引き止めに応じて残留し後悔する理由
引き止めに応じて会社に残り、後悔する人の多くは、「給料を上げる」「希望の部署に異動させる」という言葉に心を動かされ、転職を考えた本当の理由が解決するのかを確かめないまま、その場で残ると決めてしまう人です。引き止めの条件が口約束のままだったり、そもそも辞めたい理由が待遇とは別のところにあったりすると、結局また同じ悩みを抱え、内定先を手放したことだけが残ります。この記事では、まなぶの失敗ストーリーをもとに、引き止めに応じて後悔する理由と、残るか辞めるかを冷静に判断するための方法を解説します。
「来期から給料を上げる」を信じた1年
まなぶが初めて転職を考えたのは、入社5年目のことでした。毎日の残業が続き、仕事の進め方を変えたいと提案しても、上司からは「前からこのやり方だから」と言われるばかり。もっと自分の意見が活かせる環境で働きたいと思い、転職活動を始めました。3か月後、ある会社から内定をもらい、まなぶは上司に退職を切り出しました。
会議室で退職の意思を伝えると、上司の表情が変わりました。「君には期待していたんだ。来期から給料を上げるし、来年の春には企画の部署にも異動できるように話をつける。だから残ってくれないか」。部長まで出てきて、同じように引き止められました。まなぶは、内定通知書の入ったクリアファイルを握りしめたまま、気がつけば「分かりました」とうなずいていました。
「ここまで言ってもらえるなら、残ってもいいかもしれない」。上司や部長に必要とされているという実感が、なんだかうれしくもありました。その日の夕方、まなぶは内定先に電話をかけ、辞退を伝えました。担当者は「残念です」とだけ言い、電話は短く終わりました。
ところが、それから1年がたっても、状況はほとんど変わりませんでした。給料は上がりましたが、月に数千円ほど。約束されたはずの異動の話は、「今は人が足りないから」と先送りにされたままです。残業も、仕事の進め方も、以前と同じ。それどころか、一度辞めようとしたことが知られて、重要な仕事を任されにくくなったようにも感じました。
ある夜、誰もいなくなったオフィスで残業をしていたまなぶは、ふと壁の時計を見上げました。「自分が辞めたかったのは、給料のせいじゃなかったのに」。転職を考えた本当の理由を、あのとき会議室で確かめなかったことを、まなぶは深く後悔しました。その翌月、まなぶはもう一度転職活動を始めることになったのです。
引き止めに応じて残留し後悔する理由
転職を考えた本当の理由と、引き止めの条件がずれている
引き止めのときに出てくるのは、昇給や昇格、異動などの条件が多いものです。しかし、転職を考えた理由が、仕事の進め方、社風、人間関係、成長できる環境など、待遇とは別のところにある場合、給料が少し上がっても根本の悩みは解決しません。引き止めの言葉を聞いたら、まず「自分はなぜ辞めたいと思ったのか」に立ち返り、その条件で本当に解決するのかを考えることが大切です。
引き止めの条件が口約束のままになっている
「来期から給料を上げる」「異動できるように話をつける」といった約束は、その場の上司の言葉だけでは実現しないことがあります。会社の評価制度や人事の都合で、結局は先送りになることも少なくありません。いつ、何が、どう変わるのかが書面などで確認できない条件は、あくまで「可能性」にすぎないと考えておきましょう。具体的な時期や内容を確認せずに残ると、まなぶのように1年たっても何も変わらない、ということが起こります。
その場の空気に流されて即答してしまう
上司や部長から熱心に引き止められると、断りにくい空気になります。「期待している」と言われれば、うれしい気持ちも生まれます。しかし、その場で答える必要はありません。「ありがとうございます。一度持ち帰って考えさせてください」と伝え、冷静に判断する時間を取ることが大切です。内定先の回答期限があるなら、それも正直に伝えて、いつまでに答えるかを決めておきましょう。引き止めへの備えや、退職の伝え方そのものについては、退職交渉で後悔する理由でも紹介しています。
一度辞めようとした事実の影響を考えていない
引き止めに応じて残った場合でも、「一度辞めようとした人」という見方が社内に残ることがあります。大きな仕事を任されにくくなったり、評価の場面で影響があったりと、本人が思っている以上に居心地が変わることもあります。もちろん、そうならない職場もありますが、残ったあとの働き方まで想像したうえで判断することが大切です。また、次に本当に辞めようとしたとき、二度目の引き止めは一度目よりも気まずいものになりがちです。
内定を辞退することの重さを軽く見ている
内定先は、時間をかけて選考をし、受け入れの準備を始めています。一度辞退した会社に、あとから再び応募しても、同じように選んでもらえるとは限りません。内定を手放すことは、その会社で働くという選択肢そのものを手放すことです。内定の辞退の伝え方で気をつけたいことは、内定辞退で失敗する人の特徴5選で紹介しています。
引き止めで後悔する人と、納得して決められる人の違い
引き止めにあったときに後悔しないためのチェックリスト
引き止めにあうこと自体は、会社から必要とされている証拠でもあります。大切なのは、うれしさや申し訳なさで判断せず、自分の基準で決めることです。退職を伝える前と、引き止めにあったときに、次の項目を確認しましょう。
- 転職を考えた理由を、優先順位をつけて3つ書き出した
- 引き止めの条件で、そのうちどれが解決するかを確かめた
- 昇給・異動などの条件について、時期と内容を具体的に確認した
- その場で即答せず、持ち帰って考える時間を取った
- 残った場合の1年後の自分を、具体的に想像してみた
- 内定先の回答期限と、辞退した場合に失うものを確認した
引き止めの条件に納得できたなら、残る選択も決して間違いではありません。問題なのは「残ったこと」ではなく、「確かめずに決めたこと」です。転職したい理由が待遇だけで、具体的な昇給の時期と金額が確認できたなら、残るのも一つの答えです。一方、理由が仕事の中身や環境にあるなら、条件が多少良くなっても、同じ悩みはまた戻ってきます。迷ったときは、信頼できる第三者に話を聞いてもらうのも一つの方法です。
まなぶは2度目の転職活動では、退職を切り出す前に、転職したい理由をノートに書き出しておきました。上司から再び「もう少し考えてみないか」と言われたときも、ノートを思い出し、「お気持ちはありがたいのですが、今回は決めています」と落ち着いて伝えることができました。辞めると決めたあとの段取りで失敗しないためには、入社日の調整で失敗する人の特徴5選もあわせて確認しておくと安心です。
残るか辞めるかを冷静に判断するために
引き止めにあったとき、冷静な判断を助けてくれるのは、自分の市場価値やキャリアの方向性を客観的に知っておくことです。
市場価値から本当のキャリアパスを見出すサービス【ミイダス】
第三者視点で自分の強みや適性、これまでのキャリアの棚卸しを手伝ってもらえるタイプです。引き止めの条件が、自分の市場価値と比べてどうなのかを知る手がかりにもなります。自分では気づきにくい強みを言語化してもらえることも、こうしたサービスの価値の一つです。
年収1000万円以上の転職なら【プロフェッショナル転職サービス/ランスタッド】
これまでの経験や実績を、第三者と一緒に言語化していけるタイプです。転職したい本当の理由を整理しておくと、引き止めにあったときも、その条件で何が解決するのかを冷静に判断しやすくなります。転職を考え始める前の段階から利用できるサービスもあります。
まなぶ
みらい
まなぶ引き止めに応じて後悔するかどうかは、残るか辞めるかという結論よりも、その決め方で決まります。転職したい本当の理由を先に書き出し、引き止めの条件はその場で答えず、時期と内容を確かめてから判断する。そうすれば、どちらを選んでも納得できます。内定から退職までの流れ全体で失敗しないための考え方は、内定から退職までの失敗から学ぶでまとめています。
転職そのもので後悔しないためのポイントは、転職して後悔した人の特徴7選もあわせて読んでみてください。

