仕事のミスを隠して後悔する理由
仕事のミスを隠して後悔する人の多くは、「怒られたくない」「自分で直せば誰にも迷惑はかからない」と考えて、ミスに気づいても報告せずに一人で片づけようとする人です。けれども、隠しているあいだにもミスの影響は広がり、あとから見つかったときには、ミスそのものより「隠していたこと」が信頼を大きく損ないます。ミスは、小さいうちに、気づいた人が自分から伝えるほど、早く小さく片づきます。この記事では、まなぶが聞いたAさんの失敗ストーリーをもとに、仕事のミスを隠して後悔する理由と、ミスに気づいたときの伝え方を解説します。
見積もりの金額の誤りを、こっそり直そうとしたAさんの話
週末、まなぶは大学時代のアルバイト先の先輩だったAさん(30代女性)と、久しぶりにランチをしました。Aさんは、法人向けの研修を企画する会社で営業をしています。食後のコーヒーを前に、Aさんは「この夏、仕事でいちばん恥ずかしい思いをしたの」と話し始めました。(登場する人物は、よくある失敗をもとに編集部が再現したものです)
ある日の夕方、Aさんは取引先に送った研修の見積書を見直していて、血の気が引きました。金額の欄を何度見直しても、まちがいは変わりませんでした。参加人数をかける計算を一桁まちがえ、本来より10万円以上安い金額で送ってしまっていたのです。取引先からは、まだ返事が来ていません。
「上司に言ったら、きっと怒られる。先方から返事が来る前に、正しい見積書を送り直せば済むはず」。その日、上司は大きな契約の打ち合わせで忙しそうにしていて、声をかけにくい雰囲気でもありました。Aさんは誰にも言わず、その夜のうちに修正版を作りました。ところが、送り直す前に、取引先の担当者から電話がかかってきました。「先日のお見積もりで社内の承認が取れました。この金額で正式にお願いします」。
Aさんは、その場で「確認してご連絡します」と言うのがやっとでした。電話を切ったあと、慌てて上司に報告すると、上司は真剣な顔で言いました。「金額のまちがいは、正直に伝えればまだ間に合うことが多い。でも、気づいた日に言ってくれていれば、先方が社内の承認を取る前に止められたんだよ」。
翌日、Aさんは上司と一緒に取引先へ出向き、事情を説明しておわびしました。結局、差額の一部を会社が負担することになり、Aさんは上司と一緒に社内の報告書も書きました。「ミスより、隠そうとしたことのほうが、ずっと重かった」。Aさんは、カップを両手で包みながら、小さくため息をつきました。
仕事のミスを隠して後悔する理由
隠しているあいだに、ミスの影響が広がる
ミスは、気づいた瞬間がいちばん小さい状態です。時間がたつほど、ミスをもとにした次の仕事が進み、関わる人が増えていきます。Aさんの見積もりも、取引先が社内の承認を取ったことで、取り消すのが難しくなりました。「こっそり直す時間」は、ミスが大きくなる時間でもあるのです。気づいたら、まず「どこまで影響が広がっているか」を確かめましょう。
自分だけで、正しい対応を判断しようとした
ミスの直し方は、一つとは限りません。取引先との関係、会社のルール、過去の例などによって、最善の対応は変わります。担当者一人で判断して動くと、良かれと思った対応が、かえって問題を大きくすることもあります。Aさんが黙って修正版を送っていたら、取引先は「なぜ金額が変わったのか」と戸惑い、かえって不信感を持ったかもしれません。直し方を決める前に、まず上司に事実を伝えて、一緒に考えてもらうのが近道です。
ミスより「隠したこと」で、信頼を失う
仕事でミスをしない人はいません。上司や取引先も、そのことはよく分かっています。けれども、ミスを隠していたことが分かると、「ほかにも隠していることがあるのでは」と思われてしまいます。失った信頼を取り戻すのは、ミスを直すよりずっと時間がかかるものです。正直に早く伝えた人のほうが、結果として信頼されることも少なくありません。「この人は、悪い知らせもすぐに持ってきてくれる」という安心感は、仕事を任せてもらううえでの大きな財産になります。
怒られることへの恐れが、判断を鈍らせた
「怒られたくない」という気持ちは、誰にでもあります。けれども、その気持ちが強いと、ミスを小さく見積もったり、報告を後回しにしたりしてしまいます。怒られることを避けるより、ミスの影響を小さくすることを優先すると考えを切り替えましょう。報告するときは、事実・影響・考えている対応の順に伝えると、落ち着いて、感情的なやりとりになりにくくなります。
ミスが起きた原因を、振り返らなかった
ミスを隠すと、なぜそのミスが起きたのかを振り返る機会もなくなります。Aさんの計算ミスは、見積書のひな形に、人数をかける式が入っていなかったことも原因でした。報告していれば、チームでひな形を見直すきっかけになったはずです。ミスは、個人の不注意だけでなく、仕事の仕組みを見直すヒントでもあります。同じミスは、ほかの人にも起こりえます。自分のミスを共有することは、チーム全体のミスを減らすことにつながるのです。
ミスを隠す人と、すぐに伝える人の違い
仕事のミスを隠さないためのチェックリスト
ミスに気づいたときに慌てないよう、伝え方の手順を決めておきましょう。次の項目を、ミスに気づいたその場で思い出せるようにしておくと安心です。
- ミスに気づいたら、まず影響がどこまで広がっているかを確かめる
- その日のうちに、上司に「ご報告です」と声をかける
- 事実(何が起きたか)・影響(誰に何が起きるか)・対応案の順に伝える
- 直し方は、自分だけで決めず上司と相談して決める
- 相手への連絡は、上司と相談したうえで、早めに正直に行う
- 落ち着いたら、ミスの原因と仕組みの見直しを考える
Aさんは今、ミスに気づいたら、どんなに小さくても、その日のうちに上司にチャットで「ご報告です。○○で誤りがありました。影響は○○です。○○で直そうと考えています」と送るようにしています。上司からは「この3行があると、すぐに判断できる」と言われたそうです。チームの見積書のひな形も、Aさんの提案で、人数をかける式が自動で入る形に作り直されました。
「ミスの報告は、今でも少しどきっとする。でも、隠していたときのほうが、ずっと苦しかった」。Aさんは最後に、そう言って笑いました。
仕事の失敗を減らすために
ミスを減らし、気づいたときにすぐ動けるようにするには、仕事の進み具合を見える化し、仕組みから見直すことが役立ちます。
タイムマネジメント・スケジュール管理ツール【todoist】
仕事のやることと期限を一覧にできるタイプです。送る前の見直しや、上司への報告を「やること」として書き込んでおけば、後回しにしにくくなります。仕事の進み具合を見える化することで、ミスに早く気づくきっかけにもなります。
業務プロセス整理・DX相談サービス【Chatwork DX相談窓口】
仕事の流れそのものを整理することから支援してくれるタイプです。ミスが起きやすい手作業の部分や、確認の手順の抜けを見直すきっかけになります。チームで同じミスをくり返さないための仕組みづくりを考えるときにも役立ちます。
まなぶ
みらい
まなぶ仕事のミスを隠して後悔する原因は、怒られることを恐れて報告せず、自分だけで直そうとしているあいだに、ミスの影響が広がってしまうことです。気づいたら影響を確かめ、その日のうちに事実・影響・対応案を伝え、上司と一緒に直し方を決める。それだけで、ミスは小さいうちに片づき、信頼もかえって深まります。仕事の進め方とミスへの対応で失敗しないための考え方は、仕事の進め方とミス対応の失敗から学ぶでまとめています。
仕事の進め方・ミス対応については、ダブルチェックを人任せにして失敗した話や仕事の段取りで失敗しない方法もあわせて読んでみてください。

