結論

退職後の手続きで失敗する人の多くは、「転職先が決まっているから、あとは新しい会社が何とかしてくれる」と考え、前の会社から受け取る書類や、自分でしなければならない手続きを確認しないまま退職してしまう人です。源泉徴収票の受け取り、健康保険証などの返却、企業型確定拠出年金の移換。どれも退職した本人が動かないと進まず、放っておくと手間や損につながります。この記事では、まなぶの失敗ストーリーをもとに、退職後の手続きで失敗した原因と、退職前に確認しておきたいことを解説します。

1失敗ストーリー

入社初日に聞かれた「前の会社の書類は?」

春の通勤電車でスマホのニュースを読み、確定拠出年金の移換を忘れていたことに気づいて驚くまなぶのイラスト

2年前の転職で、まなぶは9月末に前の会社を退職し、12月1日に新しい会社に入社しました。退職のときは引き継ぎに追われ、最終出社日には総務の担当者から何枚かの書類の説明を受けましたが、「あとで読めばいいや」と封筒ごとかばんにしまいこみました。

新しい会社の入社初日。オリエンテーションの会議室で、人事の担当者が言いました。「年末調整がありますので、前の会社の源泉徴収票を今月中に提出してください。それから、年金手帳か基礎年金番号が分かるものと、前の会社で確定拠出年金に入っていた方は、その資料もお願いします」。まなぶのペンが止まりました。源泉徴収票を受け取った覚えがありません。

家に帰って封筒を開けると、源泉徴収票は入っていませんでした。「後日郵送します」と書かれたメモがあり、しかもその郵送先は、引っ越す前の住所でした。まなぶは新しい会社に通いやすいように11月に引っ越していたのに、前の会社にはその住所を伝えていなかったのです。慌てて前の会社に電話をかけ、再発行をお願いして、なんとか年末調整に間に合わせることができました。さらに、前の会社の健康保険証も、返さないまま財布の中に入っていたことに気づきました。

本当の失敗に気づいたのは、翌年の春が過ぎたころでした。通勤電車の中でなにげなくニュースを読んでいると、「転職時の確定拠出年金、手続きを忘れると自動移換に」という記事が目に入りました。前の会社では企業型の確定拠出年金に入っていて、毎月の掛金で投資信託を積み立てていたはずです。退職してから一度も、その手続きをした覚えがありませんでした。

調べてみると、手続きの期限はすでに過ぎていました。積み立ててきた資産は自動移換され、運用されないまま、管理の手数料が差し引かれる状態になっていたのです。「転職先が決まっていれば大丈夫」は、ただの思い込みだった。まなぶは、退職するときに受け取った書類をきちんと読まなかったことを、心から後悔しました。

2原因分析

退職後の手続きで失敗した原因

1

退職時に受け取る書類を確認していなかった

退職するときは、源泉徴収票、雇用保険被保険者証、年金手帳や基礎年金番号通知書など、前の会社から受け取る書類がいくつかあります。源泉徴収票は退職後に郵送されることも多いため、何を、いつ、どこに送ってもらうのかを、最終出社日までに確認しておくことが大切です。まなぶのように引っ越しの予定がある場合は、送り先の住所も必ず伝えておきましょう。源泉徴収票がないと、転職先での年末調整や自分での確定申告に困ることになります。年末調整の書類でつまずかないためのポイントは、年末調整で失敗する人の特徴5選で紹介しています。

2

会社に返すものを返していなかった

退職するときは、受け取るものだけでなく、会社に返すものもあります。社員証、パソコンなどの貸与品、名刺、そして会社の健康保険の保険証や資格確認書などです。退職日の翌日からは、前の会社の健康保険は使えません。誤って使ってしまうと、あとで医療費の精算が必要になることもあります。返却するものは一覧にして、最終出社日にまとめて返すのが確実です。

3

企業型確定拠出年金の移換を知らなかった

前の会社で企業型確定拠出年金に入っていた場合、退職すると、その資産を転職先の企業型確定拠出年金や、個人型確定拠出年金(iDeCo)などに移す手続きが必要です。退職の翌日が属する月の翌月から6か月以内に手続きをしないと、資産は国民年金基金連合会に自動で移されます。自動移換されると、資産は運用されず、管理の手数料がかかり続けます。さらに、自動移換されている期間は、将来受け取るための加入期間に数えられないため、受け取れる年齢が遅くなることもあります。

4

「転職先が何とかしてくれる」と思い込んでいた

転職先の人事担当者は、入社の手続きは案内してくれますが、前の会社でしか手に入らない書類は用意できません。確定拠出年金の移換も、転職先に制度があるかどうかで手続き先が変わり、最終的には本人が動く必要があります。前の会社と新しい会社の間にある手続きは、自分で橋渡しをするものだと考えておきましょう。

5

空白期間の手続きをまとめて把握していなかった

まなぶのように、退職から入社まで期間があいた場合は、健康保険や年金の切り替え、住民税の支払いなど、さらに手続きが増えます。一つひとつは難しくなくても、まとめて把握していないと、どこかで抜けが出ます。空白期間に届いた住民税の納付書で困った話は、退職した年の住民税で失敗した話で紹介しています。

3図解

退職後の手続きで失敗する人と、スムーズに進む人の違い

⚠ 退職後の手続きで失敗する人のパターン
最終出社日に受け取った書類を、読まずにしまいこむ
↓
源泉徴収票の送り先や、返却するものを確認しない
↓
確定拠出年金の移換を知らないまま期限が過ぎる
↓
書類の取り寄せに追われ、資産は運用されずに手数料がかかる
◎ 退職後の手続きがスムーズに進む人のパターン
退職前に、受け取る書類と返すものの一覧を作る
↓
源泉徴収票の送り先と、届く時期を総務に確認する
↓
確定拠出年金の移換先を決め、入社後すぐに手続きする
↓
入社手続きも年末調整も滞りなく進み、資産も守られる
4解決策

退職前に確認しておきたい手続きのチェックリスト

退職後の手続きは、退職前に一覧にしておけば、ほとんどの失敗を防げます。最終出社日の1週間前までに、次の項目を確認しておきましょう。

  • 源泉徴収票を受け取る方法(手渡しか郵送か)と、送り先の住所を確認した
  • 雇用保険被保険者証、年金手帳や基礎年金番号が分かる書類の有無を確認した
  • 社員証・貸与品・健康保険の保険証や資格確認書など、返却するものを一覧にした
  • 企業型確定拠出年金に入っているかを確認し、移換先を調べた
  • 空白期間がある場合、健康保険と年金の切り替えの手続きを調べた
  • 転職先の人事担当者に、入社時に提出する書類を事前に確認した

確定拠出年金の移換先は、転職先に企業型確定拠出年金がある場合はそちらへ、ない場合はiDeCoなどへ移すのが一般的です。iDeCoに移す場合は、どの金融機関で口座を開くかによって手数料や選べる商品が変わります。すでに自動移換されてしまった場合も、手続きをすれば移換先で運用を再開できます。まなぶもその後、iDeCoの口座を開いて資産を移し、運用を再開しました。iDeCoの使い方でつまずきやすいポイントは、iDeCoで後悔する理由でも紹介しています。

※確定拠出年金の移換先や手続きの方法は、前の会社・転職先の制度や、ご自身の状況によって異なります。手続きの詳細は、前の会社の担当部署、加入していた確定拠出年金の運営管理機関、転職先の人事担当者などで確認してください。
5おすすめサービス

退職後のお金の手続きで迷ったときは

退職後の手続きの中でも、確定拠出年金の移換や空白期間の保険・年金は、お金の判断が関わる部分です。比較できる場や、相談できる先を持っておくと安心です。

A
手数料を比較して選びたい人向け

iDeCo口座開設サービス(手数料比較)【iDeCoナビ】

金融機関ごとの手数料や商品ラインナップを比較できるタイプです。転職先に企業型確定拠出年金がなく、iDeCoに資産を移す場合の金融機関選びに役立ちます。数十年単位で続ける制度だからこそ、最初の選択が結果に大きく影響します。

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B
ライフプラン全体を相談したい人向け

ライフプランニング相談・FP相談サービス【マネードクター】

将来のライフイベントを踏まえた資金計画を相談できるタイプです。転職にともなう年金や保険の切り替えについても、第三者の視点で整理できます。転職や住宅購入など、具体的なイベントを踏まえたアドバイスをもらえることもあります。

相談してみる

まなぶまなぶ
転職先が決まってるから大丈夫だと思ってたのに、確定拠出年金がずっと運用されないままだったなんて…。
みらいみらい
前の会社と新しい会社の間の手続きは、自分で橋渡しするものです。退職前に一覧を作っておけば、慌てずに済みますよ。
まなぶまなぶ
次に転職するときは、受け取る書類と返すもの、移換の手続きを一覧にしてから辞めます!

退職後の手続きの失敗は、退職前に「受け取るもの」「返すもの」「自分でする手続き」を一覧にしておくだけで、ほとんど防げます。特に確定拠出年金の移換は期限があり、放っておくと運用が止まって手数料がかかり続けます。内定から退職までの流れ全体で失敗しないための考え方は、内定から退職までの失敗から学ぶでまとめています。

転職そのもので後悔しないためのポイントは、転職して後悔した人の特徴7選もあわせて読んでみてください。

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