AI企画会議で失敗した話
AIを使った企画会議で失敗する人の多くは、「AIにたくさん案を出してもらえば、会議は速く、良い企画が生まれる」と考えています。けれど、最初にAIの案を画面に映すと、参加者の考えはその案に引っ張られ、自分の意見を出しにくくなります。まず人がそれぞれの考えを出し、選ぶ基準を決めてから、AIで視点を広げる。この順番に変えるだけで、AIは会議の考えを止める存在ではなく、考えを広げる相棒になります。
40分で終わった会議が、2週間後に振り出しに戻った
販促チームに来て数か月。まなぶは初めて、新しい販促企画を考える会議の進行役を任されました。参加者はチームの5人です。これまでのチームの企画会議は、なかなか意見が出ず、2時間かけても結論が出ないことがよくありました。
「今回はAIを使って、効率のいい会議にしよう」。まなぶは会議が始まるとすぐ、会議室の大きなモニターにAIの画面を映しました。「通販サービスの新しい販促企画を30個出して」。数十秒で、ずらりと案が並びます。「おお、すごい」と声が上がり、会議室の空気は一気に明るくなりました。
そこからは、AIの30案に一人ずつ「良さそう」と思うものに手を挙げてもらう形で進めました。いちばん票が集まったのは、「定期購入の会員向けに、毎月テーマを変えた特典を届ける企画」。まなぶがAIに企画書の骨組みまで作らせると、会議はわずか40分で終わりました。参加者からは「こんなに早く決まったの、初めてかも」と言われ、まなぶは大きな手応えを感じていました。
2週間後。企画書を手に、まなぶは部長の席へ説明に行きました。資料をめくっていた部長は、途中でタブレットを取り出し、ある画面をまなぶに見せました。
「この企画、競合が去年ほとんど同じことをやってるよ。それと、うちのお客さまから実際にどんな声が来ているのか、どこにも書いてないね」
まなぶは何も言い返せませんでした。AIの案が新しいかどうかも、自社のお客さまに合っているかどうかも、会議では誰も確かめていなかったのです。部長は続けました。「会議で、ほかにどんな案が出たの?」。まなぶは答えに詰まりました。会議で話し合ったのは、AIが出した30案だけで、メンバー自身の案は1つも出ていなかったからです。
さらにその日の夕方、会議にいた新人のメンバーが、まなぶにそっと打ち明けてくれました。「実は、問い合わせ対応でよく聞く『ギフト用に包んでほしい』という声をもとにした案を考えていたんです。でも、AIの案がたくさん出たあとだと、言い出しにくくて」。まなぶは、その案のほうがずっと自社らしいと感じました。会議を速く終わらせたつもりが、メンバーの考えを聞く場をなくしていたのです。企画は、振り出しからやり直すことになりました。
AI企画会議で失敗した理由
最初にAIの案を見せ、全員の発想が引っ張られた
人は、最初に見た情報に考えが引っ張られやすいものです。会議の冒頭にAIの30案を映したことで、参加者は「この中から選ぶ」という頭になり、自分の経験から考えることをやめてしまいました。AIの案が整っていて量も多いほど、その影響は強くなります。AIの案を見せるのは、人がそれぞれの考えを出し切った後のほうが、発想の幅は広がります。
メンバーが自分の考えを出す時間がなかった
企画会議の価値は、参加者それぞれが持っている現場の情報や気づきを持ち寄れることにあります。問い合わせ対応をしている人、売り場を見ている人、数字を追っている人。立場が違えば、見えているお客さまの姿も違います。AIの案に投票するだけの進め方では、そうした一人ひとりの視点が会議に出てくる機会がありません。新人のメンバーが持っていた「ギフト包装」の声は、まさに会議で拾うべき情報でした。特に、経験の浅いメンバーや控えめなメンバーほど、整った案が並んだあとに自分の考えを口にするのはためらうものです。発言しやすい順番や仕組みをつくるのも、進行役の大切な仕事です。
選ぶ基準を決めずに「良さそう」で決めた
何を基準に企画を選ぶのかが決まっていないと、判断は「なんとなく良さそう」「面白そう」という印象に頼ることになります。自社のお客さまに合っているか、予算や人手の範囲で実行できるか、競合との違いを出せるか。選ぶ基準を最初に共有しておくことで、AIの案も人の案も、同じものさしで比べられるようになります。基準がないまま多数決をすると、無難で分かりやすい案が選ばれやすくなります。
AIの案が新しいか、実際にできるかを確かめなかった
AIは、これまでに世の中にあるアイデアをもとに案を出します。そのため、出てきた案がすでに他社で実施されていることは珍しくありません。また、自社の体制や予算で本当に実行できるかどうかも、AIは知りません。会議で決めた案は、競合の事例を調べ、関係する部署に実現性を確かめるところまでが、企画を固める作業です。ここを省いたため、2週間かけて作った企画書が振り出しに戻ってしまいました。
「速く終わること」を会議の成果だと思っていた
長い会議に悩んでいたまなぶにとって、40分で結論が出たことは大きな成功に見えました。しかし、会議の成果は時間の短さではなく、その後の仕事が良い方向に進むかどうかで決まります。AIで短縮できたのは「案を出す時間」であって、「考える時間」ではなかったのです。浮いた時間は、案を深めたり、確かめたりすることに使うべきでした。
失敗するAI企画会議と、うまくいくAI企画会議の違い
2つの会議の違いは、AIを使うかどうかではありません。AIを「案を出す主役」にするか、「人の考えを広げる補助役」にするかの違いです。
うまくいく会議では、最初の10分ほどを使って、参加者それぞれが自分の考えを付箋や画面に書き出します。そのうえで、「この案を別の角度から広げて」「見落としている視点はある?」とAIに問いかけ、議論の幅を広げていきます。人の考えが土台にあるので、AIの案に引っ張られすぎることもありません。
AIを使った企画会議の前に確認したいこと
- 会議の最初に、参加者一人ひとりが自分の考えを書き出す時間をとる
- 「お客さまに合うか」「実行できるか」など、選ぶ基準を最初に共有する
- AIの案は、人の案が出そろった後に「視点を広げる材料」として見せる
- 発言しにくい人の考えも拾えるよう、書き出しや一言ずつの共有の場を設ける
- 候補に残った案は、競合の事例と自社での実現性を確かめてから決める
- AIで短縮できた時間を、案を深めることに使う
まずは「AIの画面を映す前に、5分だけ全員で考えを書き出す」ことから試してみてください。それだけで、会議に出てくる案の種類も、参加者の表情も変わってくるはずです。
また、会議が終わったあとに「言い出せなかった案はありませんか」と一言聞くのも効果的です。進行役が人の考えを大切にしている姿勢を見せることで、次の会議からは意見が出やすくなります。AIを上手に使う会議は、人の声がよく聞こえる会議でもあるのです。
会議や企画の仕事でAIを上手に使いたい人へ
AIスキルを学習してキャリアアップを目指す「AI CONNECT」
基本的な操作方法や、代表的な活用シーンを一通り学べるタイプ。アイデア出しや議論の整理など、会議の中でAIをどう使えば効果的かを基礎から押さえたい人に向いています。
ChatGPTなどの生成AIを学び仕事に活かす!「DMM 生成AI CAMP」
業務フローの見直し方や、指示の出し方(プロンプト)のコツまで含めて体系的に学べるタイプ。企画づくりのどの段階でAIを使い、どこを人が担うべきかを整理したい人に向いています。
まなぶ
みらいAIを企画会議に取り入れることで、案を出す時間は大きく短縮できます。ただし、最初にAIの案を並べてしまうと、参加者の考えはその案に引っ張られ、現場ならではの声が出てこなくなります。人の考えを先に出し、選ぶ基準を決め、AIで視点を広げ、最後に新しさと実現性を確かめる。この順番を守れば、AIは会議の質を高める頼もしい存在になります。
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