プロンプトが下手で後悔する理由
プロンプトが下手で後悔する人の多くは、「AIは短く頼めば、こちらの意図をくみ取ってくれる」と思っています。けれど、AIは目の前に書かれたことしか知りません。目的も読み手も条件も伝えずに頼めば、返ってくるのは誰にでも当てはまる無難な答えです。「何のために・誰に向けて・どんな条件で・どんな形で」の4つを伝え、一度で完璧を求めず対話で磨き上げる。これだけで、AIの答えは見違えるほど変わります。
「もっといい感じに」を20回くり返した夜
まなぶは上司から、新しく入る中途社員向けの研修資料を作るよう頼まれました。期限は3日後。「AIに骨組みを作ってもらえば、半日で終わるはずだ」。まなぶは、さっそくAIに頼みました。「研修資料を作って」。
数秒で返ってきたのは、「会社概要」「ビジネスマナー」「コンプライアンス」といった、どこの会社でも使えそうな目次でした。中途で入る人たちには、ビジネスマナーの基本は必要ありません。まなぶは書き直しを頼みました。「もっといい感じにして」。
次の答えも、言い回しが少し変わっただけで中身はほとんど同じでした。「もっと具体的に」「もっと実践的に」「もっと分かりやすく」。まなぶは何度も同じような頼み方をくり返しました。気づけば画面には、自分が打った「もっといい感じに」という言葉が20回近く並んでいました。
夜の9時を過ぎ、人のいなくなった社員食堂の隅で、まなぶはノートPCの前でぐったりと肩を落としました。「AIって、結局使えないじゃないか」。結局その日は、AIをあきらめて自分で一から書き始め、終電近くまでかかってしまいました。
翌日、資料の相談をしようと後輩の席に行ったまなぶは、思わず足を止めました。後輩も同じAIを使って、別の部署向けの研修資料の骨組みを作っていたのです。画面に打ち込まれていたのは、こんな文章でした。
「あなたは人材育成の担当者です。営業経験3年以上の中途社員5名が、入社初週に受ける研修の目次を作ってください。目的は、自社の商品と社内の手続きを1週間で理解してもらうことです。ビジネスマナーなど、社会人経験者が知っている内容は省いてください。1日2時間×5日の構成で、各回のゴールも1行で添えてください」。
返ってきた目次は、そのまま上司に見せられそうなほど具体的でした。かかった時間は、たった10分。AIが使えなかったのではなく、自分の頼み方が足りなかったのだと、まなぶはそのとき初めて気づきました。
後輩に聞くと、「最初は自分も一言で頼んでいて、全然ダメでした。上司に仕事を頼まれるときに聞かれることを、そのままAIに書くようにしたら変わったんです」と笑っていました。まなぶが前の晩に費やした4時間は、頼み方を少し変えるだけで、10分に縮められたはずの時間だったのです。
プロンプトが下手で後悔する理由
目的と読み手を伝えていなかった
「研修資料を作って」という頼み方には、誰に向けた資料で、何のために使うのかが一切含まれていません。人に頼むときなら、相手は「誰向けですか?」と聞き返してくれますが、AIは聞き返さずに、もっとも一般的な答えを返してきます。目的と読み手は、AIにとって答えの方向を決める一番大事な情報です。ここが抜けていると、どれだけ書き直しを頼んでも、的外れな答えのまわりをぐるぐる回ることになります。
条件や前提を、言わなくても伝わると思っていた
中途社員向けであること、ビジネスマナーは不要なこと、1日2時間で5日間という時間の枠。まなぶの頭の中にはこうした条件がありましたが、AIには一つも伝えていませんでした。自分にとって当たり前の前提ほど、言葉にするのを忘れがちです。AIは、こちらの職場の事情も、上司とのやり取りも知りません。「AIは何も知らない新人」だと考えて、前提を書き出すくらいがちょうどいいのです。
「いい感じに」のようなあいまいな言葉で直そうとした
「もっといい感じに」「もっと分かりやすく」という言葉は、人によって受け取り方がまったく違います。何がよくなかったのかが伝わらないため、AIは言い回しを少し変えるくらいしかできません。書き直しを頼むときは、「ビジネスマナーの章を削除して」「各回にゴールを1行で追加して」のように、どこをどう変えてほしいのかを具体的に伝える必要があります。あいまいな修正依頼のくり返しは、時間だけを奪っていきます。もし自分でも何が足りないのか分からないときは、「この目次の弱いところを3つ挙げて」とAIに聞いてから直してもらうのも一つの方法です。
出てきてほしい形を指定していなかった
同じ内容でも、箇条書きの目次がほしいのか、表にしてほしいのか、文章でまとめてほしいのかで、使いやすさは大きく変わります。形を指定しないと、AIは自分で判断した形で答えるため、受け取ったあとに自分で作り直す手間が発生します。「1日2時間×5日の表で」「各回のゴールを1行で添えて」のように、仕上がりの形まで伝えておけば、そのまま使える答えに近づきます。
うまくいかないのを「AIのせい」にしてあきらめた
何度やってもうまくいかないと、「このAIは使えない」と結論づけたくなります。しかし、同じAIでも頼み方を変えれば、まったく違う答えが返ってきます。まなぶが本当に後悔したのは、20回くり返した時間よりも、うまくいかない原因を自分の頼み方に探さなかったことでした。うまくいかないときは、「何を伝えていなかったか」を一度振り返るだけで、次の一手が見えてきます。
後悔する頼み方と、思いどおりの答えが返る頼み方の違い
2つのパターンの違いは、AIの性能でも、使っている人のセンスでもありません。AIに「判断の材料」を渡しているかどうかの違いです。
うまく使えている人は、特別な言い回しや難しいテクニックを使っているわけではありません。人に仕事を頼むときと同じように、目的や相手、条件を丁寧に伝えているだけです。そして、一度で完璧な答えを求めず、返ってきた答えを見ながら「ここを変えて」と対話で仕上げていきます。この進め方を知っているかどうかで、AIにかかる時間は何倍も変わります。
AIに頼む前に確認したいこと
- 何のために使う答えなのか(目的)を1文で書く
- 誰に向けたものか(読み手)と、その人がすでに知っていることを書く
- 時間・分量・含めたくない内容など、守ってほしい条件を書き出す
- 箇条書き・表・文章など、ほしい形と長さを指定する
- 書き直しを頼むときは「どこを・どう変えるか」を具体的に伝える
- うまくいった頼み方は保存しておき、次回の型として使い回す
最初から完璧なプロンプトを書こうとする必要はありません。まずは「目的・読み手・条件・形」の4つを1行ずつ書くことから始めてみてください。それだけで、AIの最初の答えの質は大きく上がります。
また、何を伝えればいいか迷ったときは、AIに「この依頼をよりよくするために、私に確認したいことを質問して」と頼むのも効果的です。足りない情報をAIの側から聞いてもらえるので、伝え漏れを防げます。上手な頼み方は、才能ではなく、少しずつ身につけていける「型」なのです。
AIへの頼み方を体系的に身につけたい人へ
資格と仕事に強い!個人レッスンのプログラミングスクール【Winスクール】
プロンプトの基本の型や、業務別の活用シーンを体系的に学べるタイプ。独学で行き詰まった人に向いています。目的や条件の伝え方を、実際の業務の例をもとに練習できます。
ChatGPTなどの生成AIを学び仕事に活かす!「DMM 生成AI CAMP」
業務フローの見直し方や、指示の出し方(プロンプト)のコツまで含めて体系的に学べるタイプ。資料作成や企画など、仕事の場面ごとの頼み方をまとめて身につけたい人に向いています。
まなぶ
みらいプロンプトが下手だと、AIはありきたりな答えしか返してくれず、「AIは使えない」と感じてしまいがちです。けれど、本当の原因は多くの場合、AIではなく頼み方にあります。目的・読み手・条件・形を伝え、具体的に直してほしい点を伝え、対話で仕上げていく。この型を身につければ、AIは何度もやり直しをさせる相手ではなく、短い時間で頼れる相棒になります。
AIを使い始めたばかりの頃に陥りがちな失敗については、ChatGPTを使って失敗する人の特徴でもまとめています。あわせて読んでみてください。

