副業から独立して失敗した話
副業から独立して失敗する人は、「副業でこれだけ稼げたのだから、独立すればもっと稼げる」と考え、会社員という安全網が外れたあとの条件で試算していないことが少なくありません。副業の収入は、本業の給料や会社の保険に支えられていたからこそ成り立っていた面もあります。独立の判断は、「副業の収入」ではなく「独立後に手元に残るお金」で行う。取引先の数、自分で払うことになる保険料や税金、生活費の備え。その試算こそが、勢いだけの独立を防ぐ一番の準備です。
副業の月収25万円を信じて独立した友人の1年
ある金曜日の夜、まなぶは大学時代の友人のAさんに誘われ、駅前の居酒屋のカウンター席に並んで座りました。Aさんは30代前半で、以前は広告会社に勤めながら、副業でイラストの仕事を請け負っていました。そして1年前、「副業の収入が本業を超えたから」と会社を辞め、イラストレーターとして独立していました。
独立を決めたころ、Aさんの副業の収入は月25万円ほどありました。そのうち7割は、副業を始めたころから付き合いのある1社の出版社からの仕事でした。「独立すれば作業に使える時間が倍になるから、収入も倍になるはず」。Aさんはそう考えて、退職届を出したといいます。
ところが、独立して半年ほどたったころ、その出版社の担当者が異動になり、新しい担当者のもとで外部への依頼が大幅に減りました。収入の7割を占めていた仕事が、ほとんどなくなってしまったのです。新しい取引先を探そうにも、これまでは1社の仕事だけで手いっぱいで、営業の経験もほとんどありませんでした。
追い打ちをかけたのは、会社員のころには意識していなかった支払いでした。会社の健康保険や厚生年金から、自分で手続きする国民健康保険や国民年金に切り替わり、保険料は自分で全額を払わなければなりません。さらに、退職した翌年に届く住民税の通知や、確定申告で納める税金もありました。副業のころの「月25万円」は、本業の給料があったからこそ、そのまま自由に使えるお金に見えていただけだったのです。
「独立して1年で、会社員時代の貯金はほとんどなくなっちゃった。今は昔の同僚に頼んで、派遣の仕事も始めたんだ」。Aさんは、グラスを持ったまま静かにそう話しました。「副業で稼げた金額だけを見て、独立したあとの生活を一度も計算していなかったんだよね」
まなぶは、自分も副業の収入が増えたら、同じように考えてしまうかもしれないと思いました。副業でうまくいっていることと、独立して生活していけることは、まったく別の話なのだと、Aさんの言葉から痛いほど伝わってきました。
副業から独立して失敗した理由
収入の大半を、1つの取引先に頼っていた
Aさんの収入の7割は、1社からの仕事でした。副業のうちは、それでも本業の給料があるので困りません。けれど、独立したあとに大きな取引先を失えば、生活そのものが揺らぎます。独立する前に、1社に頼る割合を減らし、複数の取引先から仕事を受けられる状態を作っておくことが大切です。目安として、1社からの収入が全体の半分を超えているなら、まだ独立の準備が整っていないと考えるほうが安全です。
「時間が倍になれば、収入も倍になる」と考えていた
独立すれば、たしかに作業に使える時間は増えます。けれど、その時間に見合う仕事が自然に増えるとは限りません。仕事の量は、取引先の数や依頼の頻度で決まるからです。さらに、独立すると営業や請求、経理などの作業も自分でこなす必要があり、作品づくりに使える時間は思ったほど増えません。増えた時間で、どこから、どれだけの仕事を受けるのかを、具体的に見込んでおくことが欠かせません。
会社員時代に会社が負担していたお金を、計算に入れていなかった
会社員のうちは、健康保険や厚生年金の保険料の一部を会社が負担してくれています。独立すると、こうした保険料や税金を自分で手続きし、自分で払うことになります。Aさんは、副業の収入をそのまま独立後の収入として考えていたため、手元に残るお金を大きく見誤っていました。独立後に自分で払うことになる保険料や税金を差し引いて、「手元に残るお金」で試算することが大切です。分からない点は、早めに専門家や役所の窓口で確認しておきましょう。
収入が減ったときの生活費の備えがなかった
独立したばかりのころは、収入が安定しないのが当たり前です。それなのに、Aさんには収入が途絶えたときに生活を支える備えが十分ではありませんでした。取引先を失ってから新しい仕事が軌道に乗るまでには、数か月かかることも珍しくありません。独立する前に、少なくとも半年から1年分の生活費を確保しておくことで、焦って条件の悪い仕事を受けたり、生活のために独立をあきらめたりすることを防げます。
営業や新しい取引先づくりを、副業のうちに試していなかった
副業のころのAさんは、紹介で始まった仕事だけで手いっぱいで、自分から新しいお客さまを探した経験がほとんどありませんでした。独立すると、仕事を取ってくることも自分の大切な仕事になります。副業のうちに、作品をまとめたページを作る、新しい取引先に提案してみるなど、営業の練習をしておけば、独立後の不安はずっと小さくなります。本業という安全網があるうちに試しておくことが、独立後の大きな支えになります。
独立で失敗する人と、独立を成功に近づける人の違い
2つの流れの違いは、仕事の腕前ではありません。独立を「副業が大きくなったもの」と考えるか、「会社員の安全網なしで生活する新しい働き方」と考えるかの違いです。
副業から独立して長く続けている人の多くは、独立する前の準備に時間をかけています。取引先を増やし、営業を試し、独立後のお金を計算し、生活費の備えを作る。本業という支えがあるうちにこうした準備を進めておくことで、独立してからの不安や失敗を大きく減らすことができるのです。
副業から独立する前にチェックしたいこと
- 1つの取引先からの収入が、全体の半分を超えていないかを確かめる
- 独立後に自分で払う保険料や税金を調べ、手元に残るお金を試算する
- 少なくとも半年から1年分の生活費を、独立前に確保しておく
- 副業のうちに、新しい取引先への提案や営業を試してみる
- 独立後の1か月の時間の使い方を、営業や経理も含めて書き出す
- 収入が大きく減った場合に、どうするかをあらかじめ決めておく
まずは「今の副業の収入から、独立後に自分で払うことになるお金を差し引いて計算してみる」ことから始めてみてください。その金額で今の生活が続けられるかどうかを確かめるだけで、独立のタイミングや、今から準備すべきことが見えてきます。
副業から独立することは、自分の力で働き方を選ぶ、とても前向きな挑戦です。だからこそ、勢いだけで踏み出すのではなく、会社員という安全網があるうちに準備を重ねておくことが大切です。その準備が、独立という挑戦を、長く続けられる働き方に変えてくれます。
副業からの独立を考えている人へ
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自分のスキルの適正な価格帯や、単価交渉の進め方について相談できるタイプです。一人で悩まず、客観的な視点を取り入れられます。確定申告など税務面の基本的な相談ができるサービスもあり、独立後のお金の見通しを立てたい人にも役立ちます。
まなぶ
みらい副業から独立して失敗する人は、副業で稼げた金額だけを見て、会社員という安全網が外れたあとの生活を試算しないまま踏み出してしまいがちです。1つの取引先に頼る割合を減らし、自分で払う保険料や税金を差し引いて手元に残るお金を計算し、生活費の備えを作り、副業のうちに営業を試しておく。その準備が、独立を勢いだけの賭けではなく、長く続けられる働き方に変えてくれます。
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