「AIは全面禁止」と決め、社員が安全に使える道を用意しないまま、使いたい気持ちだけを抑えつけてしまう人です。会社の情報を守るために、AIの使い方を慎重に決めることは大切です。けれど、使える道がまったくないと、社員は会社の目の届かないところでAIを使い始め、かえって危ない状態になることがあります。この記事では、まなぶが聞いたAさんの失敗ストーリーをもとに、社員のAI利用を禁止しすぎて後悔する理由と、安全に使える仕組みのつくり方を解説します。

1失敗ストーリー

全面禁止にしたら、私物のスマホでAIが使われていた

陶芸教室の作業台で道具を片付けながら、同じクラスのAさんからAIの利用ルールの失敗の話を聞くまなぶのイラスト

この話は、まなぶが月に2回通っている陶芸教室で、同じクラスのAさんから聞いたものです。ろくろを回し終えて、作業台で道具を片付けていたとき、まなぶが「会社でAIを使っていいかどうか、ルールが難しいですよね」と話すと、Aさんは「私、そのルールづくりで大きな失敗をしたの」と、手についた土を落としながら話してくれました。

Aさんは、社員300人ほどの機械メーカーで、情報システムの担当を長く務めている40代です。去年、ほかの会社でAIを使ったことによる情報の流出がニュースになったとき、Aさんの会社でも心配の声が上がりました。Aさんは、情報を守ることを何より大切に考え、「社内のパソコンからAIのサービスにはつながらないようにし、仕事でのAIの利用は全面的に禁止する」というルールをつくりました。役員にも「これで安心です」と報告しました。社内からは「厳しすぎるのでは」という声も少し出ましたが、Aさんは「情報を守るためだから」と、詳しい説明はしませんでした。

半年ほどたったころ、ある部署の課長から相談がありました。「部下が、取引先の見積もりの内容を、私物のスマートフォンで無料のAIに入れていたことが分かった」。Aさんが聞き取りをしてみると、会社のパソコンでは使えないため、私物のスマートフォンで、こっそりAIを使っている社員が何人もいたことが分かりました。会社が認めたツールではないため、入力した情報がどう扱われるのかも、誰も把握していませんでした。禁止したはずのAIが、いちばん危ない形で使われていたのです。

さらに、若手の社員からは、こんな声も届きました。「取引先はAIを使って資料をすぐに出してくるのに、うちだけ手作業で時間がかかる。禁止の理由も、いつまで禁止なのかも分からない」。「情報を守るつもりで禁止したのに、目の届かないところで使われて、かえって守れなくなっていた」と、Aさんは手を止めて振り返っていました。

Aさんはその後、経営陣と相談して、全面禁止をやめ、会社として安全に使えるAIのツールを選んで、使い方のルールと一緒に社員に提供することにしたそうです。話を聞いたまなぶは、自分の会社に認められたツールがあることの意味を、あらためて考えていました。ルールは、社員を縛るためのものではなく、安心して使える範囲を示すためのものなのだと感じたのです。

2原因分析

社員のAI利用を禁止しすぎて後悔する理由

1

全面禁止は、使っているのを見えなくするだけ

AIの便利さを知った社員は、仕事で使いたいと考えます。会社がすべてを禁止すると、使いたい気持ちは消えず、会社の目の届かないところで使われるようになります。禁止しすぎると、使われていること自体が見えなくなり、情報の扱いを確かめることもできなくなります。守りたいなら、むしろ「どう使うか」を会社が決めて見えるようにすることが大切です。見えていれば、危ない使い方に早く気づき、すぐに手を打つことができます。

2

安全に使える道を、用意していない

「使ってはいけない」だけでは、社員は困ってしまいます。会社として情報の扱いを確かめたツールを用意し、「これなら使ってよい」という道を示すことが、情報を守るいちばんの近道です。入力してよい情報と、入れてはいけない情報を具体的に示しておけば、社員も迷わずに使えます。最初は使える部署や仕事を限って始め、様子を見ながら広げていくのも一つの方法です。

3

禁止の理由と、見直しの予定を伝えていない

理由も期限も分からない禁止は、社員の不満を生みます。なぜ禁止するのか、どんな条件がそろえば使えるようになるのか、いつ見直すのかを、社員に伝えることが大切です。理由が分かれば、社員も納得してルールを守りやすくなります。ルールを変えたときも、その理由をあわせて伝えるようにしましょう。

4

現場の声を聞かずに、ルールを決めている

情報を守る担当者だけでルールを決めると、現場で本当に必要な使い方が見落とされます。どの部署で、どんな仕事にAIを使いたいのかを聞いてから、ルールを決めましょう。現場の声を聞くことで、守るべきところと、認めてよいところの線引きがはっきりします。取引先とのやりとりが多い部署ほど、取引先との約束も踏まえて決める必要があります。

5

相談できる窓口がない

ルールがあっても、迷う場面は必ず出てきます。相談先がないと、社員は自分で判断するか、こっそり使うかを選ぶことになります。「これはAIに入れてもいいか」と気軽に聞ける窓口を用意すると、危ない使い方を早めに防げます。相談がたくさん来ることは、ルールが生きているしるしでもあります。よく来る相談は、ルールの説明に書き足していくと、迷う人が少しずつ減っていきます。

3図解

AI利用を禁止しすぎて後悔する会社と、安全に活用できる会社の違い

⚠ 社員のAI利用を禁止しすぎて後悔する会社のパターン
情報漏えいが心配で、AIを全面的に禁止する
↓
理由も見直しの予定も伝えず、使える道も用意しない
↓
社員が私物の端末などで、こっそりAIを使い始める
↓
使われていることが見えず、かえって情報を守れなくなる
◎ 社員がAIを安全に活用できる会社のパターン
現場で必要な使い方を聞き、守るべき情報を決める
↓
安全を確かめたツールと、使い方のルールを用意する
↓
理由と見直しの予定を伝え、相談できる窓口をつくる
↓
使い方が見える状態で、情報を守りながら活用できる
4解決策

社内のAI利用のルールを決める前のチェックリスト

AIの利用ルールは、情報を守ることと、社員が仕事に生かすことの両方を考えて決めることが大切です。次の項目を確かめてみてください。

  • 現場の部署に、AIを使いたい仕事を聞いた
  • 入力してよい情報と、入れてはいけない情報を具体的に決めた
  • 会社として安全を確かめたツールを用意した
  • 禁止や制限の理由と、見直しの予定を社員に伝えた
  • 迷ったときに相談できる窓口をつくった
  • 私物の端末での仕事の情報の扱いについても、ルールを決めた

Aさんの会社では今、会社が選んだAIのツールを、申請した部署から順番に使えるようにしています。入力してよい情報の一覧を配り、迷ったときに聞ける窓口も情報システムの担当につくったそうです。私物のスマートフォンでこっそり使う人は、ほとんどいなくなりました。「守るために必要だったのは、禁止の壁じゃなくて、安全に使える道だった」。陶芸教室の窓から差し込む夕日の中で、Aさんはそう言ってほほえみました。

※社内のAIの利用ルールを決めるときは、情報の扱いについて、法務やセキュリティの担当者など専門の立場の人と一緒に検討しましょう。社員として働く人は、まず自分の会社のルールを確認することが大切です。
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会社で安全にAIを使うには、ツールの選び方と、ルールや権限の決め方まで含めて考えることが大切です。

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まなぶまなぶ
Aさんの会社では、AIを全面禁止にしたら、社員が私物のスマホでこっそりAIを使っていたそうです…。
みらいみらい
禁止しすぎると、使っていることが見えなくなってしまいます。安全に使えるツールとルールを用意して、相談できる窓口をつくりましょう。
まなぶまなぶ
守るために必要なのは、禁止の壁じゃなくて、安全に使える道なんですね。

社員のAI利用を禁止しすぎて後悔する原因は、全面禁止で使っていることを見えなくし、安全に使える道も、禁止の理由も、相談できる窓口も用意しないことです。現場の声を聞き、安全を確かめたツールとルールを用意し、理由と見直しの予定を伝える。それだけで、情報を守りながらAIを活用できます。組織やチームでAIを導入するときに失敗しないための考え方は、組織でのAI導入の失敗から学ぶでまとめています。

組織・チームのAI導入については、小さな会社でAIを導入するときに失敗しない方法や取引先とAIの使い方を決めずに失敗した話もあわせて読んでみてください。

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